#14
所長は感情が欠落してると言う人がいる。あまりにも反応が薄く、表情が乏しい。憤ることがなければ喜ぶこともない。
それは間違いじゃない……だが彼は彼で、自分を卑下し過ぎなのだと思う。
「行木さんは本当に優しいね。無理して庇わなくてもいいんだよ」
「無理なんかじゃ……!」
快晴の日、所長に誘われて、畑でじゃがいも掘りをしていた。住宅街からも離れた施設の周りは畑が一面に広がっている。施設ができてからはこの一帯のオーナーが畑を貸してくれたそうだ。裏庭も雑草が繁茂して酷い状態だったらしいけど、協力して綺麗にしてくれたらしい。
「実際俺、人を避けてるところがあるから。必要以上に干渉しない。多分昔と違って、干渉されることが嫌いになったからだろうけど」
所長は掘り起こしたじゃがいもを、台車の上のカゴに入れた。
「昔は違ったんですか」
「疑ってんね~。そりゃ俺だって輝いてた青春時代ぐらいあるよ? あれが人生の絶頂期だった」
「所長が輝いてた……って、ちょっと想像できないし、何かすごく気になります。恋人とかいたんですか?」
「それはノーコメント」
土まみれの軍手を叩いて、また移動する。
「そもそもあの頃は馬鹿を演じることに酔ってた。でもいつだったか、それが馬鹿なことだって気付いちゃったんだよね。皆に笑ってほしかっただけなんだけど、……笑われるのと笑わせるのは違うし」
ぶちぶちと、根を引きちぎる音が聞こえる。
「無口で無愛想な独身男には、性別関係なしに誰も近付いてこないよ」
「だからそんなことありませんて!」
体勢がきつかったので、地面に手をついて顔を上げる。
「本当にそうなら、俺はどうなるんですか!」
「行木さんはー……変わってるってことで」
「適当に流さないでくださいよ!」
必死に訴えると、彼はごめんごめんと言って笑った。こうしている分には冗談も通じるし、無愛想というわけでもない。ただ最初に踏み入るタイミングが掴みにくいだけ。
所長は徐に立ち上がり、腰を叩いて振り返った。
「あー、運動した。じゃがいもって他の野菜と比べて放置してても勝手に育つから好きなんだけどさ。……人もそうなら良いのに」
軍手を外し、額の汗を拭う。こちらに手を伸ばし、彼は微笑んだ。
「お疲れさま、手伝ってくれてありがとね。帰ったら皆でじゃがバタパーティーしよう」




