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ステータス

 魔王討伐を承諾した彼等はまず自分達の能力値(ステータス)を確認するため見方を教えて貰っていた。


「それでは皆様、心のなかでステータスと唱えてください。そしたら目の前にでてくるはずです」


 王女の説明で全員が目の前の画面に釘ずけになる。その光景は現代社会でやったら変な目で見られること間違いないだろう。なんせ何十人もの男女が制服姿で、何も無い目の前を食い入るように見つめているのだから。


 ーステータスー


 神月 悠


 LV.1


 種族:人族

 職業:


 HP:100

 MP:20


 STR:1

 AGI:1

 VIT:1

 INT:1

 DEX:1

 LUK:1


 ユニークスキル:

 スキル:鑑定、言語理解

 属性魔法:なし

 称号:異世界人



 悠は自身のステータスを確認すると困惑した表情であたりを見回す。何故なら自身のステータスがもしかしたら凄く弱いのではないかという疑問にぶち当たったからだ。


「どうですか? よろしければステータスをお見せ頂いてもよろしいでしょうか」


 悠が自身のステータスについて真剣に悩んでいると、王女が今の疑問を解決させる方法を帝達に提案していた。



 帝 流星


 LV.1


 種族:人族

 職業:勇者


 HP:800

 MP:500


 STR:150

 AGI:180

 VIT:125

 INT:103

 DEX:137

 LUK:200


 ユニークスキル:『指導者』

 スキル:気配察知、剣技、鑑定、言語理解

 属性魔法:光、火

 称号:異世界人、勇者、導く者



 魁道 隆一


 LV.1


 種族:人族

 職業:勇者


 HP:900

 MP:200


 STR:200

 AGI:85

 VIT:198

 INT:76

 DEX:92

 LUK:183


 ユニークスキル:『守護神』

 スキル:気配察知、剣技、鑑定、言語理解

 属性魔法:光、土

 称号:異世界人、勇者



 清水 光


 LV.1


 種族:人族

 職業:勇者


 HP:600

 MP:550


 STR:50

 AGI:60

 VIT:78

 INT:200

 DEX:146

 LUK:196


 ユニークスキル:『微笑の女神』

 スキル:気配察知、魔力操作、鑑定、治癒術

 属性魔法:光、水

 称号:異世界人、勇者



 新谷 風香


 LV.1


 種族:人族

 職業:勇者


 HP:500

 MP:580


 STR:60

 AGI:60

 VIT:63

 INT:200

 DEX:150

 LUK:184


 ユニークスキル:『風速の魔女』

 スキル:気配察知、魔力操作、上級魔法、鑑定、言語理解

 属性魔法:光、風

 称号:異世界人、勇者



 悠は見たくないものでも見てしまったかのように驚き固まってしまった。彼等のステータスは悠が到底及びつかないほどのチート能力。この四人は特に凄いものであったが、それでもクラスの全員がチート能力を有していた。それに比べ悠だけは職業、ユニークスキル共に空欄。そしてこの世界の平均よりも下のステータス。極めつけには全員勇者という言葉があったのに悠だけにはない。自身の疑問は解消されたが逆にあがってくる違う疑問。それは悠は勇者ではないのかという疑問。


「おい。最後はおまえだ。早く見せろよ豚」


「お、俺は.....」


「え!? まじかよ。アハハハ!!」


 魁道にステータスを見せるよう催促された悠は、自身のステータスがあまりよくないことを知られるのはまずいと思い必死に誤魔化そうとするが、それは誰かの笑い声でかき消された。


「おい大丈夫かおまえ。どうしたんだ?」


 するとそいつの近くにいた奴が心配したように話しかける。


「いやさ、見てみろよ。そいつのステータス」


 先程笑った生徒の言葉を合図に、次々と一斉に鑑定のスキルでステータスを覗きだす彼等。もはや悠のことは家畜としてしか見ておらず、許可など求めず勝手に覗いていく。そんなものは必要ないと言わんばかりに。


「え?」

「まじで?」

「ブハッ!」

「家畜はどこ行っても家畜だな!」


 それぞれ思い思いに悠を罵っていく彼等。笑い、嘲り、蔑み。強い者には称賛を。弱い者には嘲笑を。そこには人間のあるがままの姿が現れていた。


「これは.....」


 しばらく喋っていなかった王女が、何事かと問題の悠のステータスを覗く。全てに目を通すと驚き哀れみの目で悠を見つめた。


「どうしたものか.....」


 それから間もなく王女により状況を理解した王が、隣の大臣に話しかける。もちろん世間話の為ではない。異世界人で力のないものがいるという予想外の出来事にどうするかと大臣と相談を始めたのである。


 一方渦中の存在である悠は、本当にそれしかないのかと再びステータスを確認していた。しかし、相変わらずなステータスが表示されるだけで悠のダメージをさらに抉るだけだった。この世界の人族の平均でもLV.1でHPとMPは200前後。Strなどの平均は30前後。対して悠はそれを遥かに下回るHP100のMP20。そして驚愕の1の羅列。おまけにユニークスキルどころかスキルも鑑定と言語理解だけで属性魔法も無し。この世界の魔法は自分の属性魔法、火、水、風、土、光、闇、時を用いて使っていくもの。だからどんなにMPがあったとしても属性魔法の適正がないものは魔法が使えない。つまり悠には魔法を使うことが出来ないということだ。特殊な属性である光、闇、時はもちろん。基本属性の火、水、風、土すら使えない。


 するとスキルがないことに違和感を感じ、悠は少し前のことを思い出す。それは転移の後、この世界にくるより前の出来事だった。


(ノワは俺に能力を渡すって言っていたのになんで俺にはなんの能力もないんだ? やっぱりあれは夢だったのか? でも.....)


 おもむろに制服の後ろへと手を回し、尻ポケットへと手を突っ込む悠。そこには悠が予想していた通りノワに渡された端末がしっかりと入っていた。それはあの出来事が夢ではなかったという確かな証拠。


「皆様、本日はお疲れでしょう。寝室へ案内させますのでゆっくりお休みになられて下さい」


 悠が一人、端末に意識を向けていた頃。いつの間にか王と大臣の話し合いが終わり、王女の一言で彼等は王宮メイドに部屋へと案内されていた。


「さ、神月様も」


 考え事をしていた悠に、王女は近付き彼等同様動くよう促した。先の一件で名前を覚えられてしまった悠は、嬉しいのか嬉しくないのか微妙な様子でメイドに連れられる彼等の後を追っていった。



 ***




 謁見の間での出来事から一週間がたった今日、悠は自身にあてがわれた部屋に居た。部屋と言っても所々に物が置かれた倉庫のような場所だったが。だがそれもそのはず。この部屋は本来物置として使われていたのだから。

 一週間前に行われた勇者召喚は一度に33人もの人間を召喚した。つまり部屋を用意するのも33部屋必要になってくる。何人かで共同でもいいと思うかもしれないが勇者はこの国にとって大事な存在であり大事な客人である。そんな彼等にそんな無粋な真似が出来るはずもなく、結局豪華な部屋を一人一部屋提供することになった。32部屋まではなんとかなったのだが、33部屋目がどうにもならなかった。そこで提案されたのは物置として使われていた部屋を勇者ではない悠にあてがうというものだった。ちなみにクラスの人数は32人で召喚された33人目は彼等の担任である及川 鏡花(おいかわ きょうか)である。彼女もステータスの欄に勇者(・・)と書いてあり、もちろんチート能力を有していた。つまり勇者でないのは悠だけであり担任含めクラスの面々は全員が勇者だったのである。


「はぁ。やっぱり魔法は使えないか……」


 この一週間。隠れたスキルや魔法がないかとずっと探していた悠は、今日も部屋で確認作業をしていた。しかし毎度ぶち当たるのは挫折という絶望だけ。どんなに魔法の練習をしても、どんなにスキルを探してもスキルはもちろんのこと適正属性がない悠には魔法も起きず無駄な時間だけが消化されていった。

 頑張っても意味がないのかもと思いながらも、悠が頑張るのは2、3日前に行われた国家会議での協議の結果のせいだった。それは今から一週間後に控えた勇者たちが行く初ダンジョン『練磨の洞窟』に同行するというものだった。そこでの働きで悠のこれからが決まる。使える存在なら勇者たちと一緒に魔王討伐に。使えない存在だったらこの城から出て行く。それは決定事項でどう足掻いてもどうにもならないものだった。悠自身が強くなるほか選択肢はなく、かといってそう簡単に伸びるほど現実は甘くない。刻一刻とその日が近付くにあたって悠の焦りは大きなものとなっていった。そしてその焦りは怒りとなって身体中を駆け巡る。ピークに達した時悠の思考回路がとんでもない方向に転がる。


『害意を認識。シールドを展開。害意レベル不明』


 その声が聞こえたのは目の前のそれ(・・)を叩き潰そうと悠が鈍器を大きく振りかぶったその時。バキバキになって使いものにならなくなると思っていたそれ。しかし、叩き潰す前に瞑っていた目を開けてみてもそんな光景は映ってこなかった。変わりに現れたのは元のまま何事も無かったかのように置かれた一つの端末。いや、一つだけ違ったことがあった。それは画面(ディスプレイ)に光が灯っていたこと。今までどうやっても起動すらしなかったこの端末がこんな方法でついてしまったことに、悠の怒りは散り、端末への興味へと変わった。


『万能なる知識を起動。知りたいことはありますか?』


 端末から発される声は現実世界でナビなどでよく聞く機械的な声だった。しかしひとつだけ違ったことがあった。それは声にしっかりとした意思が感じられたことだ。


「知りたいこと? そんなのいっぱいあるに決まってる。なぜ俺にはスキルがない。なんで俺は……この世界に召喚されたんだ」


 端末の問いに先程までの怒りが再び込み上げ興奮気味に応えてしまう悠。あちらの世界では外見でいじめられ、こちらの世界では外見に加えて無能(・・)として蔑まされ、身寄りも味方もいない。この世界で悠は死という概念に怯えて生きていかなくてはいけない。そんな極限の状況であんな質問をされたら興奮気味になってしまうのは仕方の無いこと。


『一つ訂正しておきます。悠様にスキルがないというのは誤解です。悠様にはちゃんとスキルが存在します。ただ、今は開放されていないだけのこと』


「スキルがある?」


『はい。ただ、このスキルは開放条件があります。条件についてはお話できませんが悠様にはれっきとしたスキルが存在します』


 その言葉は悠の心を引きつけ、怒りを安心に変えるのには十分な威力。


(俺は……無能(・・)じゃない?)

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