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07.月が顔を出す

「はあ?」

 最初はその言葉に驚いた。でも次は、もっとだ。


 がたがた、がたがた、音がする。


「はあ?」


『その子から手を離すんだ、そしてできるだけ遠くに!』



「ここにきて逃げるかよ。ツキナミ、良い名前してるじゃねえか。アイツの事も殺ってやるよ!」


『やめといたほうがいい。君の体が()のは残り数秒。その選択をした場合考えられるのは、100パーセントを超える死亡率だ」


「残り数秒? 何の事だ、説明しろ!」


『いいから、早くしてくれ!』


「ッち。感謝するんだな」

 彼女から手を離した瞬間。


「っ!」

 地面が割れて、大きな右手が伸びてきた。


 俺は必死にジャンプし、手のうちから逃げる。



 右手は、ソフィアやほかの二人を掴むと、また地面の中へ潜り消えていった。


 残ったのは、破壊された地面。



 速さ、強さ、大きさ。手、それだけでもう十分すぎるほどだ。







 難を逃れた俺は、小さくつぶやいた。

「……あれがツキナミ?」


 はは、んなわけ。


「あれがツキナミってんなら、世も末だ。人間は末恐ろしい、な――――――――」

 ばたり、体が地面に落ちる。


「お、い、何だ……これ」



『君は力を使いすぎだ。約七分で80パーセントの能力使用。末恐ろしいのは君の方だ。一日は起きられないぞ』




「―――そういうことは、先に、言―――――」



『……機体、シャットダウン。接続終了。単独での行動を開始する』




『お疲れ様、マスター』





その日の真夜中。


 №400は、病室の前のネームプレートを見た。


『久我 雪 様』


 その名前を確認して、中へ入る。





「プラズマの容態について、説明して下さい」

 その声は、微かに怒りを秘めていた。


 1つしかないベッドを囲むカーテン。その先にいる誰かと、カーテンの手前で立つ一条。

 柔らかい色のライトが、その影を映している。


「……すまない。少々手荒な方法だったが、あれしか思いつかなかったもので」


「事を隠蔽するのは、私達の得意分野です。特定の人物を探し出すことも。ですが、私達にプラズマを直すことはできません」



 端的に行ってしまえば、彼は今違う病室で、ここにいる彼女のように眠っている。


 四肢は以前と同じように、左右の腕、右足は無く、右目も潰れている。


 一条が、地下鉄に到着した時には、すでに事は終わっていた。


 地面に転がるプラズマ、傷一つなく立っている№400。


「あの状況だけ見れば、貴方が裏切ったと考えてもいいのですよ」



「僕の事は、使い勝手のいい駒だと思ってくれていい。君たちに信用されなくたっていい。ただ、彼の事をそう不安がる必要はない」



「彼は、今急激なエネルギー不足を起こしているだけだ」


「エネルギー不足?」


「……言っておくが、僕が彼から奪ったわけではない。いや、奪いはしたがほんの少しだけだ」



「人間は、エネルギーを消費すると、食事や睡眠を通して回復する。それと同じように、彼は今眠りにつくことで大幅に、急速的に、エネルギーを回復している」


「……それは本当ですか」


「もし、明日になっても彼が目覚めなければ、僕の首を切ってくれて構わない。僕の判断は間違っていたということなのだから」


 その言葉を聞き、一条はほっとした。それと同時に、とても失礼なことをしてしまったことに気付いた。

 まるで№400を悪者扱いするような言い方は、良くなかった。


「……貴方には、助けてもらってばかりです。貴方のデータがなければ、きっと()()は生き返りはしなかった」




 それは、カーテンの奥にいる、彼女のこと。


「中を見ても?」


「ええ」


 カーテンを開けば、そこには眠りにつく少女の姿があった。


「彼女の様子は」


「現場近くにはいましたが、プラズマによる誘導のおかげあってか怪我はしていませんでした。ただ、こういったことは初めてだったので動揺してしまったようで、眠ってしまいました」


「最近はどうだった? 突然発狂したり、自殺しようとしたり、怪我もしていないのに血が噴き出して来たり……」


「いえ、特にそういったことはありませんでした」


「……なるほど」

 ふむ、と鼻の頭を指でこする№400。



「何とも言い難いが、成功と見ていいだろう」




 量産型プラズマ(№400)の遺伝子データと、素材。

 それによって、一人の人間が生き返った。


 データを欲しいと言われた時は、何に使うのだろうと思っていたが、まさかこのためだったとは。             

 №400には、思いつきもしない事だった。


「貴方のデータがなければ、我が組織は今頃、崩壊していました」


「何故?」


「彼女が死んでしまえば、プラズマが動くことは無くなります。私が死のうと、誰が死のうと、お構いなしに、人類滅亡を鑑賞することでしょう」


「あれほど、人を愛してやまない救世主が、その程度であなたたちを見捨てるなど、考えられない」


 そんなことを、真顔で言ってのける№400。

 


「――――だと良いのですが」

 少し笑顔になる一条。


 そして、すぐにハッとする一条。


「っす、すみません。途中から私情が入っていました。こんな話をするために、呼んだわけじゃなかったのに」


「ああ、そうそう、すまない。僕も忘れていた、君に重要な情報を伝えなければならなかったのに」


「?」



 №400は、地下鉄での出来事を話し始めるのだった。

皆さんこんにちわ!今日、自分の小説をスレにて晒し推敲していただける場所を知り、投稿したいなーなどと考えていた、ライカンオタク、夏神ジンでございます!!やはり、ケモはいい。ケモはいいんです、いいんです、いいんです(エコー)。そ、それは置いておきまして、これを読んでいただいた皆様!読んで頂き本当にありがとうございます!もしよろしければブックマーク、コメント等々よろしくお願いします!!

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