白の少女
遅くなりました……。
申し訳ないです。
あたりを覆い尽くす神聖な光と敵対する者への一切を許さない光。そのどちらもが美しく怪しい光を放っている。
それは、味方と敵を一手に分かつ光だった。
「ブラン。実はおまえ、俺が魔力を供給しなくても生きていけるだろ」
その輝きを放ったのは他の誰でもない白の少女。細く小柄な身体をしたロリっ子、ブランである。
彼女は自身の力である神力を使い、何十といた幻視の森に生息する強悪な魔物達を一瞬で潰したのだ。そう、文字通り潰した。薙ぎ払うでも、倒すでもなく潰したのだ。
あらゆる種族の魔物達がそこかしこに散らばり、構造的に見えてはいけないものを露出させながら寝そべっている。そんな異様な光景。
それが悠の目の前には広がっていた。そしてそれを成した少女は不思議そうにこちらを向いている。
「ううん。魔力は供給してもらわないとこの状態じゃ生きていけないよ。力だってこんなものしかだせないし……」
「いや、ちょっとまて。こんなものしかだせない? 普通にこれだけあれば十分だから! てか最早チートだから! そんなこといったら勇者雑魚だから。むしろカス!!」
ブランの言葉に反応し、一気に早口で捲し立てた悠は、肩で息をしながらいかにブランがチートなのかを話し始めた。
「いいか、ブラン。まず、この森の魔物達は異常なんだ。いやまあ確かにここ以外の魔物達とは戦ったことはないんだけどな。でも書物とかでも異常って書いてあった。だからつまり異常なんだ。それをな、一瞬で、魔物を、殲滅ってなに!? てかむしろ潰したってどういうこと!?」
「悠。落ち着いて。私は一応守護者だよ? それにそんなこといって今の悠だったらこの森の魔物倒せるじゃん。それに潰すってどういうことって言われても潰すタイプの攻撃だったし……」
悠の言葉の猛攻に、納得いかないとブランも負けじと反論をする。
「いや、俺は今まで生きるために必死だったからレベルが上がってきたってだけで……。ていうかまってくれ。え? ブランが守護者!?」
ブランの新たな事実に、悠が驚き聞き返そうと口を開いたその瞬間、決して弱くはない自分達の仲間が殺されたことで怒りと驚きを持った魔物達が大群で押し寄せてきた。
「悠。魔物がきてる」
「ああ。守護者うんぬんはまた後で聞くとして今はこっちだな。ざっと五十体はいるぞ」
あらゆる種族の魔物達がところせましとひきしめあい、悠とブランに向かって進軍してくる。
「おいおい。さっきブランが潰した魔物達より多いぞ」
「うん。それに、さっきの魔物達よりも……強い」
「ああ。ブラン、さっきのやつもっかいできるか?」
たった今ブランが放ったばかりの神力で再び敵を殲滅しようと考えた悠は、ブランに早速確認する。
「うーん。ちょっと厳しい。使ったばっかで力が足りてない」
すぐにいい返事が返ってくると思っていた悠だったが、返ってきた返事は彼が望んでいたものではなかった。
「まじでか……。どーすっかなー」
「悠がやればいい」
悲観的にどうするかと悩んでいた悠に、ブランはなんてことないかのように語りかける。しかしそれもそのはず。なぜなら、悠にはこの大群の魔物を倒す手段があるのだから。
「悠が創造魔法を使えばいい」
そう、悠には未知の可能性を秘めた創造魔法という手段があるのだ。
「やっぱそれしかないよな」
顔をうつむけ、悩んだ様子を見せていた悠だったが、再度ブランに己の名を呼ばれたことで顔を上げた。そんな彼の顔には先程にはなかった決意の表情をしている。もう彼には不安はなかった。
「悠。自身が魔法をゼロから創るということは大変で責任がかかりとても困難なことだけど、悠ならできるって信じてる」
彼女のその声は彼に届くことはなかったが、彼女はそれでも微笑みを彼に向け続けていた。
***
「ハァ、ハァ。ハァー。つっかれた」
「お疲れ様、悠。あとは私が。……聖なる光に導かれし、悠久に漂う白き大蛇。セイントペルシャーハ」
悠が創造魔法で魔物達を一双し、こぼれてしまった魔物達をブランが補助するように神力で倒していく。残ったのは殲滅された魔物だった者達の残骸と、その上に余裕の表情で立ち尽くすブランと疲労困憊で倒れるようにして横に寝そべっている悠の存在だけ。
「悠、凄かったね! さっきの魔法!」
何の感情ものせずに、魔物だった残骸を見続けていたブランはしばらくすると寝そべっている悠に近付き興奮気味に声をかける。対して、魔力が底をつきそうなほど使い果たした悠は呼吸を落ち着かせながらブランに言葉をかえしていく。
「あ、ああ。思い付きだったんだが、ハァ、上手くいって、ハァ、良かった、よ」
「うんうん。悠が何か唱えたなーって思ったら魔物を殲滅しちゃうんだもん。びっくりしたー」
そう。悠がこの時創り出した魔法は見えずに不特定多数を殲滅する魔法である。
見えない真空波を無数に出現させて敵を切り裂く創造魔法。さしずめ“切り裂く波(スラッシュウェーブ)”とでもいったところか。
「ああ、あれは勝手に皮膚がきれてしまう現象を参考にしたんだ。前の世界ではそんな現象をかまいたちって言ってだな。原理は真空……」
「はいはい、わかりました。ところで悠、今のでレベルあがったんじゃない?」
創造魔法のもとになったものを説明しようと語り出した悠だったが、ブランにより話は遮られてしまった。
「んー? 確かに、上がってるかもな。今の大群一掃したし。まだ確認してないからわかんねぇけど」
神月 悠
LV.62
種族:人族
職業:
HP:3260
MP:25(+1000)
STR:600(+61)
AGI:421
VIT:382
INT:325(+1000)
DEX:403(+1000)
LUK:376(+1000)
ユニークスキル:完全理解
スキル:鑑定、言語理解、状態異常耐性、熊爪、気配察知、威圧、武具作成(基礎)、創造魔法、風牙、超音波、雷光、翠龍、業火、石華、林泉、超能力(異能)
属性魔法:全属性
称号:異世界人、魔物殺し、弓使い、属性制覇、創造主、殺戮者
「確かに上がってるな。それに、不名誉な称号がついてる」
「不名誉な称号? ……ま、それはいいや。それよりもレベル50は超えた?」
「50? 超えたけど?」
「そっか。じゃあ多分もう使えるはずだね」
「使える?」
なにやら煮え切らないかえしをしてくる彼女に悠は訝しげな顔をする。
「うん。悠がいた世界で言うところの超能力みたいなものかな。魔力を使わない能力。この世界では異能って呼ばれてる」
「異能の力。魔力を消費しない力。それって……」
「うん。異端の力として見なされてて、その能力を持って生まれてきた人達は女子供関係なく迫害されてる。だから悠には迷惑な能力かなって思ったんだけどどうしてもこの能力がないと………」
「すげーな!」
ブランが悠にとって迷惑なものを託してしまったと謝ろうとしていたところを悠の場違いで能天気な声が遮る。
「魔力を使わないってことはMPを使わないってことだろ。しかも異能ってことはこっちの世界で使う奴は少ないってことだ」
「う、うん。この世界では使う人は迫害されてるから元々少ないのに余計に少なくなってて全然いないと思う」
「てことは俺はそんな少ない人達の中の一人ってわけだ。なんかそれってわくわくするな! その、異能ってどうやって使うんだ?」
ブランの心配なんてよそに一人で興奮している悠は馬鹿みたいにはしゃいでいる。そんな彼を見てさっきの反省モードから復活したブランは悠に使い方を教えていく。
「えっとね、まずイメージするの、わかりやすく明確なイメージを。ここまでなら創造魔法とあんまり変わらないけど変わるのはここから。この能力は創造魔法とは違って細部までイメージする必要がある。そして実際に出来ることにしか発動されないわ。魔法は創造、超能力は現象。だからゼロから何かというようなことはできないの。でもその変わり、魔法ではできないことが出来る。それは物を浮かせたり、相手に声を聞かせたり、覆われた何かを見ることができたり、それこそ自分自身を宙に浮かせたりとか、それは自然の力を利用して自然の規律に従順な魔法ではできないこと。そんな能力を使えることができる」
「なるほどな。そりゃたしかに超能力が異能と言われるわけだ。出来る幅は狭まるかもしれないけど超能力だったら自然の法律を介さないで力を行使できるわけだもんな。しかも自分の体力と精神が大丈夫なら何を消費することはない。魔法ではできないことを超能力で、超能力ではできないことを魔法でってことか」
妙に納得したように頷く悠にブランは安心したように微笑みかける。
(私はどうやら悠のことを見くびっていたみたい。悠がそんなことで癇癪を起すような人じゃない事は私自身が一番わかっていたはずなのに。私は本当に馬鹿。そんなの、悠のことを信用してないのと一緒じゃない。彼のことを一番理解できる人であるように、一番近くで支えられるように。それが彼と約束をした時からの私の誓い。悠を巻き込んでしまった、悠にこんな能力を押し付けてしまった。確かにそれは私の押し付けで悠には謝らなきゃいけない事。それでも悠は私と約束してくれた。だから謝るところはしっかり反省して、でも信じるところは信じる。それが私の役割。だから私も……)




