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第2回 談笑

「そういえばさ。突然だけど、バレンタインにチョコって貰った?」


「えっ、いや、何で?・・・・・・別に貰ってないけど」


「フッ、所詮はチョコに飢えたガキか・・・・・・」


 まてまてまておい。勝手に決めつけんなっ。チョコなんかにゃ飢えてないし、特にチョコ好きじゃないし。


「ま、そんなことはどうでもいいけどね」


 いや、話ふっといてそれはないでしょあんた。今年は私がチョコあげるとかぐらいは言えっての。


「そうそう。思い出しただけで笑えてくるよ。思い出し笑いってやつ。いやーほんと、今朝の会長は凄かったね」


 ほんと、思い出し笑いってやつだぜ。にしても、今朝の美咲さんはタフだった。てか、勇気あるなーと再確認してしまった。





「えー、今日は誰が見ても始業式です。今までだったらこの場で、3年生になったからどうこう、2年生になったからどうこうと、いろいろ長ったらしいことを言いますが、私はめんどくさいので言いません。ただ一つ言いたいことがあります。9月にやる役員選挙では宜しくお願いします。以上」





 以上が、今朝始業式で述べた会長の言葉だ。ちなみに言うと、入学式でも似たようなことを言ってのけた。ほんと、『勇気の塊』って言葉が似合うよ。


「それでさ、私ね、会長とクラス一緒になったじゃん。それでさ、会長に一つ提案したんだよね」


「ふーん、珍しいこともあるんだな。で、なんて提案したんだ?」


「ん、いや、チャイナドレスを制服にってね」


 ・・・・・・うん。調子乗りすぎだぞ。必死にバイトしてためた金が、お前が着る服に化けた瞬間を、俺はこの目でしかと見届けた。あぁ、黄門様がいりゃお裁きを下したろうにね


「でさ、そこでもまた、会長が面白かったんだよね」


 美咲さんとは、世間的に言えば幼馴染という間柄だ。確かに美咲さんは昔から面白い。馬鹿なことやって笑わすんじゃなくて、年齢に似合わずシュールなことを言ったり、時には爆弾発言を連発したりと。

 

 しかしながら、今朝のこともそうだが、彼女はいつでも真剣だ。笑いをとるということはしていない。美咲さんのことを古くから知っている身には、彼女のことを面白いという人はあんまり好きになれない。


 でも、俺自身は美咲さんの言動は面白いと思っている。彼女はいつでも真剣ということを知ってこそ、本当に楽しめるのだ。と、個人的に解釈してした結果がこれです。


「で、美咲さんはなんて言ってた?」


「それがねぇ、『ふーん、石楠花(しゃくなげ)由加里(ゆかり)さんね。漢字にすると6文字か・・・・・・。書道のとき大変だったでしょ』だって。いやぁ、唐突にそんなこと聞かれても答えに困っちゃったよ」


 まぁなんというか、美咲さんらしいな。特に彼女は書道の有段者でもないのにね。俺にはなぜ美咲さんが初対面の人に、書道のことで哀れんでいるのかがわかりかねるが、そこがまた好きだったりもする。


「それで、答えはどうだった?」


「ん。そりゃ決まってんじゃん。聞くまでもないってやつだよ。『駄目です』って即答されたさ」

 

 ま、それが妥当だろ。自分の家で着てりゃいいだろってのに、まったく。チャイナドレスが制服になったら、俺の苦労はなんだったんだって感じだよ。


「でね、仕舞いには中指で×印喰らっちゃったよ。私耐え切れなくて、笑っちゃったよ、ほんと」


 中指で×印とか、いやぁ焦るね。本気でやってるってところがまた怖いよ。


「そうだ。ねぇ圭、あんた会長と幼馴染なんでしょ」


 おいおい、何でお前がそれを知ってる。誰から聞い・・・・・・たって、たぶん美咲さんが言ったのか。はぁ、クラスに広まんないことを願いたい。


「でさぁ、ねぇ。会長にさぁ、お願いって言っといて、ね」


「5000円ってとこかな」


「えー、高い高いたかーい。明日チャイナ姿でぎりぎりポーズとってあげるからー」


 つーか、とうとうお前も美咲さんが移ったか。教室に他の人間がいなかったことが不幸中の幸いか。


「いらん。胸のないお前のぎりぎりポーズなんか見たってつまらん。人に見せるなら、せめて美咲さんくらいになってからだ」


「えー、ひどーい。私じゃあの身体は、いくつになってもなれないよー」


 いやお前、それは正論だが、ココはもうちょっと俺を怒るとかしないのか。


「ほんと、ひどいですよ。いつまでたっても私の体に近づけない人に向かって私の身体のようになれっていうのは」


 ほんと、これは少しばかりひどかったな・・・・・・っておい。美咲さーん、なに言っちゃってんのー。あなたが一番ひどいって。


 ――まったく、何で俺の回りにいる人は皆変人なんだろう・・・・・・。

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