効果
12.29 超音波→反響定位に変更しました。
「うん。実はその端末、悠と私とノワ以外は使えないの。端末には所有者権限があって、普通の人が触ってもなんの反応もしないわ」
「あのガイドも反応しないってことか?」
「うん。それどころか画面すらつかない。でも、無理矢理壊そうとすると端末が自動で害意レベルを判断して勝手にシールドを展開させるの。だからって無闇に端末を壊そうとかしちゃ駄目だよ?」
「ふふっ。忠告はしたけどまさか悠がそんなことするわけないよねー。ノワと私からの贈り物だもん」と、元気よく言う彼女に、最初期、もののみごとに端末を壊そうとした悠は口を閉ざし明後日の方向を向いてしまう。
「ア、アア。マサカオレガソンナコト…スルワケ……」
片言で必死に喋る悠にブランはまさかというような声で話しかける。
「え? 壊そうとしたの?」
「ナ、ナンデソウナルンダヨ。ソンナワケ……ナイダロ」
勢いのあった悠の声に覇気がなくなり、尻すぼみになって消えていく。しまいには気まずげに自身に視線を走らせる始末である。
「悠……。どうせ使い方がわかんなくてーとかでしょ。ま、悠以外がそんな行動したら端末が怒るだろうけどね」
「だってしかたないじゃないか。って、ん? 端末が怒る?」
ブランの言葉に思わず反応してしまった悠は、発してしまった後にしまったという顔をし、彼女の言った言葉の続きに違和感を感じすぐさま質問する。
「やっぱり……」
ジト目で視線を寄越してくるブランに、悠は開き直ったように堂々とやっぱ口は災いの元だなーなどとのたまい始めた。
呆れた様子で、説明を再開させようとするブランに悠もようやく顔つきを真剣なそれに戻す。
「そう、端末には意志があるの。それは悠も薄々感じてたでしょ? だから端末に害意を与えようとすれば端末は怒る。人間だってそうでしょ? 理不尽に殴られれば怒りもするし反撃もする。それと同じ」
ブランのわかりやすいその説明に、悠は確かに。と心の中で納得する。
「そりゃそうだ。殴られて嬉しい奴なんかいるわけが無い。そんなのはドMだけだ」
これまでのいじめのことを思い出しているのか悠は瞳をほそめながら遠く、彼方をみつめる。
「例えの引き合いにドMを出すのはどうかと思うけど……。でもま、そういうことだからもう端末に八つ当たりとかしちゃ駄目だよ?」
ブランの注意に了承の意を返した悠はピアスの効果の続きを促す。
「つまり今までの話の流れからしてこのピアスにはこの端末を操る為のなんかしらがあるってことだよな? 所有者権限だったか……?」
「うん。私とノワはその端末の創始者だから必要ないんだけど、悠はその端末を創ったって訳じゃないからそのピアスに権限を付与しておいたの。あの時は端末持ってなかったし」
「なるほどなー。でもこのピアス、その権限だけじゃないんだろ? 他にはなにがあるんだ?」
ブランの説明に、納得したように相槌をうつ悠は改めて自身の左耳に紅く輝くピアスをいじり始める。
「そうだなー。他にもあるけどそれが経験値を若干あげてることは知ってる?」
「えっ!? このピアスにそんな効果があったのか!? そんなんただのチートじゃねぇか。どれくらいあげてるんだ?」
経験値をあげてると知った悠は、途端にテンションをあげブランに説明を迫る。
「お、落ち着いて悠。そんなに凄い上げてるってわけじゃないよ。獲得経験値を2倍にしてるってだけだから」
悠を落ち着かせながら獲得経験値について説明するブランだったが、その説明がまた悠の興奮を煽るとは思ってもいない様子である。
「ほんとか!? ほんとに2倍なのか? すげぇな」
ブランにとっては、どうということでもない獲得経験値2倍でも、悠にとってはとても魅力的な効果。悠のテンションがぶっちぎりにあがるのも当然である。
尚も、「経験値2倍とかゲーム二週目のクリア特典みたいなもんじゃねぇか。すげぇ」と早口に言うその姿は若干気持ちが悪い。
「なにがそんなに凄いのかわからないけどそうだよ。他にもあってね……」
途端、楽しげに話していたブランの言葉が不自然に途切れる。
それは何故か。
「悠……」
「ああ」
ブランはそっと悠の名を呼び、悠もまたその呼びかけにしっかりと反応する。
あんなにもテンションが高かった悠が真剣な顔でブランと共に同じ一点を見つめている。
しばらくの静寂。それが嵐の前の静けさとでも言うように辺りを支配する。
誰もが時を止め、相手の出方を待つ探り合い。
「……来るぞ」
そして、それが我慢ならなくなった魔物が大きく息を吸い込み吐き出した時、悠の言葉が発され戦闘は開始された。
悠が弓を構えたのと魔物が鳴き声を上げたのは同時期だ。
魔物が"キィー。キィー。"と甲高い音を発すると同時に、弓を構えた悠はその顔に苦さをのせた。そしてそれはブランも同じであり、二人して魔物の鳴き声を聞き顔を歪ませたのである。
「な、んだこれ」
「うう……。頭がおかしくなりそう」
物陰から姿を現した魔物は鳴くことを止めずに悠達に近付いていく。
「あ、れは、コウモリ?」
大きくなってくる耳障りな音に頭を抑えながらも、その姿を確認した悠は魔物を見てすぐに地球にいた頃生息していた動物。コウモリを思い浮かべた。
地球では見たことのない生物だったが、それでも目の前にいるそれは写真や図鑑の説明などで見たコウモリという存在に瓜二つだったのだ。左右にのびた黒っぽい羽。真ん中でキラリと光るその牙。そしてこの超音波。その全てがコウモリだと思った。
「コウモリの鳴き声。聴いてるだけでも不愉快だって言うのに魔力効果まで付いてやがる」
思考を超音波で邪魔されながらも悠は最近癖になりつつある鑑定を魔物に行っていた。
零細蝙蝠 LV.226
「ブラン! 自分の身は自分で守れるか?」
コウモリのステータスを確認した悠は、すぐに相手を危険と判断しブランに問いかける。もちろん、ブランは守るつもりだが万が一ということもある。その万が一のためブランに自衛手段はとれるのかと聞いたのだ。
「もちろん! 私を誰だと思ってるの」
「だと思った。だってブランだもんな」
微笑み明るく返してくるブランに、悠は元気よく返す。
すると、存在を忘れ去られていたコウモリは、苛立ったかのように一際強く鳴きだした。
「うわっ。なんだよこれ超音波ってか」
「そうみたいだね。さっき悠が言ったとおりコウモリのこの超音波には魔力効果があるみたい。聴きすぎると聴覚にダメージが来て最悪の場合耳が使い物にならなくなるかも……」
「物騒だな。とりあえずコウモリを黙らせる。ブランは何時でも自分を守れるようにしといてくれ」
「わかった」
すると悠は、弓の切っ先をコウモリに向け、一直線に放った。青白く輝いていた矢はその輝きを失うことなく標的にぶつかるまで飛び続ける。
やがて、矢がコウモリにぶつかると思われた直前、青白い光がこれまでより一層強い輝きを放ったかと思うとコウモリの鳴き声は歪み、悠とブランの耳からは不快音が一切消え去った。
「あれ? 超音波が聞こえなくなった」
悠が矢を放ってから不自然に音が聞こえなくなったことを不思議に思ったのか、ブランが悠に視線を向けどういうことなのかと聞いてくる。
「あー空間を歪ませたんだ」
空間を歪ませた。と、なんでもないことを簡単にやったとでも言うようにのたまった悠は、視線をコウモリに定め逸らさないままブランの質問に答える。
「え、悠。時属性の魔法、使えるようになったの?」
一方ブランは、言葉の意味をそのまま消化出来ずに悠の顔をじとりと見つめていたが、すぐさま状況を理解し、悠に新たな疑問を投げかける。
「ああ。てか、随分前から使えるからな。使ってないだけで」
「使えなかったの間違いじゃなくて?」
「ちょっと制御が出来なかっただけ!」
「使えなかったんじゃん」
「でも今成功したんだから結果オーライ! ……って、おっとと」
笑いながらブランと言い合っていると、コウモリがスピードを早めながらその大きな羽を広げ、不規則な動きで飛んでくる。
「超音波攻撃が使えなくなったからって今度は物理攻撃かよ」
その鋭い牙を覗かせながら悠に噛み付こうとしてくるコウモリ。一旦距離をとった悠は、赤い光を放つ火炎系魔法の矢でコウモリを狙う。
しかしコウモリも馬鹿ではない。悠に攻撃の隙を与えないように必死の猛攻をしてくる。
ぎりぎりで交わしていた悠だったが、それも長くは続くはずもない。交わしきれずコウモリに右腕を噛まれそうになってしまう。もう少しでコウモリの牙が悠に届く。そんな時悠を守るように半透明なシールドが展開された。
「悠。大丈夫?」
「ああ、ありがとな。ブラン」
そう。そのシールドを展開したのは紛れもなくブランその人である。
悠がコウモリの攻撃を受ける一瞬前、すぐさま魔法を詠唱し悠にシールドを展開してくれたのだ。
「うん。それはいいけど悠……」
「わかってる」
悠はシールドが展開されてすぐ、コウモリに標的を向け矢を放っていた。
お礼を言ってる間には放たれていた矢は、近距離でコウモリを貫き殺生していた。
火の魔力で燃え尽きた魔物は跡形もなく消え去った。
神月 悠
LV.48
種族:人族
職業:
HP:2450
MP:890(+1000)
STR:424(+47)
AGI:327
VIT:302
INT:283(+1000)
DEX:346(+1000)
LUK:295(+1000)
ユニークスキル:完全理解
スキル:鑑定、言語理解、状態異常耐性、熊爪、気配察知、威圧、武具作成(基礎)、創造魔法、風牙、反響定位
属性魔法:全属性
称号:異世界人、魔物殺し、弓使い、属性制覇
属性制覇:全属性をしっかりとコントロールし扱えるようになった者へおくられる称号。MP、INT、DEX、LUK+1000
「ねぇ悠。超音波って人間には聞こえないものなんじゃないの?」
「まぁ確かにな」
「てことはさ、零細蝙蝠の超音波攻撃って私達聞こえないはずじゃ……。それにさ、聞こえたらもうそれって超音波って言わないんじゃないの?」
「ブラン。さっきの蝙蝠は超音波攻撃というスキルがあったんだ。だから普通の超音波とは訳が違う。一般で知られている超音波とこの森に生息する魔物が使うスキル。一緒な訳がないだろ?」
「なるほどね」
以上。コウモリの超音波の真相です。
超音波で頭が痛いってなんだ? って思われる方もいるかと思いましたので一応の補足です。
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