#11
赤の他人と見限ることができず、品場は影山を六年もの間見守った。
最初は一、二ヶ月。それから半年を境に彼に会いに行き、あるとき蹲る彼の肩を抱いた。暗黙の了解のように、いつしか直接的に慰めるようになった。けどそれ以外は何もできなかった代償が今になって返ってきたのかもしれない。
「ごめんなさい……俺のこと、見捨てないで……俺やっぱり品場さんがいないと生きてけない……っ」
素晴らしい矛盾で成り立っている。彼も、この世界も。
きっともう手遅れだ。それでも彼を諦めることができない。深いため息をついて、彼の肩を抱き寄せた。
「ふ……う、うぅ……っ」
影山は頭をがくがくと揺らし、泣きながら笑う。
「あは……あああ……」
すぐ脇に置いてある電話機を見た。時間は二十一時。随分長い間交わっていたようだ。そろそろ……。
「目を覚ませ、影山」
汗を拭い、スモールライトを明滅させた。影山は眩しそうに顔を逸らし、それから身じろいだ。
「はぁ……あっ」
その間に品場は冷蔵庫から水を取りにいった。彼の顎を掴み、口移しで飲ませてやる。
「ん……っ」
ごくん、と飲み込んだことを確認し、少し痩けた頬を撫でる。彼もまたそれに応えるように、頬ずりして甘えてきた。
自分が彼の薬になれたらいいのに。彼が、自分の薬になってくれたように……。
何度も口付けを交わし、粘膜を貪った。ここに来てからずっと欲望を発散させている。それもまた一種の治療なのだが、影山はますます苦しげに顔を歪めた。
「俺の中に、善人と悪人がいるんです」
一時間近く経ってようやく聞けた言葉は、理解するのに数秒かかった。




