#14
「実直で前向きな人間がこの仕事に向いてるって言うけど、個人的にはそうは思わない。結局はメンタルの強さだ。ポジティブだって豆腐みたいに弱い奴はいるし、必ずしも適正ってわけじゃない。医療職でも何でも、タフな奴が生き残る。打たれ弱くて、優しいだけの奴は心が折れる」
「だから、俺も辞めた方がいい……ってことですか?」
「はは、馬鹿言え。俺の方が辞めるべき人材だよ。最近じゃ責任逃れする為の言い訳とか、とにかく狡いことばっか考えてる。自分さえヘマしなければいいと思ってるんだ。暗くて後ろ向きな人よりよっぽど有害さ」
影山は開きかけた口を閉じ、黙ってこちらを見つめてきた。
「相談者の心は弱過ぎて、寄り添うことが怖いと思うようになった。自分の些細な一言がきっかけで取り返しのつかない事態になるから……何が正しいのかも分からない」
「意外です。品場さんでも分からないことってあるんですね」
「いっぱいあるよ。だからお前の方が色々気付くことが多いはずだ。俺じゃ頼りないかもしれないけど、……できれば頼ってほしい」
「頼りないなんてことないです」
今までと違い、彼は強い口調で否定した。その顔はどこか赤い。
「品場さんて強いし、いかにも仕事できる人だし、その……か、かっこいいです」
語尾はとても小さく、聞きとるのがやっとだった。
「だからすごいなって憧れたんですけど、俺のせいで仕事の邪魔したら悪いし……迷惑かけたくないから、ちょっと避けてたところはあります。すみません……」
熱でもあるんじゃないか、と思うほど彼の頬は紅潮していた。
なんていうか……驚いた、というか。拍子抜けした。
彼は自分が思っていたよりもずっと純粋で、繊細な青年だったようだ。
そして嬉しい気持ちを隠すように、彼の頬をつねった。
「迷惑なんかじゃない。頼られて嫌なわけないだろ。俺はポジティブな人間だぞ」
「いたた! 俺もそうです……」
影山は困った顔で頬をさする。
そわそわするけど嫌ではない、不思議な気持ちだった。それに久しぶりに声に出して笑った。胸の中が温かくて、顔は熱い。影山の熱がうつったのかもしれない。
ひとりで悩んでいた彼は、昔の自分と一緒だった。助けてやりたいという気持ちと、もっと彼を知りたい、という気持ちが堰を切ったように溢れる。
軽く目を擦った彼が印象的だった。もしかしたら……自惚れかもしれないけど、彼の弱さを初めて見たのは自分なんじゃないか。そんな風に思ったら意味もなく触れてみたくなって、本音を引き摺りだしたくなった。




