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第百一話 カオルから逃走している理由 その2

 私は考えをまとめると行動に移した。


 森の中で馬を止めた。


 馬に乗ったままそのままでいた。


 三十分は経ったが誰も来ない。


 今度は、私は馬から降りた。

 す


 馬を木に繋ぐと、その木を背にして私は立った。


 また三十分は経ったが誰も来ない。


 今度は地面に座り込んだ。


 三十分は経ったが誰も来ない。


 地面に落ちている枯れ葉と枯れ枝を集めてマッチで火をつけた。


 私を探している者がいるとしたら、この火は良い目印になるはずだ。


 一時間ほど経ったが誰も来ない。


 私を誰も追跡していないのか?


 いや、それはありえない。


 いま、この瞬間も何からの手段で私を監視しているのだろう。


 森の中で立ち止まって、さらには座り込んでしまったので、向こうは戸惑っているのかもしれない。


 身につけてあった水筒と干し肉を口にした。


 どんな状況であっても水分と栄養の補給は重要だ。


 水筒に入っているのは、ただの水だ。


 懐には、もう一つ水筒がある。


 その水筒に入っているのは、ただの水ではない。


 アルコールが含まれている水……つまりは酒だ。


 もちろん、酔っぱらうために持っているわけではない。


 寒い夜などに野宿する時に身体を温めるためである。


 今晩はそれほど寒くないから飲む必要はないだろう。


 いや、飲む……じゃなくて、飲んだふりをすべきだろうか?


 水筒をもう一つだして飲んだら相手は酒だと思うだろう。


 酔ったふりをして相手を油断させて……


 ……駄目だ!駄目だ!


 相手がそんな手に引っ掛かるわけがないだろう!


 相手が何もしてこないというのは、かえってストレスがたまる。


 よく「酒でも飲まなきゃ!やってられない!」というが、そんな気分だ。


 ……あれ?


 いつの間にか懐に入れておいた酒の入った水筒を手に持っている。


 どうやら無意識に私は酒を求めているらしい。


 まあ、一口ぐらい飲んだところで私は酔いはしない。


 一口だけ水筒の酒を口に含んだ。


 ……ん?


 確か水筒に入れておいたのは安い酒だったはずなのに、これは高級酒じゃない!


 何か特別なことがあった日のために自分用の御褒美のために買ってあった酒だ。


 間違えて入れてしまったようだ。


 うわっ!もったいない!


 だけど、口をつけてしまったものは仕方がない。


 今日が「特別なことがあった日」ということにして、「自分用の御褒美」にしてしまおう。


 あと二口……いや、三口だけ飲もう。


 私は酒を口に含んで、ゆっくりと舌で味わってから喉を潤した。


 ふーっ!美味しい!


 最近は酒を飲む暇もなかったから久しぶりの酒は格別だわ。


 これでオツマミも高級品だったら最高なんだけど!


 日持ちするのだけが取り柄の干し肉しかないのよね。


 懐から干し肉を取り出そうとして違和感がした。

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