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第六十一話 カオルたちが隣の個室に移動した理由 その3

「えっ!?ユリアさんとアンさんを側室にするつもりなの!?」


カオルは驚いた。


「うん、カオルくんがサリオンの正妃になるのなら、僕は側室になるよ」


「あたしも同じです」


ユリアとアンの言葉に、カオルはますます驚いた。


「お二人とも本気なのですか!?ユリアさんはサリオンさんのことを嫌っていて、アンさんは怖がっていたんじゃないですか?」


「うん、そうだけど、今回のことで、ボクのサリオンに対する印象は変わったんだ」


「あたしもです」


「今回のことって……?」


カオルが疑問の表情になると、ユリアが少し怒ったような顔になった。


「カオルくん!駅前広場でカオルくんが倒れた時、ボクたちがどれほどショックを受けたか分かる!?」


「あ、あれはですね……」


「もちろん分かるよ!『敵を騙すには、まず味方から』ということなんだよね!?」


「そ、そうです!」


「ボクたちは敵に監視されているだろうからね。カオルくんが倒れた時にショックを受けていないと不自然になるからね」


「そ、そうなんです! あれが芝居だと事前に知らせていたら不自然な演技をみなさんがすることに……」


「カオルさん、正直に言って、事前に知らせなかったのは、あたしが一番問題があると思ったからでしょう?」


アンがカオルに詰め寄った。


「そ、それは……」


「分かってるわ。あたしは他のみんなみたいに常に注目されていないから演技力は無いわ。事前に知らせれていたらダイコンヤクシャ以下だったでしょうね」


カオルはアンが以前教えた母国語の「大根役者」を覚えいてくれていたことを少し嬉しく思いながら、言い訳を考えていた。


「でも、まあ、それは済んじゃったことだからいいわ。とても面白いものが見れたことだし」


「面白いものって、何を見たんですか?」


アンは悪戯っぽい笑みを浮かべならがら視線をサリオンに向けた。


「サリオンさんが、とっても『可愛らしい』ところを見れたんです」


「えっ!?サリオンさんが『可愛らしい』!?」


熊のような大男であるサリオンとは真逆の「可愛らしい」という言葉に、カオルは激しい違和感を持った。


「ア、アンさん!あのことをカオルさんに話すつもりか!?」


サリオンは恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていた。


それを見て、カオルはサリオンのことを少し可愛く思ってしまった。


「いいじゃないですか、カオルさんにもサリオンさんの『可愛らしい』ところ知ってもらいましょう」


アンのサリオンへの態度を見て、カオルは「おやっ?」と思った。


アンがサリオンに対して余裕がある態度でいるからだ。


出会った最初の頃よりはましになっているが、アンはサリオンに怖れを感じているはずだった。


だが、怖れが消えているどころか余裕まで持っている。


何があったんだろう?とカオルは思った。

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