第一話
俺は今どこにいるんだろう?
天上の女神様が何故か俺の目の前にいる。
そんな謎の展開に頭の整理が処理が追いついていない。
その真っ白で何もない空間で女神は俺に話しかける。
「水上透くんですね?君異世界に行く前にわたくしからギフテッドもらう予定ですので。」
ギフテッドとはどうやら神々の恩恵であり、何を授かるかはその人次第。
「それも大事だったけど。俺何で死んだんだっけ?」
何故かそんな大事なことが思い出せない。
そう事故直前の記憶がないのだ。
しかし、女神様は待ってはくれない。
「あばば...どうしましょ。」
「どうかしたんですか?」
慌てる女神を見て、こちらも不安になる。
そんなこちらの反応に気づいたのか申し訳なさそうに女神は言う。
「あなたのスキルこちらの不手際で詳細がわからないの...ほんとごめんなさい。」
ガーン。
俺はそれについての落胆を隠せなかった。
「えっと。ほんとは超最強のギフテッドをもらえるはずだったとか?」
「ギク。」
女神は動揺する。
それを見て透は
「まあ。いいですよ。俺は異世界で流行りのスローライフを目指して...」
「そうもいかないの。」
「へ?」
透は今度こそ間抜けな声を出す。
「あなたには魔王を倒すために魔法学園で修行をしてもらわないといけないのです。」
まじか。生き方まで自由がないとは予想を超えていた。
さすがに抗議する。
「ちょっと待ってください。不遇職で魔王に挑ませるなんて正気ですか?」
透は精一杯正論を主張するのだが、女神は思わぬ申し出をする。
「補填と言っては何ですが、わたくしもあなたと行動を共にし、魔王と戦います。」
女神は真剣な眼差しでこちらを見つめながら。
「ギフテッドの件はわたくしの不手際です。ですから、魔王討伐に同行いたします。」
透は内心でガッツポーズを取った。女神が同行とかチートじゃん。
「申し遅れました透様。わたくしは三大女神のアニスト。どうぞ気軽にアニとよんでください。」
「それは有難いです。ですが、僕のギフテッドっていうのはどんなもの何ですかね?」
透は本題に切り込んだ。
「あなたのギフテッドはとある条件で開花する代物です。ですが...」
「ですが...それがいつになるのかどれほどのモノなのか詳細について書かれた大事な資料を落としてしまって...」
そう女神が来てくれるのはいいが、俺は???という能力で異世界を生き抜かなければならない。
それにしても大丈夫か?この女神。と内心不安を感じていた。
だが。
「では、心の準備はいいですか?」
「はい。」
女神は異世界への門を開く。
その亜空間はまさに混沌と言えた。
「おっかねぇ。」
「これはこの世界が魔王復活による魔素で脅かされている証拠です。」
「なるほど。」
異空間を通りながら異世界の事情を簡単に説明してもらった。
現状、異世界は魔王復活を成した世界的犯罪者クロムウェルの捜索で必死なのだとか。
そして、着々と力をつけ始める魔王軍に警戒をしているようだ。
俺たちは魔法大国エルドア王国のイリーナ魔法学園に入学する手はずになっている。
少し、本当に少し不遇な俺も異世界転生にワクワクしていた。
俺は今15歳なのでちょうど高校一年生をやっていたのだ。
どうやら一度死んだはずの俺は日本にいた時の姿かたちで異世界デビューすることになる。
そして、異世界の文字は何故か理解でき、言葉も問題なく交わせた。
ついに。イリーナ魔法学園に入学する日が来る。
俺とアニは寮にそれぞれ入ることになった。
入学式を迎える今日さすがに緊張している。
アニは何事もなかったかのように式を迎え、俺は少し彼女を睨みながらも席についた。
開会の合図に在学生代表の三年生の挨拶だ。
「こんにちは、新入生の皆さん!!生徒会長を務めるグリス・ロワイスです。私は皆さんの入学を心から歓迎します。そして、明日には学園内伝統の入学テストを兼ねた模擬戦がトーナメント形式で行われます。クラス分けに繋がるので皆さんの全力が見れるのを楽しみにしています!それでは手短な挨拶になりましたがごきげんよう。」
どうやらこの学園は三年制でAクラスからFクラスまであり、Aクラスから順に優秀な生徒が集められていく階段式システムらしい。
なかでもFクラスの差別のされ方は酷いみたいだ。
Aクラスは将来を約束された魔導士たちの集まりで、差別意識も同時に激しいようだ。
そう絶対実力主義。
これが不遇な俺に課せられた現実。
早くも逃げ出したくなる。
ほんの救いが三大女神が従者にいることだった。
どうやらこの世界の三大女神は数百いる女神の中でも魔法に長けた者たちの頂点であるいわば最強の女神らしい。
俺は自身の仲間がチートという少し歯がゆく、情けない状態だった。
アニは正体を隠し、アニ・ラートと名乗っている。
そして、俺は何の変哲もない、「ミナカミトオル」だ。
変わった名前なのね。とは周囲に言われている。
だが、そればっかりは気にしないことにした。
そして、次の日になった。
俺は初戦の相手を魔法も使えない状態で迎えることになってしまう。
ギフテッドも???だ。
青髪の相手は俺を双剣で瞬殺した。
アニはその実力でAクラス入りを果たした。
そして、俺はというとFクラスだ。
俺はその日からAクラスの連中のパシリの一人になった。
もちろんアニは仲間であることを伏せるように俺から言われているので助けにいけない。
なかでも質が悪いのは赤髪の青年だった。
黒いピアスを両耳に開けたそいつは俺を本当にこき使った。
授業のほうも最悪だ。
俺はギフテッドを持たない異端者扱いで、周りから気味悪がられていた。
それに魔法の才能も並以下。
誰も俺を相手にしなくなる。
だが、少し似たような境遇のやつがいるのがFクラスだ。
俺は一応友達といえる人ができた。
カイ・アレストフ。
名家アレストフ家の落ちこぼれと言われ、家族に相手にされず、家名さえ奪われかけた人物だ。
そんな彼のギフテッドは「ダブル」
自分の魔法の威力が倍になるというシンプルなものだった。
幼い頃は神童と謳われても、魔力が伸び悩み今に至る。
ギフテッド自体はとても優秀な部類だという。
それだけに彼の不遇さを俺も理解し始めた。
パシリ1が俺、パシリ2がカイ。赤髪につけられた俺たちのあだ名である。
そんなこんなで俺たちは補習をともに受け続け無事落ちこぼれた。
そして、二人は留年が決まる。
黒髪のトオルと金髪のカイは新入生との2対2のバトルロワイアルで結果を残さなければ退学ということになった。
「これは、まずいですわ。」
女神は焦りをトオルに伝える。
「このままじゃ。この世界が危機に...」
その瞬間トオルが金色の光に包まれる。
「トオルさん。その光はまさか!!」
アニは驚愕している。
トオルは目が死んでいた。
だが女神の一言で我に返る。
「今のはギフテッド継承の光ですよ!!」
本来は銀色の光に包まれるらしいが。
「へ?」
ボロボロだったトオルがまた間抜けな声を出した。
今度こそわずかな期待を胸に。