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第百六話 カオルと食事をしている理由 その3

 卒業試験の魔法の実技試験の試験官に賄賂を送っていたのは私の父親の方だった。


 試験官に「ライバルの男子生徒が不正をした」と嘘の証言をさせたのだ。


 目的は私を首席の成績で卒業させるためだった。


 もちろん、私の首席での卒業は取り消し、ライバルの男子生徒が首席での卒業となった。


 父親が勝手にやったことで私は関わっていなかったことは証明されたので、私の卒業は取り消されはしなかった。


 だが、進学が決まっていた帝国の最高峰の大学である帝立魔導大学への入学は取り消された。


 滑り止めで受けていた私立の名門魔導大学の合格は取り消されなかったので、私はそちらに進学した。


 もちろん、私は父親を詰問した。


「なんで、こんなことしたのよ!」


 それに対して父親はこう答えた。


「お前のためだ!」


 詳細について父親は話した。


 魔導師の世界は建前は男女平等だが、現実には男性の方が出世に有利になっている。


 私が出世するためには「高等学校の首席での卒業」が必須だった。


 だが、私は卒業直前にそれを逃した。


 だから、私のために父親は不正をしたと言うのだ。


 その後、父親の口から出たのは罵詈雑言の嵐だった。


 具体的に何と言われたかは思い出したくない!


 私が「女」として生まれたことへの非難だった。


 父親は地元の有力貴族に雇われていたが、当然解雇された。


 無収入になった我が家は生活に困窮するようになった。


 父親は毎日朝から酒浸りになり、私と母親に罵声を浴びせるのが日常となった。


 貯金はあったが、一年と経たずに使い果たし、授業料が支払えず。私は大学を中退しなければならない状況におちいった。


 そんな状況を救ってくれたのが学園長だった。


 学園長は私の父親の知人だったのだが、私の窮状を知り資金援助を申し出てくれたのだ。


 それに対して父親は激しく反対した。


 私に「女の武器を使って学園長を誘惑した」と非難したのだ。


 もちろん、そんな事実はない。


 学園長は純粋に教育者として私を助けようとしてくれたのだ。


 だが、父親はそうは認めなかった。


 私を「水商売の女」「売春婦」とまで罵ったのだ。


 私の父親に対してわずかに残っていた家族としての愛情はそれで消え去った。


 私は母親と家を出て行くことにした。


 一人残された父親はアルコール依存症になった。


 治療のため病院に入院するための費用も学園長が出してくれた。


 学園長には多大な恩がある。


 だから、大学を卒業後、学園長をお手伝いする仕事をすることにしたのだ。


 表に出せない裏の仕事も私は喜んで引き受けた。

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