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4人の義賊(?)

広場から宮殿を挟んだ反対側は森になっており、そのすぐ横を川が通っている。秘密通路の出口はいくつかあるが、一番侵入しやすいのが近くにある公園の噴水に偽装した出口だ。


「これが大雑把な地下通路の地図よ。宮殿内にもいくつか出口があるけど今回は私の・・・元私の部屋につながってる出口を使うわ」


「宮殿内部の構造も教えてくれるかしら」


「私の部屋がここで、王の執務室がそこよ。屋根裏を通れば見つかりにくいけど、それでも防音性がないから物音を立てればすぐに見つかるわ。それに広間が途中にあってそこだけは繋がってないから廊下を移動する必要があるわね」


「宝物庫はどこにあるんだ?」


「執務室の更に先にある別の建物ね。酒は本館の地下に保管されてたはず。でも宝物庫の近くには武器庫もあるから見つかったら蜂の巣ね」


「アリシア、見つからなければいいんだよ。ほらもう行こーよ」


ベルニスはなにを言ってるかしら。見つからなければいいって、簡単に言うわね。宝物庫なんて宮殿内でも特に警備が厳重な場所なのに。奴らが警備を別の場所に重点を置いていることを祈るしかないわね。


窓から宿を抜け出し、宿の隣にある公園にささっと移動した。赤の広場みたいに党によって公園が()()()()()()されていないか不安だったが、見た限り特に手を加えていないようだった。


「なあアリシア、この噴水のどこに地下トンネルの入口があるって言うんだ?」


「ベルニス、水が溢れてる下に人が入れそうな空間があるでしょ。あそこの床を剥がすと入口が出てくるわ。トンネルから出ることしか想定されてないから、こじ開ける必要があるわね」


ベルニスに池の水を凍らせてもらい、噴水の真下についた。天井が低く頭をぶつけそうになる。


「エルマ、ここの床を持ち上げてくれる?」


「わ、わかりました」


エルマが隙間に大剣を突き刺すと、床の一部が浮き上がってきた。これが秘密通路の入口だ。


トンネル内は人一人がやっと通れるぐらいしか隙間がなく、明かりは一切ない。空気も最悪だ。ベルニスに明かりをともしてもらった。こういうときに魔法使いがいると便利だ。


迷路のようになっている地下通路を移動し続け、ようやく目的の出口が見えてきた。


「ここだわ、私の部屋につながる出口。先に安全か確認にしにいくわね」


剣を握り開けると、部屋には誰もいなかった。廊下を覗いてみたが、足音一つ聞こえてこなかった。


「誰もいなかったわ。上がって大丈夫よ」


部屋は10年前から何一つ変わっていなかった。家具の配置や壁の傷まですべてそのままだ。驚きを隠せない。


「ここがアリシアが住んでた部屋なんですね。結構庶民的でちょっと意外です」


「そう?他の貴族や王族もみんなこんな感じじゃないかしら。寝室を豪華絢爛にしても疲れるだけよ」


「そ、そうなんですね・・・」


さてとまずは情報収集が必要ね。せっかくこの国の中枢に潜り込めたのだから根こそぎ情報を回収しなくちゃ。そのためには変装が必要ね。


廊下を覗いていると、ちょうどいいところに警備員がやってきた。


「ベルニス、あの警備員を黙らせてちょうだい」


「わかったわ。ほーら眠りなさい」


ベルニスが杖を振ると、警備員は魂が抜けたように倒れた。たまたま自分と身長が近かったので装備を全部はずしたあと制服を脱がして自分に装備した。


「地図を渡すから三人は宝物庫にでも行ってきて。あと剣も預けるわ」


「アリシア、なにをするつもり?」


「私は情報を手に入れにいくわ」


私が一人でいくと言うとみんなに反対された。


「みんな、警備員が4人で行動してたら怪しいでしょ。一人のほうが疑われにくいから都合がいいのよ。それに私は誰よりもこの宮殿に詳しいのよ。問題はないわ」


「そ、それでもやめたほうがいいんじゃ・・・」


「これはパーティーリーダーの命令よ。ほら人が来る前にさっさといきなさい」


突き放すように3人と別れ、1人で共産党の中枢に迫った。


記憶を頼りに宮殿内を移動していった。道中何度か人とすれ違ったが、疑われることなく事務所の前にたどり着いた。このまま警備員の服を着ていても資料を直接触れることはできないので、別の人の服に着替えることにした。


「君、ちょっといいかな」


「えっと、なんのようですか?」


「とりあえずついてきてもらえるかな」


近くにいた党員らしき女を個室に誘導し、持っている銃で殴りつけ気絶させた。女の持っていた国旗と同じマークの書かれたバッジを外し、服も着替えた。


堂々と事務室に侵入した。そこでは新たな政策や外交にまつわること、新技術の導入など多岐にわたる資料が置かれていた。


へえ色々おもしろい情報が書かれてるわね。なになに、電気?初めて見る言葉ね。ここの明かりと街灯もこの技術が使われてたのね。ほかにもいろんなことに使えると・・・つまり蒸気に代わる技術か。とても便利なものね。隣にあるのは・・・電話?どこでも使えるわけじゃないけどテレパシーのように距離が離れてても会話ができるのね。へえ、ほんとすごいわね共産党は。私のいない間にここまで技術を進化できるなんて。共産主義者じゃなかったら喜んで協力したのに。


それから気になった技術関連の書類を片っ端から拝借していった。複数あるうちの一部だから一枚ぐらいなくなったってわかりやしないだろう。


あらかた資料を集めたあとみんなと合流しようと、執務室の前を通りかかったとき扉の向こうから怒鳴り声が聞こえてきた。


「いつになったらヴィンセンヌを統一できるんだ。もう8年経ってるんだぞ!」


へえ抵抗を続けている地域があるのね。領主が王族が消えたからって自分の支配を手放すわけないものね。それでも領民から地位から引きずり落とされないのはそうとう力を持ってるのか、それとも領民に好かれてるのか。


「コマール辺境伯には降伏勧告を促してはいるのですが、抵抗運動に市民まで協力しているようで・・・」


「言い訳はいい!我々に反発するやつは全員資本主義者として始末してしまえ」


「よ、よろしいんですか?市民まで殺してしまったら労働者の味方というイメージが崩れるかもしれませんよ」


「それを何とかするのが貴様らの仕事だろ!わかったらとっとと取り組まんか!」


「わ、わかりました。直ちに実行いたします。同志書記長」


抵抗者ってコマール辺境伯なの!?確かにあそこは山がちな地形だから守りやすい地形ではあるけど・・・あのおじさんは追放されたとき唯一反対してくれた恩があるしそろそろ返さないといけないわね。それに王政復古の味方になってくれるかもしれないわ。次の目的地が決まったわね。


テレパシーを使おうとしたところ障害物が多いからか誰にもつながらなかった。何度も試しているとかなり音質が悪いが、なんとかシャルロッテにつながった。


「シャルロッテ、今どこにいるの?」


「あ・・・シア、・・・・・まは・・・・・の通路・・・・・」


「ねえなんて言った?」


「かだよ・・・かの・・・インセラー」


か・・・インセラー・・・?地下のワインセラーか!


急いで食堂の近くにある階段に向かった。看板には地下は党員でも立ち入り禁止と書かれていて鎖で閉じられていたが、警備員は一切いなかった。鎖を乗り越え、地下に行くと警備員がボコボコにされ床に転がっていた。


「おい、そこのあんた・・・助けを呼んでくれないか?」


「いやよ。そこでおとなしく眠っていなさい」


「うっ、貴様もあいつらの仲間かよ」


残念だったな。哀れな警備員よ・・・


奥にすすワインセラーの扉を開けると物色している


「シャルロッテ、本当にワインを狙ってたのね。ここにあるワインどれもヴィンテージワインだから飲むのもったいない気がするけど」


「飲まなきゃ損じゃない。お酒は飲むためにあるのよ。これだからお金持ちは」


金のにおいにベルニスが飛びついてきた。まさかこのワインを売るつもりなのか?


「ねえアリシア、このワインって全部高いのか?」


「そうね、一本金貨3枚近くはするんじゃない。中にはもっと高いのもあるかもね」


「ほ、本当か!?なあエルマ、梯子を持ってきてくれない?」


「わ、わかりました。ベルニス・・・」


エルマが梯子を持ってくると、シャルロッテとベルニスは特に高そうなワインを片っ端から鞄の中に放り投げていった。割れないか心配だったが、魔法で保護しているのでその心配は不要らしい・・・


「そんなにとって大丈夫?これから宝物庫に行くんじゃなかった?」


宝物庫のことを思い出すと、ベルニスは慌ててワインを戻し始めた。


「けどどうやって宝物庫に行くんだ?地上は警備が厳重で歩くだけでバレそうだけど」


「あ、ここのさらに奥に隠し通路があったはずだけど地図に載せるの忘れてたわ。そこを通れば誰にも見つからずに行けるはずよ」


隠し通路について言及すると「もっと早く言え」と怒られてしまった・・・


通路を抜けてはしごを上がると、そこは宝物庫の最奥だった。絵画や宝石、彫刻など様々な財宝が保管されていた。共産主義者も流石にこれら芸術品を破壊するほど野蛮ではないようだ・


「次取りに来たとき残ってるかわからないから金目の物を取ろうとするのはいいんだけどさ、それより前に王族の象徴、王冠とか剣とかを先に探してくれない?」


宝の山を掘り返していると、王国の国旗を見つけた。埃を被っているが傷はないようだ。


「あ、アリシア見つけました!王冠これですよね」


「ええそれよ。よかったちゃんと残ってたのね。エルマありがとうね」


「へへへ、どういたしまして」


外が妙に騒がしくなっていた。警報が鳴り響き、この宝物庫の扉が開く音が聞こえてきた。


「み、みんな撤収しましょう。見つかる前に」


「そうね。けどただ物を盗んで逃げるだけじゃつまらないわ。そうだ、ちょうど王国時代の国旗を何枚か手に入れたわけだし、宮殿のてっぺんにある国旗をこれに差し替えない?」


「ちょっとまだなにかするつもりなの?エルマも撤退しろって言ってるのに。あたしは先に撤収させてもらうわ」


「何だよお前ら。つまらないな。私はアリシアについていくから、2人は先に撤収しな」


揉め始めてきたので一旦地下に逃げることを提案し、最終的にベルニスと私だけで実行することになった。


宮殿内の庭園につながる出口から地上に上がると、3階ほどある高さを魔法で軽々と登り、国旗掲揚塔のある場所まで屋根を移動した。


「特大の花火を打ち上げましょ。ベルニス頼んだわよ」


「はーい、きれいな花火打ち上がるよ!」


ベルニスが杖を振ると巨大な火の玉が打ちあがり、空中できらきらと大爆発した。眠っていた人々は窓を開け宮殿のほうを見始めた。注目が集まったところで声を増幅する魔法を使い、演説を始めた。


「よく聞きなさーい、王国はまだ滅んでないわ!!!私、アリシアが帰ってきたからよ!王国を踏みにじる共産党よ、私の手で必ず滅ぼしてやるわ!!!」


私は忌々しい赤旗を焼き払い、栄光ある王族の旗を掲げた。


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