#11
「どうだ、次からひとりで大丈夫そうか?」
「……はい」
帰りの車内、沈黙を破る為に問い掛けた。かぶりを振りつつ、盗み見た影山の横顔はそれは暗かった。
全然大丈夫じゃないみたいだ。
そう、実際、里川の様子はおかしかった。自分と相対している時は決して見せなかった、意味ありげな視線を影山に送っていた。
まさかまさかで、あまり考えたくないけど。
「本当に無理だと思ったら逃げてもいい。でも投げるのは駄目だ。誰かに相談して、頼って、任せてから逃げるんだよ。その為に俺がいるから」
「……ありがとうございます」
自分達は相談者のケアを優先に、社会復帰できるよう各機関の専門家と協力し合い、最も妥当な治療と目標へ向けてプランを展開する。ネガティブな人間はポジティブな人間といると良い影響も出やすい。
じゃあ、ポジティブな人間は?
この業界には負の感情ばかり背負って、心を壊す者もいる。過去、品場の同僚でも病んで退職した者が数名いた。
元から明るい人間の心は、誰が診てくれるのだろう。
影山はオフィスへ戻るまで一言も発さなかった。




