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第六十七話 カオルたちが隣の個室に移動した理由 その9

「それでは本題に入ろう」


「うむ、真面目な話をしよう」


皇帝と大統領は真剣な表情になって椅子に座ると、部屋にいる他の人間たちに宣言するように言った。


大陸における二つの超大国の指導者としてふさわしい威厳に満ち溢れていた。


二人の背後にいる人物がいなければ、という条件が付くが……。


皇帝と大統領は同時に後ろに振り向いた。


「娘さん、余たちを離してはくれないだろうか?」


「お嬢さん、私からもお願いする」


皇帝と大統領の背後にはエレノアがいた。


エレノアは両腕で皇帝と大統領を抱き締めていた。


「あの……、皇帝陛下、大統領閣下、私に抱き締められるのは、ご不快ですか?」


エレノアは泣きそうな顔で、か細い声になっていた。


皇帝と大統領はあわてて首を横に振った。


「いや、そうではない。しかし、エレノアさん、あなたのような若く美しいお嬢さんが、余のような老人を抱き締めても愉快ではないだろう?」


「私も皇帝陛下と同じ意見です」


エレノアは首を横に振った。


「いいえ、いいえ、今はお二人とも『可愛い女の子』です」


皇帝も大統領も少女の姿のままであった。


「エレノアさん、説明したでしょう。私たちのこの姿は大賢者さまの魔法での仮初めのものです。私たちの本当の姿は新聞などで写真を見たことがあるでしょう?」


「はい、もちろん。お二人のお写真は拝見したことがあります。お二人とも威厳に満ち溢れた大政治家のお姿をしておりました」


「それならば分かるであろう。余たちは本当は『可愛い女の子』ではない。だから離して……」


エレノアは二人を抱き締める腕に力を増した。


「いいえ、いいえ、お二人は間違いなく『可愛い』です!」


「それは、どういうことかね?」


大統領の質問にエレノアは新たな学説を発表する学者のように答えた。


「まず、今、お二人は見た目は間違いなく『私より年下の可愛美少女』です!見た目だけでも可愛かったですが、その正体が皇帝陛下と大統領閣下だと説明された時、私の中に何とも言えない感情が生まれました」


「私たちの正体を知ったら普通嫌悪感を持つのじゃないかね?」


「いいえ、大統領閣下、私は『ますます可愛い』と思ったのです!」


「余たちの正体を知った上で可愛いと思うとは、どういうことかね?」


「お答えします。皇帝陛下、見た目は可憐な美少女でありながら口調や仕草には幼さは全く無く、老練な政治家の口調と仕草に、お二人はなっておられます。そのような少女は本来は存在しておりません。ですが、ここには存在しおります。それが私には奇跡のように思えるのです!」


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