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第九十八話 ある病院に潜入している理由 その2

 私は入口から近い部屋から順番に部屋を掃除した。


 もちろん、部屋にいる入院患者の顔を確認しながらだ。


 違う!違う!違う!


 いくつも部屋を掃除したが、そこにいるのは学園長ではなかった。


 掃除をしていない部屋が少なくなっていくと、私の焦りは大きくなっていった。


 本当に、ここに学園長はおられるのだろうか?


 私は検討違いをしているのではないか?


 そして、ついに最後の部屋になった。


 ドアを開けようとすると声をかけられた。


「あっ!ちょっと待って!」


 声をかけたのは警備員だった。


「清掃員さん。この部屋は掃除しなくていい。ご苦労さん。もう帰っていいよ」




 深夜になった。


 病院から一時的撤退した私は再び戻って来た。


 警備員一人ぐらい無理矢理振りほどいて部屋に入るのは簡単だったが、私はそれをしなかった。


 騒ぎになることは避けなければならないし、警備員の態度で私はあの部屋に学者長がいると確信した。


 さて、この病院の夜間の警備の状況については事前に調べてある。


 夜中の二時に眠気覚ましのコーヒーが警備員たちに配られることになっている。


 そこに即効性の睡眠薬を入れた。


 今は夜中の二時を過ぎた。


 さて、どうなるか……


 バタバタと急ぎ足で歩き回る音が聞こえる。


 どうやらコーヒーに睡眠薬を入れらたことに気づいたらしい。


 やはり、警備員の質は高いようだ。


 コーヒーの睡眠薬で眠らされる小説の定番のような者たちではなかった。


 警備員たちの足音から判断すると、特別病棟の方に向かっている。


 明らかに特別病棟の警備を強化しようとしている。


 これでますます特別病棟に学園長がおられることに確信が持てた。


 さて、特別病棟の警備が強化されたということは、他の警備は薄くなったということだ。


 私は隠れていた場所から出ると、特別病棟から一番離れた病棟に向かった。


 この病棟は老朽化により今は使われていない。入院患者も職員もおらず。来週には取り壊されることになっている。


 よし、あった。あった。


 来週からの取り壊しのためにすでに足場が組んであった。


 私はそれを壊し始めた。


 ガシャン!ガシャン!と壊れる音が鳴り響く。


 これで侵入者は私一人でなく多数だと判断するだろう。


 私は素早くその場を離れて目的地へと向かった。


 それは、この病院の馬車置き場だ。


 この病院では対応不可能な患者が出た場合に備えて、救急馬車が二十四時間待機している。


 だが、その馬車は入院患者に紛れ込ませた重要人物の移動用にもなっているに違いない。

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