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第百七話 カオルと食事をしている理由 その4

 そう、私は学園長のためになら何でもする。


 私は懐に入れてある万年筆に触れた。


 この万年筆は私が大学生の時に学園長からプレゼントされた物だ。


 壊れて書けなくなってしまったが、「お守り」としていつも懐に入れている。


 不安になると今は万年筆に触れて自分を慰めている。


 こうやって万年筆に触れていると学園長が側にいてくれているようだ。


「あの、すいません。その万年筆貸してもらえませんか?メモしたいことがあるんですが、書く物を忘れてきてしまって」


 懐から万年筆がはみ出てカオルに見えてしまったらしい。


 私は即答した。


「お断りします」


「何でですか?意地悪しないで貸してくださいよ」


「これは私の大事な物だ。あなたに限らず。私以外の誰にも触れさせる気はない」


「そこを何とかお願いします」


「何と言われようと無理だ。第一この万年筆は壊れていて書けない」


「何で壊れている万年筆を大事に持っているのですか?」


「それは……答える必要はないだろ!」


 怒鳴った私に対してカオルは冷静に対応した。


「壊れて書けない万年筆を大事に持っているとうことは、それは何かの『記念品』のような物だと考えるべきですか?」


 カオルの言葉は「正解」に近かった。


 私が何も言えないでいると、カオルは畳み掛けて言葉を続けた。


「その万年筆は高級品でかなり高価です。しかも、あなたが大学生の頃に発売されたタイプです。普通の大学生が買える値段じゃありません」


 カオルはいったん言葉を切ると、嫌な感じの笑顔を私に向けた。


「その万年筆、学園長からプレゼントされた物でしょ?」


「だったら、どうだと言うんだ!?」


「いや、本当にあなたにとって学園長は大事な人なんだと思って」


「当然だ。私の恩人だ」


「ふーん、あなたにとって学園長は恩人なだけなんですか?」


「いや、『恩人』という言葉だけでは足りない。私が全身全霊をつくすべきお方だ。どれだけ言葉をつくしても足りない」


「ふーん、それなら学園長とあなたは一緒になったら、どうですか?」


「学園長をさらって私たちを離れ離れにしたのは、お前たちだろう!」


 怒声を浴びせてもカオルは平然と返した。


「いや、そういう意味じゃないですよ。学園長から見てあなたの立場は裏の秘書のようなものでしょ?」


「そうだが、それがどうかしたのか?」


「それ表には出せない関係ですよね?」


「そうだが、私は充分に満足している」


「プライベートで一緒になればいいんです?」


「どういうことだ?」


「学園長とあなたが結婚すればいいんじゃないですか?」

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