#8
「品場さん、お見舞いに来ました!」
「あ、ありがと……」
後日、家で療養している間に何度も影山は家を訪れてきた。病院へ連れて行かれた日、帰りも家まで送ってもらった為住所がバレてしまった。仕方ないとは言え、影山の世話焼きな面には本当に驚かされる。
「あのさ、影山君。俺が勝手に怪我したんだから、そんな気を遣わなくていいんだぞ」
影山はキッチンで何やら作っている。
「でも品場さん、あまり食べてないでしょう。冷蔵庫何も入ってないし、棚の中はカップラーメンばっかり」
彼はとても器用にオムライスとスープを作ってくれた。
「あ……。ケチャップでハート描きましょうか」
「やめろ」
「冗談ですよ。早く代わりに描いてくれる奥さんができると良いですね」
彼の台詞は無視してオムライスを頬張る。それは文句なく美味しかった。
「美味しいよ」
「良かった! ところで、品場さんは彼女いないんですか?」
「何でそういう話になるんだよ」
「当ててみせます。女性に興味がない」
「違う」
「EDである」
「違う」
「冗談です。女性も、男性も、興味がない」
手を止める。数秒見つめ合った。影山は今度こそ確信に満ちた瞳をしている。ため息を吐いて行儀悪く頬杖をつく。
「……興味がないとは違うな。普通に誰かを好きになるよ。でも恋人になった途端何したらいいのか分からなくなるんだ。友人として見てしまう」
「身体を繋げても?」
何であえて言わなかったことを口に出すんだろう。こいつはデリカシーがない。
「ていうか君……お前はどうなんだよ」
「俺も品場さんと一緒で、誰にもときめいたことはないかな。でも不思議と、そういうの見抜くのは得意です」
影山は困ったように笑った。
「それより足は大丈夫ですか?」
「うん、おかげさまで……来週には必ず復帰できるよ。だからそれまで仕事宜しくな」
「はい!」
影山は代表的なポジティブ人間だ。これならネガティブな人間から受ける影響も少なそうだし、この仕事には向いているだろう。無論、そういった適正検査で合格したからこそこの職に就けたのだろうが。
とりあえず早く仕事に戻りたい。ちょっと会わないだけで、ネガティブな人々の心境は変化する。日を置くほど不安は募る。
ようやく週が明け、足も問題なく動くようになった。さぁ、今日から頑張ろう! と思ったのも束の間、朝から影山の暴走に気が遠のいた。




