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第百三話 カオルから逃走している理由 その4

 内ポケットから右手を出した。


 何も起きない。


 爆発したりすると予想していたので拍子抜けした。


 私の考え過ぎだったのだろうか?


 何も「仕掛け」はなかったのだとしたら私はピエロを演じていたことになる。


 私は苦笑しながら手をひろげようとした。


 新たな違和感を手の内に感じた!


 何だ!?このベトベトした感触は!?


 さっきまで、こんな感触は無かった!


 いつの間に私の右手の中に!?


 右手を激しく振って異物を振り落とそうとした。


 ベトベトと手に貼り付いて落ちない!


 いったい何なんだ!?これは!?


 私は手の中を覗きこんだ。


 目に見える物を何と言葉で表現したらいいのか分からない。


 色は白い。


 上質の小麦粉で焼いた白パンよりも白い。


 見たことのない白色を不気味に感じる。


 左手で、それを右手に貼り付いている異物を取り除こうとした。


 な、何だ!?


 右手に冷気を感じる。


 私の右手の手のひらの上だけ明らかに気温が下がっているのだ!


 こんなことが自然に起きるはずがない!


 誰かが「冷却魔法」を使っているのだ!


 私は周囲を見た。


 誰も見当たらない。


 かなりの遠距離から魔法を使っている。


 しかも、この冷却魔法はかなりの高等技術だ!


 冷却魔法は普通は目標をカチカチに凍らせることを目的に使う。


 攻撃魔法として使われることが多いので威力のコントロールは普通はおおざっぱだ。


 私の右手の中の異物が凍っていく。


 普通ならば私の右手も凍ってしまうはずだが、凍ったのは異物だけだ。


 微妙な威力のコントロールができるのは高等技術だ!


 異物は凍ったがガチガチではない。


 堅いパン程度だ。


 ああ、この感触だ!


 さっきまで感じていたゴムのような感触はこれだったんだ!


 しかし、本当にこれは何だろう?


 手のひらに熱気を感じた!


 今度は「加熱魔法」を使われている!


 やはり高等技術だ!


 異物だけが温まっていく!


「これは、いったい何なんだ!?」


 思わず疑問を口に出していた。


「食べ物です」


 間近から声がした。


 聞き覚えのある声だ。


 カオル・タイラの声だ。


 声の方に振り向くのが怖い。


「よかったら食べてください」


 この何だか分からない物を食べろと言うのか!?


「ああ、気をつけてください。それはのどに詰まりやすいので、私の国では毎年死亡事故が起きています」


 そんな危険な物を私に食べろと言うのか!?


 だが、拒否できるような雰囲気ではない!


 私は異物を口に入れた。


「どうです?モチの味は?」


 モチとは、カオル・タイラの故郷にある食べ物で、米から作るとは知識として知っている。


 実物を口にしたのは初めてだ。

ご感想・評価をお待ちしております。


2021年最後の投稿になります。


来年もよろしくお願いいたします。

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