#24
品場の指に絡ませるように、影山は掌を重ねた。
「さっき里川さんからこういうことを……いや、何か口にすると生々しいですね。ぎりぎりで逃げたんですけど、品場さんと触れ合ってたらまた思い出しちゃいました」
冗談めかした口調だったが、内容は笑えない。品場は深いため息をついて肩を落とした。
「本当に悪い。絶対担当外してもらうから。あれはただの変質者だって申告する」
「あはは、大丈夫ですよ。でも確かに、あの人充分ポジティブかも」
「そうだな。ネガティブなのは、逃げることしかできないって部分だけ。俺と同じで」
息が触れるほとの至近距離で、昏い心を吐き出した。それを吸った彼は……泣きたくなるほど明るく笑った。
「それ、俺もです」
否定も肯定も意味がないと思った。
きっとどちらの選択も正解じゃない。言葉は捨て去り、彼の唇を塞いだ。
「ん……っ」
突き飛ばされても殴られても文句は言えない。覚悟した上での行動だったが、影山は受け入れる体勢をとっていた。唇をただ押し付けただけなのに、全身がコントロールを失っていく。
少し離れて表情を窺うと、影山は何も言わず頷いた。
もう、その先のことは覚悟しているようだった。自分よりもずっと大きな何かを……彼は以前から持っていたんだ。
他のことなんて何も考えず、不安は全部捨ててほしい。せめて今だけは。
「影山……。大丈夫だから」
「……ん」
先ほどより強く抱き締める。互いの熱を確かめ合うように。
「品場さん、俺っ……貴方が好きです」
震える声を絞り出す影山に頷く。わずかに下が疼いたが、慌てて天井を見上げて雑念を払った。
薄青の蛍光灯。スマホの待ち受けの展望台の絵がまた脳裏に掠めた。




