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第八十二話 学園長が独白している理由 その4

 魔法封じの手錠が掛けられた男が大賢者さまが呼んでおいたらしい警察官たちに連行されて部屋から出ていった。


「あの、大賢者さま。申し訳ありません。私にはまったく状況が分からないのですが


「うむ、もちろん、説明しよう。まず、この部屋の壺を割ったのは、あなたの姪ではない。今の男だ。『姿隠し』の魔法を使い。この家に忍び込み壺を割ったのだ」


 魔法「姿隠し」は私も知っている。


 大陸では一般常識だ。


 それを使用中の魔導師は他者からは目に見えなくなる。


 過去には、この魔法を使用して暗殺や窃盗が頻発した時代があった。


 そう、「過去の時代」なのだ。


 現代では簡単に「姿隠し」を見破る方法があり、逃げた後でも使用した痕跡が残るため警察が捜査すれば簡単に追跡することが可能なのだ。


 これも一般常識である。


「すぐバレるようなことを何故あの男はしたのですか?」


 私の質問に大賢者さまはエレノアを見ながら答えた。


「それはもちろん。こちらのお嬢さんとあなたを仲違いさせるためだ。あなたは壺を割ったのは、お嬢さんと決めつけとっただろ?そんなことをすれば、お嬢様には大きな心の傷が残る」


「それはエレノアと私にとっては大変なことですが、あの男に何の利益があるのですか?」


「あなたとお嬢さんの間に溝ができれば、お嬢さんのご両親との間にも溝ができるかもしれない。そうなったら得をする人物があの男を送り込んだのだ」


「なるほど、そういうことをしそうな人物に何人か心当たりがあります。しかし、『姿隠し』の魔法など警察が調べれば簡単にバレます。そのことを考えなかったのでしょうか?」


「あなたは壺が割れたのをお嬢さんの不注意だと思い込んで、ろくに調べようとしなかっただろ。それに警察は殺人か窃盗でもなければ動かん。あなたは自分の姪を無実の罪に陥れるところだったのだぞ」


「本当に申し訳ありません出下。大賢者さま」


 私は大賢者さまに向けて頭を下げた。


「おい、おい。頭を下げる相手を間違えておるぞ」


 私はエレノアに向けて深々と頭を下げた。


「本当にすまなかった。エレノア。私を許してくれるだろうか?」


 エレノアは無垢な笑顔を私に向けた。


「うん、もちろん許すよ!だって、セオドアおじさまはちゃんと謝ってくれたんだもの!」




 あの少し後、大賢者さまが「姿隠し」を防止できる安価な魔道具を開発して、各家庭に常備されるようになったので「姿隠し」による犯罪は撲滅された。


 あの時、大賢者さまが来なければ私とエレノアの関係は悪化していただろう。


 私は今エレノアと崖の上にいることに意識が戻った。


 いや、今は悪化しているのだから同じことか?

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