#6
雲井は頭部外傷で入院中。顔の怪我もすごいことは事件当日に見ているが、それより問題なのは頭だ。いつ急変が起きてもおかしくない為、楽観視はできない。
そうだ。……“そうなればいい”。
自分が管理する施設ではなく、雲井が入院する国立病院へ向かった。事件の重要参考人ではあるが、病室には警察関係者の姿も見当たらない。
個室のベッドで、痛々しい姿の雲井が眠っている。
スーツのジャケットを脱いだ。窓を開けて身を乗り出す。
日が傾いてきている。上は紫、下は橙に染まった空が美しくて……もう少し近くで見たいと思った。
けど、空に近付くなんてできやしない。少なくとも、生きてるうちは。
行木と雲井は自分が壊した。それを警察に伝えたのなら、二人とも許してもらえるだろうか。
そんなはずはない。元の生活に戻るだけだ。
施設の暮らしは地獄でしかない。この先ずっと健常者から距離を置かれて、病人として生きていく。刑務所なら一般人と犯罪者。学校なら優等生と劣等生のように、決まった空間に閉じ込められる時、人は必ず分類分けをされる。
その方が便利だからだ。だが何年経っても明るい人間は増えなかった。むしろ細分化すればするほど、病に罹る人間が増えた。
ポケットからピルケースを取り出し、中の錠剤を一気に口に含んだ。それを噛み砕きながら、雲井に近付く。
ピルケースが入っていた方とは反対のポケットから、折り畳みナイフを取り出した。指をかけて刃を出そうとした、寸前。
「やめろ。……影山」
音もなく開いた扉の前で、ひとりの青年がこちらを見つめていた。




