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第八十一話 学園長が独白している理由 その3

「怖くないのかって、何がですか?セオドアおじさま」


「こんな所を歩いていることをだよ。この高さから落ちたらどうするんだ!?」


 エレノアは少し首をかしげた。


「あの……確か、セオドアおじさまは高所恐怖症ではなかったですよね?私が十歳ぐらいの時に私が飼っていたペットの猫が木に登って下りられなくなったのをセオドアおじさまが木に登って助けてくださいましたよね?」


「あの時の木と今の崖では全然違う!」


 私は思わず怒鳴ってしまった。


 エレノアが怯えた表情になった。


 その表情に古い記憶が呼び起こされて私は罪悪感にかられた。


 エレノアが十歳ぐらいの時に彼女にこういう表情をさせてしまったことがあった。


 彼女が私の家に彼女の両親と遊びに来た時、私の家の応接間に飾られていた骨董品の壺が割れてしまうという事件があった。


 応接間にいたのはたまたまエレノア一人だったので、彼女が壺を割った犯人として疑われた。


 その壺は私の亡くなった父親が大切にしていた壺だった。


 だが、私としてはそのことでエレノアを叱るつもりはなかった。


「エレノア。その壺は大切な物だが、エレノアの方が大切だ。壺を割ったことは怒らないから。不注意でも壺を割ってしまったことはあやまりなさい」


 私はエレノアを怖がらせないようにできるだけ優しい口調で言った。


 だが、エレノアはこう主張した。


「わたし壺を割ってなんかいないもん!わたしがこの部屋に来た時にはもう割れていたんだもん!」


 私はこれはいけないと思った。


 壺を割ったことはわざとじゃないにしても、それを謝らないことは教育として良くないと私は思ったのだ。


「おじさんはエレノアに罰をあたえようとしているのじゃないのだよ。不注意だとしても壺を割ったことはちゃんと謝りなさいと言っているのだよ」


「だって!だって!わたしは本当に壺を割ってなんかいないもん!」


「嘘をつくのは悪い子だよ?」


「わたしは嘘なんかついてないもん!」


 エレノアは今にも泣き出しそうな怯えた表情になった。


 その時、不意の来客があった。


 大賢者さまだった。


「こ、これは大賢者さま!当然のご来訪を歓迎いたします!」


「セオドアさん。突然で悪いがちょっと部屋を荒らすかもしれん」


 大賢者さまはそい言うと、部屋の隅に向けて魔法の杖を向けた。


 杖を向けた先には今まで見えなかった杖を持った男の姿があらわれた。


「ワシは世間から『大賢者』と呼ばれている者だ。お主意味は分かるかのう?」


「あなた様に抵抗するのは無駄だと分かっております」


 男は杖を捨て両手を前に差し出した。


 魔法封じの手錠が男に掛けられた。


 事態を把握できないでいる私に大賢者さまが説明を始めた。

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