始まりは終りから
とりあえず三話目までは一気に投稿致します。
枕元に猫がいる、耳の先としっぽの先だけ白く、それ以外は真っ黒い猫。
猫の名前は「ミーア」、この子の鳴き声が由来です。
深い緑の目で真っ直ぐに私を見つめています。
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唐突だけど私はもうすぐ死にます。
何故って?それは私が不治の病に冒されてるからです。
生まれつき体が弱くて、それに体力も無くて少し動くだけで息が上がっちゃったり、走るなんてもってのほかと言う位虚弱体質でした。
それでも、ある日突然病院で目が覚めるまでは人よりちょっと風邪を引きやすい位にしか思ってなかったんです。
後から聞いた話なんだけど、授業中に急に倒れて大騒ぎになったそうです。
それで大きな病院で精密検査を受けた方がいいと言う事になり、検査をしたのですけど、そしたらなんとお医者様でも治し方が分らない病気に掛かってる事が分りました。
そしてびっくりする程あっさりとお医者様が重大な事を言いました「貴方の余命は後半年です」と…。
・・・・
それが十五の誕生日まで、後七ヶ月と言う時のお話。そして今、私は十五歳と一ヶ月、少しだけお医者様の宣告より頑張りました。
案外この人生も悪くは無かったかなと思ってます。入院してからも毎日の様に友達は遊びに来てくれたし、家族も一緒に居てくれましたしね。
だけど、それも今夜でおしまいです。何でそれが分るのか上手く言えないけど、でも、それは確実に今夜なのです。
※ ※ ※ ※ ※
「ミーア、どうやってここまで来たの?」
「・・・・」
ここは県立病院の終末医療棟なので、猫が入れる筈が無い場所なのです。それ以前にそもそも、ミーアを連れてきた事は無いからこの場所も知らないはずです。
「もしかして、今日はお父さんもお母さんもお姉ちゃんも、皆来れないからミーアが代りに来てくれたの?」
「・・・・」
よりにもよってと言うか、丁度今日は家族全員が大事な用事が重なって来られないのです。
「ありがとう、おかげで寂しく無いよ」
「・・・・」
ほんとは凄く不安で怖かったのだけれど、ミーアが来てくれたら不思議と落ち着けました。
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日も暮れて暫く経ち、殆どの面会者達も帰り病院は静けさに包まれた。
「………ごめん、そろそろ…みた…い…」
「・・・・」
「……次…………ミー……ア……一緒……良い……ね」
ついに来る時が来てしまいました。だんだんと意識が掠れて行くけれど、ミーアのお陰で怖くは無いです。今も私のすぐ横に座ってこっちを見つめてくれています。
その深い緑の眼を見つめ返して、そのまま瞼を閉じていきます。色々な思い出が頭をよぎります。
そして、最後の最後に、もう一度ミーアを見る為に瞼を開けます。 何だかミーアの尻尾が二つに分かれてる様に見えた気がしました。でも、きっと見間違いだよね。そう思いながら、今度こそ瞼を閉じました。
「分かったにゃ。 そのおにぇがい任せるにゃ。 ようするにこう言う事だよにぇ」
もはや誰も居ないはずの病室でそんな言葉が囁かれした……。