初恋の思い出
ぼくが小さい頃、運命の人に出会った。
名前も顔もわからないけど理想の人だと幼ながらに思った。
浅瀬で幼馴染と兄と遊んでいたぼくは、少し驚かせようと誰も知らないような岩場に隠れて身を隠していた。いつの間にか日が暮れて、浅瀬のキラキラした海が急に不気味に見えた。
周りを見渡しても誰もいない。世界にたった1人になってしまったような気持ちになった。絶望した。
「大丈夫か?」
そう声をかけて手を差し伸べてくれたのは名前も知らない大きなお兄さんだった。
泣きじゃくるぼくを優しくあやしながら、話を聞いてくれた。
「名前は言えるか?」
「いちはら…みるです。」
「みる。お兄ちゃんと一緒にみんなを探そう。」
あんなに孤独で寂しくて、悲しかった気持ちが少しずつあったかくなった。
子供の足では遠く感じた人気のない岩場だったけど、お兄ちゃんが歩くとすぐにみんなと遊んでいたところまでたどり着いた。
「みる!!」
「みるち!!」
兄と幼馴染と再開したぼくはすぐに二人のところに駆け寄った。抱き合ってわんわん泣いた。
「もう!おかあさんに怒られるかと思ったよ!」
「みくちは素直じゃないなあ。」
「くーちゃん、うめちゃん、ありがとう。ごめんね。」
後ろを振り返り、ここまで届けてくれたお兄ちゃんを紹介しようとすると、彼の姿はなかった。
「さっきね、大きなお兄ちゃんがおんぶしてここまで連れてきてくれたんだよ。」
「え、不審者?」
「違うよ!!みぃ、あのお兄ちゃんのこと大好きになっちゃった!また会いたいなあ。」
「いつか、お礼が言えるといいね。」
もうずっと前の出来事だけど、今も鮮明に覚えてる。また巡り会えたらお礼を言って、それから…、お嫁さんにしてくださいって言えたらいいなぁ。