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第百十二話 カオルから結婚をすすめられている理由 その5

 いつの間にか私はカオルの話に引き込まれていた。


 彼はどちらかと言うと小声で話している。


 だけど、それが不思議と耳に通る。


 自分の話を聞いて欲しくて大声でがなり立てるように話す人がいるが、私はそれは逆効果だと思う。


 話の内容を理解する前に、声が不快で聞く気をなくすのだ。


 カオルの話し方はその逆だ。


「カオル。あなたの話には引き込まれるわね。もっと聞いてみたいと思うわ。さすがは元芸人ね」


「お褒めいただいてありがとうございます」


「あなたのお話は何かの罠でしょう?心理的な」


「はい、そうです」


「あっさりと認めるのね」


「ここで、『罠じゃないです』と言っても信じてはもらえないでしょ?」 


「それはそうね。それで、どんな罠なの?」


「それは教えられません」


「それもそうね。じゃあ、話を続けて」


「ええと、どこまで話しましたか?」


「座長があなたを『犯人』として差し出して『真犯人』を油断させたところよ」


「ああ、そうでしたね。それでは……」


 カオルは饒舌に長々と話した。


 長々とした話は私は普通は苦手だ。


 自分の時間を無駄使いされているように感じるからだ。


 だけと、カオルの話は本当に面白い。


 有意義な時間を過ごしている。


「……というやり方で、座長は村長の息子が『真犯人』である証拠を手に入れたんです」


 私は思わず拍手をしていた。


「めでたしめでたしね。あなたのところの座長さんは豊富な人生経験に裏打ちされた老練な男性のようね」


「えっ!?座長がお年寄りだって私言いましたっけ?」


「話の感じから、そう思ったのだけと、けっこう若い男性なの?」


「座長が男性だって私言いました?」


「座長って女の人なの?」


「はい、そうです。そして、おそらく若い方です」


「『おそらく若い方』って、どういうことなの?」


「座長の年齢を私知らないんです。何度か聞いたことあるんですけどごまかされてしまって」


「見た目でだいたいの年齢は分かるでしょう?」


「それが分からないんです。二十代と言えば、そう見えますし、四十代のようにも見えましたから。それにかなり色っぽい人でした」


「色っぽいって、どんな風に?」


「座長は舞台の上で芝居をすることもあったんですけど、若い娘の役も、老婆の役も見事に演じていました。どんな役をしても艶めいていて色っぽいんですよ。座長は『どんな役をしても色っぽく見えるのは私の欠点だ』と言ってましたが」


 カオルが座長のことを語る表情を見て私は気づいたことがあった。


「カオル。あなた座長に恋をしていたんじゃないの?」

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