契約
「・・・ふーん。じゃあ、聞くけどさ。」
私は首吊りを中断して、立っていた椅子に腰掛けた。
縄がプラプラと揺れている。
私はというと、脚組みしてるわけでもないのに、随分と偉そうな態度だ。
いじめられてた奴の態度とは思えない。
正直自分でも驚いている。
けど、今はそんなのどうでもいい。
「具体的に『力を貸す』って、何してくれんの?」
そう、問題はそこなのだ。いくら力を貸すったって、意味不明な戦闘機だけ渡されても困るし。
でもまあ、普通の人ならまだしも、この人は密室のこの部屋に現れたのだ。ただ者じゃないのがなんとなくだが分かる。
口をへの字に曲げる私に、ダリウスは関係のないことを私に問いかけた。
「火と水と雷と草と闇・・・、この中でどれが好き?」
と。
「・・・っは?」
そりゃあ、私もこんな間抜けな声が出てきますよ。
え、何、ポケ○ンの話?
てか、これって答えるべきなの?
まあ、ダリウスの態度を見る限りでは、拒否権は無さそうだしなあ・・・。
答えないと、こっちの質問も受け付けてくれないだろうしなあ。
んじゃ、ここは私がポケ○ンのゲームの中で、一番好きなキャラのタイプにしよ。
ってことで選んだのが、
「火・・・かな。」
「ん、りょーかい。」
よし、答えた。じゃあ、今度はこっちの質問に答えてもらおう。拒否権などないっ。
「それで、結局は『力を貸す』って何し」
「じゃあ、契約完了ってことで。まあ、復讐頑張って。」
そう淡々と告げると、ダリウスは無愛想に契約書の様なものを破く。
そして破った契約書を一つのテディベアの額に貼りつけた。
そのテディベアを一方的に私に押し付け、窓の鍵を開けた。
って、おいっ!!?なに、帰る気してんだ!
この野郎・・・、私の話を、
「聞けっつーのおおおおおお!!」
私がそう叫ぶと、ダリウスはゆっくりと振り返る。
「ねえ、なんで暴力とか暴言って嫌って思うか分かる?」
「っはあ?」
答えるまもなくダリウスは続ける。
「それは、『感情』があるから。僕はね、感情が無い方が楽だと思うんだよね。まあ、ましては、感情が無ければ楽とも思わないんだけどさ。」
私には答える気力がなかった。
黙ってこのマイペース野郎の話を聞いとこうと思った。
「だからさ、いくら僕が君に不思議な力を与えても、いくら僕が君に戦闘機を与えても、攻撃された時に君が痛いなんて思ってたら、復讐の時に一番邪魔になるでしょ?」
「そこで、聞くけど。」
「条件付きで、『感情』を消してあげようか。」
一気に話し終えると、ダリウスはいやらしく笑った。
私は、椅子に座ったまま呆然とダリウスを見つめた。
私の平穏だった日常は終わりを告げる。
この男とテディベアによって。




