#6
「軽い捻挫ですって。良かったですね、数日静養すればすぐに仕事に復帰していいそうですよ」
事故(?)現場から最も近い夜間外来へ、品場は青年とタクシーで向かった。赤信号で進んだのは完全に自身の不注意。ひとりで平気だと言ったものの、青年は付き添うと言って譲らなかった。
頑固に違いないが、若いのに正義感が強くて立派なものだ。今時少し変わってる、という印象を受けた。
貼付薬を貰うまで待合室で時間を潰す。青年は自販機で缶コーヒーを二つ買ってきてくれた。
「どうぞ」
「あ、ありがとう。それとさっきは突然怒鳴ったりして悪いね。色々疲れてて……」
「それは良いんですけど。俺が心配なのは、本当に自殺志願者じゃないのかなってことで」
プルタブに引っ掛けた指を止めた。
「断、じて、違う」
「本当に?」
青年は大きな瞳で見つめてくる。童顔なのにこういう時の威圧はなにか身構えるものがあった。しかし口でどう説明しても納得しそうになかったので、胸ポケットから名刺を取り出した。
「特定精神病の対策室。で働いてる人間だ。ネガティブな人を全面的にサポートするのが俺の仕事。さっきは長時間勤務で疲れてボーッとしてただけ」
「おぉ。へぇ~、……そう。……そうでしたか」
青年は食い入るように名刺を見つめ、そして返してきた。
「でも長時間勤務は良くありませんね。心身に負荷をかけることはネガティブ傾向に陥る記念すべき第一歩ですよ。現代人がこんなにもネガティブで溢れるようになったのは労働環境に問題があったからなんでしょう? その証拠に未成年の患者は少ない。特定精神病なんてものは仕事を辞めればすぐに解決する。言わば働きたくない病の悪化版だ。IT技術も進んで、人がやるべきことを放棄した末路……起きるべくして起きた問題。だって教わりました」




