日常の終わり
クラスで特に目立つわけでも落ちぶれているわけでもない、正に凡人な私は今日も一人教室の窓から空を見上げる。
教室の隅でコソコソといやらしい笑顔で話す女子グループが目の端に映る。
正直この日常に嫌気が差すし、つくづく呆れている。
だってそうでしょ?誰に言われているかも分からない悪口や、偽善者ぶりながら向けられる冷ややかな視線にいつも怯えながら暮らすなんて、そんなのちっとも楽しくない。
だからって、私も悪口を一切言っていないわけじゃない。
むしろバンバン言っている。
そうでもしないと、この世は生きていけないんだ。
ドラマや漫画だったら『そんなのかっこ悪い』とか言っていじめに立ち向かったりするけど、現実はそんなうまくいかない。
だから言ってる、ただそれだけ。
皆とおんなじ事してるだけ。
なのに、どうして私のかな。
気づくと、いじめのターゲットになってるだなんて、ジョークにしては笑えなすぎだよ。
今思えば、教室の隅で固まって話していた女子達は私の事を話していたに違いない。
平穏な日常が音を立てて崩れていく気がした。
時間が立つにつれ、ヒートアップするいじめ。辛いから、苦しいから・・・。
リストカットをして自殺未遂したことだってある。
建物の屋上から飛び降りたこともある。
でも、死ねない。いつも病院で目が覚める。
いつまで経っても死なない私に、ものすごく嫌気が差した。
こうなりゃ最後、首吊って死んでやる。
光の無い私の目に、微かな闘志が燃えたぎる。
「ふへへぇ・・・っ、これでやっと私は死ねるんだあっ・・・!」
自分でもキモい笑い方だなって思った。
カーテンを閉めて、ドアには鍵をかけて、そうだ誰も入ってこれないように、本棚でドアを塞ごう。窓の鍵も閉めなくちゃ。
紐を天井にくくりつけて、ゆっくりと椅子に上る。
「随分とつまらない人生だったな。」
泣きたくなる。
どうして私が、死ななきゃいけないの──?
「──復讐してやりたい、けど。私にはそんな力は無いし。」
弱い奴は死ぬしかないんだよ。そうだよ。
馬鹿じゃないの、私。恥ずかしい。
「早く死のう・・・。」
首に縄をかける。
後は椅子を蹴るだけ。
「死ぬの?」
突然、ベッドに腰掛けている青年が、笑顔で問う。
決して何があっても崩れなそうな笑顔がとても怖かった。
「誰・・・?」
綺麗な黒髪に、赤い瞳。
身長はざっと180cmという所だろうか。
猫耳のニット帽がよく似合っている。
「ダリウス、ダリウス・フィンティガー。それが僕の名前だよ。」
外人さん・・・なのだろうか?
それにしても不思議な人だ。
この密封空間に入って来られるなんて・・・。って、あれ?なんで、この人居るの?
「ど、どうやって入ったの・・・?」
「そんなことよりさあ、君、復讐してやりたいんでしょ?」
質問を無視して青年は続けた。
「力を貸してあげる。」
真っ白な歯を見せて、笑いながら続けた。
それはとても酷く不気味なものであった。