4年連続甲子園へ〜1年夏の大会〜
練習試合で結果を残した榎本は春の大会に続き背番号10でベンチ入りし、登録メンバーのほとんどが1、2年生中心のチームである。
4年連続夏の甲子園を目指した県大会が今始まる。
試合2日前、練習を終えた夜。監督は選手達を集めミーティングを始めた。
「4年連続甲子園を目指した県大会がいよいよ始まる。1回戦の中洲高校のオーダーを発表する。」
なんとここで驚きの発表があった。
「バッテリーは榎本、稲田。4番は横山でいく。」
バッテリーと4番が1年で初戦を迎えるのだ。
いくら結果を残したとはいえ、初戦の難しさがある中での抜擢。
榎本は夜、緊張で眠れなかった。
試合前日。
明日の試合のために軽い投げ込みを行い調整した。
「明日、お前に任せたのは度胸だ。思い切って投げてこい!」小田監督は背中をポンと叩き去った。
試合当日。
初の公式戦で落ち着かない。
前の試合がコールドで終え、試合開始が早まる。
変化球の精度もいつもより少し劣るがコントロールはいつも通りだ。
試合前には稲田と配球面の話し合いも済ませいざ試合だ。
ホームに集合し、選手が散らばる。
「九重国際付属のピッチャーは榎本くん。」
アナウンスも流れ、試合が間も無く始まろうとしている。
投球練習を終え、相手の1番が打席に向かう。
ついに高校野球生活初の公式戦が始まった。
いきなり初球、センター前にヒットを許す。
体がまた固まった。
2番バッターはバントでランナーを進める。
ここでタイムをかけた稲田。
「球はいい。大丈夫だ。自分のペースで投げ込んでこい!1つアウトを取ったから落ち着いていこう」
笑顔を見せホームに走って戻った。
3番バッターはサードゴロ。4番には四球を与え、2アウト1、2塁のピンチだ。
5番バッターには追い込まれながら粘られ3ボール2ストライクまでカウントが整う。
そして、9球目ストレートで見逃し三振を奪ったのだ。
マウンドでグラブをパチンと叩き喜んだ。
ベンチも盛り上がりを見せる。
その裏4点を奪った九重打線。
榎本も援護があり緊張が解けたのか普段の打たせて取るピッチングに対し低めにコントロールされ奪三振も多くなる。
4回終了時で12-0と大量リード。5回のマウンドも上がり完封勝ちを収めた。
5回被安打3奪三振7と高校デビューを果たした。
後半ストレートのノビも増してきたのであった。
チームはその後も順当に勝ち上がる。
打線も4番1年横山が高校初ホームランを放つなど存在感を見せていた。
投手陣も2年生エース野村を3回戦から投げさせたりするなど順調な仕上がりを見せ、3年の野口もリリーフとして存在感を見せていた。
そして、いよいよ決勝まで勝ちがったのだ。
準決勝では春のセンバツに出場した県立糸島にサヨナラ勝ちを収めた。
決勝前日。
「いよいよだ。相手は大原学園。春負けた相手だ。
俺たちもあれから成長しているところを見せる時が来た。いいか?明日は勝って甲子園にいくぞ!」小田監督が激を飛ばした。
「先発は岡!お前で行く。他の投手陣も準備は怠るな。全員野球で勝ちに行くぞ!」
決勝の先発は3回戦リリーフをした二刀流の2年生岡。
この夏は1試合しか投げていないが練習試合では結果を残してきた選手だ。
試合当日。天候は晴れ。
雨予報だったが綺麗に晴れたのだ。
お天道様はどちらに微笑むのか。
大原学園の先発はプロ注目の山下だ。
MAXは150キロを投げ込む剛腕ピッチャーでありながらカーブを武器にする。
九重国際付属は先攻。試合は序盤から動く。
初回、九重打線が足を絡め4番横山のスクイズと5番岡のタイムリーで2点を先制。
しかし、3回裏大原学園の4番中川が2ランホームランを放ち一振りで同点に。
4回裏にはピッチャー返しの球が岡の体にボールを受けるアクシデントが起こる。
「大丈夫か!?」ヒヤッとしたが続投を希望した岡。
しかし、球威もなく連打され1アウト1、2塁の場面で交代になる。
「九重国際付属ピッチャーの交代をお知らせいたします。」
マウンドに走っていくのは1年榎本だ。
「ごめんな。こんな場面で。」岡はそう口にしファーストの守備に就く。
ベンチからは小田監督が気持ちだとジェスチャーを送る。
稲田も全力で投げ込めとジェスチャーを送っていた。
初球ストレートを打たれた。
強い二塁ベース寄りのゴロだ。
ショートがダイビングキャッチをする。
素早くグラブトスをし、二塁から一塁に送球。
バッターはヘッドスライディングをする。
「アウト!」
ファインプレーで球場のボルテージが上がった。
1球でピンチを抑えたのだ。
榎本にも笑顔が見えた。
試合は膠着状態のまま9回に。
4回途中からリリーフした榎本も8回まで好リリーフを見せていた。
ブルペンではエース野村と3年野口が肩を作る。
榎本の代打で同じ1年の丸山が起用される。
4球目にヒットを打ち、0アウトで勝ち越しのランナーが出塁するも0得点に終わる。
その裏マウンドには野口が上がった。
野村は準決勝で115球を投じ完投勝利を導いていた。
「野村を出すならタイブレークの10回から。」小田監督は決めていた。
しかし、いきなりデッドボールでランナーを許すとバント処理をミスし0アウト1、2塁のピンチを招く。
ここで小田監督が動いた。
エース野村をマウンドに送ったのだ。
春負けた相手にリベンジもある。
この数ヶ月エースナンバーを奪った野村。
ここまで好投を続けてきているのもある。
2番バッターにバントを決められ1アウト2、3塁とピンチは続くが、3番バッターをスクリューで三振に取り、2アウト2、3塁になる。
ここでこの試合同点2ランを放った4番中川が左打席に迎える。
1ボール2ストライクと優位なカウントに立つ。
ベンチからもスタンドからも声援は飛ぶ。
そして、4球目であった。
アウトコースに外れたストレートをバットに当てられる。
打球はゴロで三遊間へ。
サードが弾き、ショートが処理した。
すぐ1塁に投げるも記録はセーフ。
サヨナラ負けだ。
「大原学園なんと初の甲子園出場です!」
その場でみんな力付き、涙を流した。
ホームではお互い称え合い、握手をするもの、抱き合うもの各々が健闘を称えた。
「お前らよくやった。判断ミスした俺の責任だ。すまなかった。」小田監督も涙を流し最後の言葉をかけた。
最後負け投手になった野村は「すみません。すみません。」と3年生に涙を流し謝っていた。
3年生は「お前のおかげでここまで来れたありがとう」
と握手をしていた。
2日後、新チームが始動した。
今回の夏のメンバーがほとんど残っている状態。
巷では優勝候補とも言われている。
新キャプテンは二刀流の岡が勤めることになった。
「俺たちに失うものは無くなった。次は挑戦者として全て勝ちに行くだけだ。」小田監督は選手達に告げた。
新人戦は9月に始まる。
この大会を勝ち上がれば5年ぶりの神宮大会、春のセンバツに繋がるのだ。
仕上がりはもちろん2ヶ月でどのような成績を残し成長していくかが鍵を握る。
4年連続夏の甲子園を逃した九重国際付属。
次なる目標は5年ぶりの神宮大会、春のセンバツだ。
果たして勝ち上がることが出来るのか?




