表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

告白放送

その放送を耳にしたのは1学期の最後の期末テストが終わった日の昼の放送であった。その日の予定は、残り2科目の試験であったため、昼食を食べたら後は帰宅してから一人でゆっくり休む予定だった。

 蝉の鳴く声がこだましている。最近はクマゼミが多くなったせいか、やたら大きな鳴き声が試験後の疲労を抱えた頭にはつらい。

 仁美は凍らせておいたペットボトルのジュースから飲める分だけいっきに飲み干すと一緒に入れておいた板チョコを口で割った。ペットボトルが保冷財代わりになったためか、良い音と感触が歯を通して伝わってくる。

 疲れた後はチョコに限る。糖分が取れるとか、カカオの成分が疲労回復に良いとかいう一般的な意見に限らず、彼女は他の女子生徒と変わらず、ただ単に甘いものがすきだったからだ。

 2、3度ぼりぼりと硬い音を響かせていたがやがて解けてチョコの甘みが口の中に広がった。

 仁美は教室の中を見回した。彼女の周りには寄ってくる生徒はいない。それは例の事件の影響であることはなにより彼女自身が分かっている。

 弁当の箱を開ける。弁当箱の中身は雑穀米のご飯に玉子焼きが入っている程度の簡素なもので女子高生の弁当箱の中身としては面白みに欠ける。

 しかし、友達もいない、ましてや彼氏などといったものに程遠い自分が期末テストの途中に弁当の内容に気をとめる必要などなくてもよいはずだ。

 仁美はただ黙々と弁当を口に運んだ。

 その放送が流れたのは、12時50分頃だとはっきり分かる。なぜならテストやなんらかの行事がある時以外、放送部が必ず昼の放送を流す。別に気に留めることはなにもない。行事やらなんやらの放送ならともかく、昼の放送ぐらいでは、放送室か、部員が自分で持っている限られたCDやらテープやらを流すのが関の山であるから。

 しかし、その日は違っていた。

 「あ、みなさん。この放送は聞こえていますか。」

 それは確かに聞き覚えのある声だった。彼女にとって忘れられない人。

 あの事件の後、ただ一人自分に支持した後輩。そう。名前は・・・

 「僕は日野誠といいます。2年A組の相川仁美さん。僕にとっては先輩に当たりますから本当は相川先輩と言うべきかもしれません。でも、ここで伝える気持ちを対等に受け取ってほしいからあえてそう呼ばせてもらいます。あのときからずっと好きでした。今日この場を使って伝えます。僕と付き合ってください。」

 

 全校で大きなざわめきが起こった。

 私は手に持っていた箸をそのまま落とした。

 これが、全校を巻き込む2人の恋愛の始まりだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ