#16
スマホを仕舞い、品場も反対方向に歩き出した。
安心していいはずなのに、鼓動はさっきよりうるさい音を奏でている。内側で眠りについていた何かが暴れている。
「はぁ……っ」
どれほど冷たい宵風が吹いても、身体の熱は中々冷めてくれなかった。
明るい人も暗い人も、結局のところ差異はない。
明るくて不真面目な人間より、暗くても真面目に生きてる人間の方が良い。けどコミュニケーション能力か劣っているとそれだけでグループから爪弾きにされる。そういう人達を腐るほど見てきた。
あぁ、また……と思うものの、何もできなかった。そんな自分が嫌で嫌で、変わりたくてこの仕事に就いた。けど結局何も変わってない。自分が一番可愛くて、失敗することを何よりも恐れている。
自宅に着いてから、気晴らしに好きな画家のアート集を眺めていた。その最中にも何故か影山の顔がちらついてしまい、本当の意味ではリフレッシュできなかった。
何だ何だ。何なんだ、これは。
思春期じゃあるまいし、一体何をそんな気にしているのか。少しでも気持ちを落ち着かせるため、冷蔵庫から缶ビールを取り出して一気に飲み干した。
いつもポジティブだと傷つくことも少ない。だから自分のような人種はわずかな感情のブレもすぐに感じ取る。今の自分はネガティブ寄りだ。影山も同じ……負の感情は周りにも影響を与えるから、今の彼と自分はあまり一緒にいるべきではない。
でも不思議だ。彼となら暗い底へ落ちていっても平気な気がする。
大体、ちょっとアンニュイになるぐらい昔は誰でもあったはずだ。それなのにいつしか気持ちが沈むことは悪いという風潮に変わり、人々は敏感になった。ストレスが寿命を縮める。健康寿命なんてものは二の次で、誰もがストレスのない生き方をしたいと強く願った。
ネガティブな人達を作り出したのは、他でもない人の目だ。
自分も暗い人間と思われることがあることが恥ずかしいと感じる時があった。普通ではないと認識されることが嫌だった。けど、その気持ちがさらに自分を苦しめる。




