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カテゴリー  作者: 七賀ごふん


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33/38

#8



極限まで蓄積した不満や怒りが爆発した。ただの八つ当たりだと分かってるが、もうどうでもいい。

床に膝を着いたまま、ベッドに顔だけうずめた。

夕食、良かったら外に置いておくから食べてね、という声が最後に聞こえた。小さくなる足音。


これじゃ本当のクズじゃないか。

ここへ来て初めて、行木は声を殺して泣いた。



深夜、消灯された施設の中を忍び足で歩く。点灯しているのは非常口や火災報知器のライトだけ。緑や赤が点在している。廊下は青い。以前は二階のバルコニーに出ることもできたけど、今は施錠されている。窓は三分の二だけ開けることができる。内部の者が窓から出ないようにしていて、それ以上は開かない。

行木は待ち合いスペースのソファに腰掛けた。食事は確かに部屋の外に置かれていたが、手はつけずに食堂へ戻した。

病院との違いは何なのか考えてみる。だが、そういえば入院したことがないので、詳しい違いは分からなかった。医療ニーズがある以外では、精神を病んでる者しか入れない……そして、一応は社会に出て、自立することを目標としている。入所金や生活費は全て国から補助が出るし、そういう意味では優遇されている。


だが本当の意味では諦められている。社会復帰してもこの病歴がずっと尾を引いて、まともな職には戻れないだろう。

人生なんて終わったも同然だ。必死に治療して、生きる意味がどこにある? 刑務所にいたくて、出所しても再犯して捕まる奴らの気持ちが少しわかった。結局中も外も地獄なんだ。居場所がないなら、まだ自分の部屋を与えてくれる場所に留まりたい。……と思うのは、至極普通のことだ。


いけないな。また卑屈になってる。

きっと今の自分をメンタルチェックしたら、過去最悪の数値を叩き出してる。

そしたらもっとここに居られる、……けど。

思考が黒く塗りつぶされる前に立ち上がり、部屋へ戻ろうとした。その時通りかかった共用トイレで、妙な音がした為立ち止まる。

水が流れる音。こんな時間に誰が……宿直の職員だろうか。

中からそっと窺うと、あの問題の多い雲井が奥に蹲っていた。


一瞬体調でも悪いのかと焦ったが、違った。気味の悪い水音と、気持ちの悪い、荒い呼吸。ズボンが床に落ちて肌が見えている。彼は自慰をしていた。


「……っ!!」


咄嗟にその場から離れら口元を手で覆う。

有り得ない、正気じゃない。

これ以上なく気持ち悪いものを見てしまった。




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