あとがき
よく「このドラマは事実に基づいたフィクションです」というテロップがドラマのエンディングで流れることがある。
歴史小説というのも、多くは事実に基づいたフィクションということになろう。この小説もご多分にもれず、そのような位置付けである。決してノンフィクションというわけではない。
とはいえ、この小説の大体の筋書きはジョン・ウェスレー という人物の生涯において実際にあった(とされる)ことに基づいて物語が構築されている。すなわち、ジョン・ウェスレー は現在のアメリカ合衆国ジョージア州にあるサヴァンナにおいてソフィー・ホプキーという女性と恋に落ちたが他の男の妻となったこと、その後、グレイス・マレイという女性と婚約にまで至ったが、愛弟子に取られてしまったこと、その直後にメアリー・ヴァゼイルという女性とキリスト教史上稀に見るほどの不幸な結婚に至ったこと……これらはみな史実である。また、登場人物の多くは、実在した人物名をほぼそのまま起用した。
どのあたりが創作であるか、とここで述べると本編相当の長い文章となるのでここでは控えるが、文末に参考文献を列挙したので、そちらを参考にしていただければと思う。だいたいのところは、朝ドラや大河ドラマでなされてる程度の脚色と思って間違いない。
なお、本作ではソフィー・ホプキー、グレイス・マレイ、メアリー・ヴァゼイルの3人を紹介しているが、それ以前にサリー・カークハムという女性に恋したという記録もある。しかし、それがどのようなものであったか詳細は不明である。おそらく、少年期によくある片思いぐらいのものではなかったかと思われる。
参考の為に当時の時代背景について述べておきたい。
16世紀、マルティン・ルターやジャン・カルヴァンによって宗教改革が行われ、いわゆるプロテスタント教会が起こされたが、やがて時と共にそれ以前のカトリック教会と同じように形骸化していった。それに一石を投じるように17世紀英国においてピューリタンと呼ばれる一派が登場し、クェーカー教徒、バプテスト派、アナバプテスト派などが生まれた。18世紀に入ると、英国国教会はまたもや形骸化し、それに一石を投じるように登場したのがジョン・ウェスレー 率いるメソジスト運動であった。本文中でも紹介したように、1738年5月24日、ロンドンはアルダスゲイト通りにあるモラヴィア派の集会でジョン・ウェスレー が劇的な回心をしたことが運動の礎石となっている。そしてここからメソジスト派、ホーリネス派、アッセンブリー派、ペンテコステ派など聖霊の働きを強調する教派が生まれた。また、ジョン・ウェスレー の生前はアルミニウス主義とジョージ・ホウィットフィールドをはじめとするカルヴァン主義に分かれたが、英国国教会から独立した時にはアルミニウス主義が採用された。当時、メソジスト内のアルミニウス主義とカルヴァン主義の対立は険悪なものであったが、後に自由主義神学という共通の論敵が現れたことで両者の敵対心は薄れていった。
思想界の出来事では、1776年アダム・スミス「国富論」、1778年インマヌエル・カント「純粋理性批判」の出版などがある。またジョン・ウェスレー が他界した1791年の12月、音楽家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが死去している。
参考文献
† 書籍
ジョン・ウェスリと家族を巡る一考察
岩本助成 日本ウェスレー・メソジスト学会学会誌第11号
John Wesley and marriage
著者: Bufford W. Coe
25 Surprising Marriages: How Great Christians Struggled to Make Their ...
著者: William J. Petersen
On the Trail of John Wesley
著者: J. Keith Cheetham
John Wesley Biograp
著者: Stephen Tomkins
† Webサイト
ジョン・ウェスレーとその伝道活動
http://grape.g.dgdg.jp/Ryle305.htm
John Wesley's Blog(ジョン・ウェスレー の日記集)
http://johnwesley1703-1791.blogspot.com/?m=1
United Insight
https://um-insight.net/topics/sophy-hopkey/
JW American Parish
http://www.gcah.org/research/travelers-guide/john-wesleys-american-parish
JW and Savannah
http://www.sip.armstrong.edu/Methodism/wesley.html
John Benett /MyMethodist story
www.mymethodisthistory.org.uk/people-2/lay-people/john_bennett