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《 写真をもって 》

―ある男がホームに入る日に―


克哉は三枚の写真を鞄に入れた。


一昨年の春、義理の弟リュウと小樽を散策した時の写真だ。


いま、記憶にある一番楽しい思い出は、リュウとの小樽の散策だけだった。


だんだんと薄れていく、自分の記憶に、これだけは留めて起きたかった。



母の一周忌に故郷の琴似を訪れ、その帰りに寄った小樽のリュウ夫妻の家に二泊。


リュウが撮った三枚の写真。


―良い写真ですね―


誰もがそう言った。


最近克哉は、日記がわりにしている黒い皮表紙のノートに、毎日書き記していることがある。まだ生きている兄弟たちの名前を書き、そして…死んでしまった兄弟たちの名前に一本線を引いて消すこと―。


手の届かない所へ逝ってしまった兄弟たちなのに、日々こうしてノートに書かないと自分は忘れてしまうのだ。


明日は自分は『ホーム』へ行く。


家族と離ればなれになるというのに、妻の淑子も長女の真希も、最近は何も語りかけてくれなくなった。


解らないことがあって、彼女らに聞いても、「何度も聞かないで!」


こう言われてしまう。


今では、自分から質問することは諦めてしまった。


オレ、かなりキテるな…


トイレの場所も、この部屋にずっといていいのかも、わからない…。

小樽に行ったとき、オレはリュウたちにこう約束したんだっけ。


ー養老保険が満期になったら、心の病気で四十年間一度も里帰りが出来ない淑子を連れて小樽に来るんだー

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