再会
「でさ、なんでここにいるの?」
あんなにも情熱的で運命的な再会を果たした2人だったが、悠のその発言で再び緊張感のないゆるりとした空気が戻ってきた。
「なんでってひどいなー。悠の為にノワに我が儘言って来たって言うのに……」
少し頬を膨らませながら膨れっ面でそう反論する彼女は幼い外見に似合いとても可愛らしい。しかし彼女の口から聴くとは思わなかった名前に悠は驚きを顕にする。
「ノワ? それにそんなこと言ったって今俺の目の前にいるブランはブランであってもほんとのブランじゃないだろ」
「そうノワ。私の半神のような存在であるノワール。ノワにお願いして力を貸してもらったの。悠がシュヴァルツに転移したって聞いたから。てか、悠。よくわかったね! 私が私でもほんとの私じゃないって。確かにそう。私は本当の私の思念体のようなもの。私が今ここにいられるのは魔力のおかげで、話して歩いたり移動すること以外、今はなにも出来ない。でも、そうだな、悠の世界の人間ができることは大抵できるかな」
「思念体? でも俺に触れたり弓を触ったりすることは出来るんだな」
弓を持ち上げまじまじと見つめるブランに、悠は疑問点をぶつけていく。
「うん。今の私は魔力の塊のようなもの。魔力があれば大抵のことはなんでもできる。例えばこんなふうに弓を弾くことはできる」
そういってブランは、悠が念の為にと作っておいた普通の矢を用いて一点めがけて矢を放った。
ねっ? と可愛く後ろを振り向く彼女に、悠は内心可愛いなと呟きながら質問を続ける。
「てことは魔力がきれたらブランは消えちゃうのか?」
「そうだねー。まぁ、でもそんなすぐには消えないよ?」
そこまで言われて悠の中で一つの名案が浮かんだ。
「それって俺が魔力を供給すればなんとかなるものなのか?」
そう。ブランには魔力が必要。
ブランは魔力が無ければ何も出来ない。逆に言えば魔力があれば何でもできるということ。つまり自分が彼女に魔力を分け与えれば解決する。なんとも単純で捻った考えなどではないがそれでも理にかなった方法だった。
「うん! でも……。それだと悠の負担が多くなってしまう」
先程までの明るく元気な彼女から一転、自分が悠の負担になってしまうと言った彼女は、元気を無くし顔を下げうつむいてしまう。
(俺は本当に馬鹿だ。ブランにこんな顔させるなんて……。そういえばそうだよな。俺とブランが一緒に過ごしたのは少しの間だったけどこいつはこういう奴だった。自分よりも他人を優先させる優しい奴。いや、それもあるけど……。他人になにかをしてもらうことを極端に恐れる)
「ブラン。んな顔すんなって。俺なら大丈夫だし。それにブランは俺のためにここまで来てくれたんだろ?」
「うん。悠はこの世界は初めてできっとわからないこと多いと思って……。けど、それはただの建前で、ほんとは私が悠に会いたかった」
後悔しているのか、暗い雰囲気で語るブラン。
しかしブランには悪いが悠の心はブランのその言葉で蝋燭に火を灯したかのように暖かいものが広がっていた。
「ブラン。俺は嬉しいよ。ありがとう。だからそんなに落ちこまないで」
悠のその言葉で少しの元気を取り戻したブランは、ぎこちなくだがその綺麗な顔に笑みをのせて悠に微笑んでくれた。
*****
「ところで悠。ピアスの効果ちゃんと分かってる?」
あれからしばらくし、落ち着いてきた二人は悠の取ってきたハウンドウルフの肉を頬張りながら今までのことをお互いに話していた。
そこでふとブランが出してきた話題に悠の思考が停止する。
「効果? これにそんなものがあるのか?」
これ、と指を耳まで持っていきピアスを指さす悠にブランは驚いた、というような顔をする。
「え、分かってなかったの? 色々機能あるからある程度は仕方ないと思うけど……ほんとに?」
全然? 全く? と詰め寄りながら聞いてくるブランに、悠は困惑気味に座った状態のままずりずりと後ろに退る。
「あ、嗚呼……」
悠のその返答に、ほんとに悠は変わってないんだからと、本日何度目かの台詞をまた違ったニュアンスでぼそりと呟いたブランは、ピアスについて説明を始めるのだった。
「そのピアスはね、いっぱい効果があるんだけど、一番はやっぱりその端末を使えることかな」
「端末? 端末ってこれのことか?」
そういって定位置となっているポケットから端末を取り出しブランの目の前にかざす悠。
しかし、ノワから貰った端末が何故ブランから貰ったピアスと関係あるのかと疑問に思う悠であった。
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