第七十九話 学園長が独白している理由 その1
私の名前はセオドア・フランクリン、大陸中央学園の学園長だ。
気を失っていた私が目覚めるとベッドに横になっていた。
ベッドに横になったまま周りを見回すと部屋にある家具はベッドの他には椅子が数脚あるだけだった。
壁には窓は無く、ドアが一つあるだけだった。
気を失う前の最後の記憶を頭に浮かべた。
カオル・タイラが、大賢者さまの弟子が、いきなり私の前にあらわれて、次の瞬間は私は気を失っていた。
気を失った私はこの部屋に運ばれたのだろう。
現状を認識すると、私はベッドに目を閉じて眠ることにした。
私は肉体的には平凡な一般人にすぎない。
監禁されていて脱出する能力など持っていない。
どんな事態にも対応できるように体力を温存するべきだろう。
目を閉じてすぐにドアが開く音がした。
ベッドに向かって来る足音がする。
私は目を閉じたまま寝たふりを続けた。
「セオドアおじさま……こんな形で会うなんて……」
私の姪のエレノア・フランクリンの悲しげな声が聞こえる。
彼女は政治家としての私を尊敬していた。
私の裏の顔を知ってしまったのは純情な彼女にとって大変な精神的なショックだろう。
「セオドアおじさま。起きてください」
私は寝たふりをやめて起きることにした。
身体を起こして目を開けると、エレノアはベッドの横の椅子に座っていた。
部屋には他には誰もいない。
「やあ、エレノア。おはよう。ところで、ここはどこだね?」
「それは教えてはいけないと言われました」
「そう命令したのは、大賢者さまかね?」
「それも教えてはいけないと言われています」
「そうかね」
「セオドアおじさま。正直に話してください」
「何をだね?」
「全部です。隠している事を全部」
「私には隠している事なんか無いよ」
「セオドアおじさま。私にまで嘘をつかれるんですね」
エレノアは悲しげな表情で私を見つめている。
姪であるエレノアに、こんな表情をさせてしまっていることを正直叔父として心が痛む。
エレノアのことは赤ん坊の頃から知っているのだ。
だが、これこそが大賢者さまの策なのだろう。
エレノアと1対1にすることで私が罪悪感から白状してしまうことを狙っているのだろう。
だが、そうはいかない。
例え、姪であっても上手く利用して、この窮地を脱してみせる。
「エレノア。大賢者さまは誤解しているのだよ」
「誤解ですか?」
「そうだ。誤解を解くために大賢者さまに直接会わせてくれないか?」
「分かりました。セオドアおじさま。ついて来てください」
よし!上手くいった!
とにかく、この部屋から出て……。
「な、何だ!これは!?」
ドアから外に出た私は目にした物に驚愕した。
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