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第五十七話 カオル・大賢者・皇帝・大統領が同じ部屋にいる理由 その4

大統領の更なる無茶ぶりにカオルは困惑した。


(大統領や皇帝というのも結構子供みたいに我が儘だな。いや、子供の方がまだましだな。しかし、どうしよう?どうすれば、お二人を納得させられる?)


カオルが皇帝と大統領の顔を見ると、二人とも興味深そうにカオルを見ていた。


(お二人とも僕がどうするか面白がっているみたいだな。下手なことはできないな)


カオルは皇帝と大統領の手元にある二つに分けられたケーキを見た。


(本で読んだやり方で半分にしても納得してくれないならどうすればいいんだ?)


カオルは自分の頭の中の今まで読んだ本の記憶を検索した。


(駄目だ!本の中には、こういう場合の解決策が無い!自分で何か思いつかなければ!)


ケーキを見ながらカオルは考え込んだ。


(たかがケーキでこんなに悩まなくてはならないとは……、『たかがケーキ』?こんな風に思うなんて僕もずいぶん贅沢な生活に慣れたもんだ)


カオルは大賢者の弟子になる前、旅芸人の一座にいた頃のことを思い出した。


カオルの祖国である東方諸島国にはケーキは無いが、饅頭や羊羹のような甘い菓子はある。


東方諸島国の一般庶民にとっては、ささやかな嗜好品で、子供でも小遣いを少し貯めれば買えるような値段であった。


しかし、年季奉公をしているカオルは小遣いも無く、店先に並べられている饅頭や羊羹を遠くから眺めていることしかできなかった。


(お客さんから差し入れだと饅頭や羊羹を一座が貰ったことあったけど、僕に分けてもらえることはほとんど無かったからな。ごくたまに一つ分けてもらえることがあっても、先輩の芸人に奪われないように、急いで食べなければならなかったから味わう暇はなかったな)


テーブルに山ほど並べられているスイーツをカオルは眺めた。


(そんな僕がスイーツを好きなだけ食べられるようになるとはな。あの頃は想像もできなかったな)


カオルは自分のケーキにフォークを刺して、一口食べた。


「甘い!美味しい!生クリームの甘みは最高だし!舌触りも最高だ!」


「待て!待て!カオルさん!余たちの問題が解決していないのに、一人で食べないでくれ!」


「そうですよ。解決策を提示してください」


「分かっています。少し考える時間をください」


(とは言っても何も思いつきそうにないな。いっそのこと問題その物が消えてなくなってしまえば……、ああ!そうだ!そうすればいいんだ!)


カオルは皇帝と大統領の手元にあるケーキを奪うと、一気食いするように自分の口に入れた。

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