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カテゴリー  作者: 七賀ごふん


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23/38

#23



「本当に大丈夫ですよ……」

「バレる嘘はよせ。里川さんに何されたんだ」

「あはは……。もう……品場さんだってよく知ってるでしょ? あの人はポジティブな変態だって」


今度は状況を意に介さず、感情のままに吐き捨てた。


彼は肩を震わせて笑っている。いや……むしろ泣いてるのかと思ったけど、気が昂っているだけのようだ。

泣いていたとしても、今の自分に何ができただろう。慰めの言葉も励ましの言葉も白々しく、空々しいだけだ。彼が思っている通り、危険を分かっていながら里川の担当を丸投げしたのだから。


「……すまない」


だから当然、謝罪の言葉も虚しい速度で墜落する。彼に届く前に消滅した気がした。今さら謝ったところでどうにもならないと思うのに、それでも溢れて止まらない。

すまないと何度も繰り返した。何回呟いたのかも分からなくなった頃、「もういいです」と制止がかかった。


「謝らないでください。品場さんが謝ることなんて何もないんですよ。……でもこんな姿見られたくなかった。さっき来てくれた時、実はすごく恨めしく思いました」

影山は乱れた前髪を払う。

「でもやっぱり、来てくれて嬉しかった気持ちの方が……ちょっとだけ、勝ってた」


俯いていた顔が上がる。こんな状況でも、影山は微笑んでいた。

「頑張るな、って言われてたのに。褒められたかったからかな。でも俺もそういうの柄じゃないから、失敗しちゃいました」

「……馬鹿」

そこで素直に褒めてやれば良かったのかもしれない。そうすればまだ、“上司”としては及第点だった。

けど頭を撫でていた手は自然と下へ伸び、頬や首筋をなぞって温度を確かめていた。願望がそのまま表れ、利口に実行している。


俺は影山をどうしたいんだろう。

冷静な自分が離れた場所で俯瞰している。どうしたい……とかではなくて、ただ単に触れたいんだ。

彼が泣かないかどうか、傍で確かめたい。

不意に顔を上げた影山と目が合い、思わず息を飲んだ。

「品場さんって、やっぱりそっちの人だったんですか」

この状況で違うと言っても虚しい結果に終わる。しかしそうだと言い切るには証拠が乏しい。

「正直未だによく分かんないな。お前に何しようとしてんのかもよく分からない」

「品場さんが分からないんじゃ俺にも分からないや」

影山は笑った。不思議な人、と可笑しそうに。

「貴方のこと、まだ全然分かりません。でも何でなのか、全然嫌じゃない。というか、怖くない」




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