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第百四話 カオルと食事をしている理由 その1

 私は地面に座って焚き火を眺めている。


 焚き火を挟んで私の向かい側にはカオル・タイラが地面に座っている。

 もす



 焚き火の上に金網が置かれて、そこで複数の「モチ」が焼かれていた。


 カオルは右手に持った二本の棒で何度もモチをひっくり返している。


「しょっぱいのと甘いのどちらが好きですか?」


 カオルが私に質問してきた。


「甘いのが好きだ」


 カオルが焼いたモチをご馳走になることになった。


 理由は、さっき私がモチを食べた後、カオルがモチ味について質問してきたので、「この状況で味なんか分からない」と答えた。


 カオルは「ああ、それはそうですね」と金網でモチを焼き始めたのだ。


 カオルは焼いたモチを片手で持つ大きさの器に入れた。


 器にはすでに黒い粘り気のある黒い液体で満たされていた。


 そこにモチが入ると「オシルコ」という食べ物になるそうだ。


「どうぞ、食べてください」


 カオルは私に器を渡した。


 器には黒い液体の中で白いモチが一つ浮かんでいる。


 このような見た目の食べ物は初めてだ。


 私が普段なじみのある食べ物で例えて言えば、モチがパンで黒い液体がスープのような物だろう。


 古くなって堅くなったパンをスープに浸して柔らかくして食べるというのは普通の食べ方だ。


 だが、モチという食べ物があることは知識としては知っていたが、実際に口にしたのは先ほどが初めてだ。


 前述したように、先ほどは味がわからなかった。


 だがら、黒い液体に浮かぶモチの味がどのようなものかまったく想像がつかなかった。


 味が想像がつかない物を食べる気にはなかなかならない。


 だが、拒否できるような雰囲気でもない。


 私がオシルコを眺めたまま戸惑っていると、鼻に覚えのある匂いを感じた。


 目線を上げると、カオルは大きな肉のかたまりを焼いていた。


 地面に散らばっている破られた包み紙を見ると、商品のハムを焼いているようだ。


 包み紙に書かれた文字を読むと贈答品の高級品だ!


 以前、学園長への贈り物をおすそ分けしてもらって一度だけ食べたことがある。


 料理評論家でない私は適切な表現ができないが、「絶品!」としか言い様のない味だった。


「ハムが食べたいですか?」


 カオルの言葉に即座にうなづきそうになったが我慢をした。


 施しを受けるようで嫌だった。


「いや、別に」


「そうですか」


 カオルは焼き上がったハムをナイフで二つに切り分けた。


 二枚の皿の上にそれぞれのハムを置いた。


 カオルはハムに胡椒をまぶすと手づかみでがぶりついた。


 下品な食べ方だが、凄くうまそうだ!


 私の視線は残ったもう一つのハムに向けられた。

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