表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/17

02. 救世主は助けない

 場所を変えて。



 我が組織「オリエント」(組織に関する詳しい説明は追々させていただく)にて、話し合いは遂行されていた。



 大きな部屋に、大きなデスク。どこかの「人類補完計画!」を語っていた人物にそっくりな態勢の一条。

 そして、一条と向かい合うようにして立たされている(冷静さを取り戻した)、俺。

 隣には、大嫌いなアイツ―――――――№400がいた。



 待ちきれなくて、俺はつい聞いてしまった。

「なあ、おい。さっきの、電話」


「その話は、あとで。私の話を最後まで聞き、了承していただけたら、彼女の現在地をお教えします」


「おい! 言っとくけどな、この組織のボスは俺だぞ!」


「現在は私です。それに、自分から『オリエントは解散だ、俺はボスを下りる』などと言っていた人が、今になって言うセリフがそれですか?」


「あァ!? なんだと! 一条、お前いつの間に口答えするようになったんだ!」


「ごほん! 喧嘩なんぞにくれてやる時間はございません。静粛に」


 この野郎……、前はもっと素直だったのに!


「貴方は解放されたとはいえ、完全に自由の身というわけではない。非人類、危険生物として、まだ監視対象です」


「……ふん」


 そう言われちゃ何も言えん。俺が監獄にいる間に、俺はボスではなくなり、さらに政府は俺を危険物として処理したのか。


「ですが、貴方の力が必要になった。だから貴方を解放したのです」


「どういうことだ」


「――――()()()()が、完成した」


「ハッ! そんなわけあるか」

 俺は、冗談だろ、と言い捨てる。


「ツキナミプロジェクトは、俺がかつて参加したプロジェクトだ。人間による、『最強を作り出す』実験、だったか? だが、俺が研究所ごとぶっ壊したはずだ」

 ツキナミ、なんてバケモノ。あれは、世界を崩壊させる兵器だ。


「第四研究所、そのことについては俺より№400の方が詳しいだろ」

 厭味ったらしく言ってやった。


 №400は少しも気にする様子はなく、早く進めろと目で指示した。


「チッ……」


「プラズマの言う通り。そこにいる№400は、第四研究所の実験体の一人です。だから彼から、近衛夕陽が記録していた内部記録データを入手しました」


「……ふうん」


「何か?」一条は、睨みを利かせる。


「いいや、何も」

 もう、近衛の事をとやかく言うつもりはない。言えない。


「では、何か言うことは?」

 一条は、俺の返事に不満を抱き、言う。





「―――――――――――俺が悪かったよ」

 うまく謝れない俺にとって、最上級の謝罪だ……これが。



 その言葉に一条は納得したようだった。

「……ほんっと、本気になると手が付けられなくなるんですから。まあ、そんな返事で済む話じゃないんですけどねー!」


 うげっ、こいつめんどくせえ。話題をそらすか。



「しかし、にわかに信じがたい話だな。完璧に完全に、完成しきってるのか? ツキナミは」

 だとしたら、もうすでに人類は滅んでいそうだ。まあこれも完全に俺の憶測ではあるのだが。


「完成した、とはいっても今すぐ動き出すわけではありません。だから、それが完全に動き出す前に、貴方には力を取り戻していただかなればなりません」


 俺の四肢を奪った奴は明確に三人いる。

 右腕を持って行った、ツインテールの少女。

 左腕を持って行った、緑色の髪をした少年。

 そして、右足を持って行った……あれは、誰だったか。思い出せない。なんでだ?


「って言っても、最弱過ぎる俺に、力を取り戻す術はないだろ。返り討ちにあって、今度こそ終いだ」


 すると一条は、ふふんっと笑う。

「そのために、助っ人を呼んだのではありませんか」

 助っ人? 一条の視線の先にいる人物を見て、愕然とした。


 まさか、まさかまさか。


「コイツが、助っ人だなんて……」

 隣に居座る、№400。相も変わらず、黒コートに帽子、そして赤マフラー。顔も変わらず、無表情。


「そのまさかのまさかです」


「ふざけるなッ! コイツとタックを組めって? んなもん、やるわけねーだろーが!」

 思わず、声を荒げる。


「第一、コイツは俺が殺す。手を組む前にな! そんな話なら俺はもう帰る!」

 踵を返し部屋から出ようとする。


「あの子の事はいいんですか? まだ住所、聞いてませんよね」

 その言葉に俺は、ぎくりとした。


 そうだった、まだ俺は電話でしかあの子の声を聞けていない。

 ようやく牢から出れたのに、ここで機会を逃すのは――――でも、コイツは絶対にない!



「……い、いいんだよ! あの子のことは……どうにかして見つけ出す、から……」

 扉の前に立つ。



 それでも必死に、一条は言う。


「貴方のせいで、人類が滅んでもいいんですか? あなた、仮にも救世主なんでしょう? この世界を救うためにやってきたんでしょう? 私を助けてくれた時も、そう言ってたじゃないですか!」



「貴方が私たちを助けないで、どうするんです! プラズマ!」




 

「――――五月蠅ぇな。俺は元々人間、きらいなんだよ。滅ぼうが、何だろうが、もうどうだっていいんだよ」





「俺はもう、人類を救済しない」

 扉が開き、また閉じる。




 

 説得、できなかった。

 

 一条は、立ったまま下を向き、落ち込んだ。



 一条の机にあるのは、メモリデータとツキナミに関する資料。

 

 自由の女神を握りつぶしてしまうほどの巨体。少女のような見た目のそれ、ツキナミは、予想では一日足らずで世界を滅ぼす。


 目から放たれる閃光は全てを焼き、体中を覆っている黒い体液は自らを守るだけでなく外敵を溶かす。


 確認されていないだけで、もっと恐ろしい何かを持ち合わせているかもしれない。


 こちらにあるのは、われわれ人間と、そして世界を救うはずの救世主。


 しかし今、こちらには何もない。

 

 


 思わず、机にしずくが落ちた。



 下を向く一条に、手が伸びる。それは黒い手袋を付けた、手であった。


「僕に少し、時間をくれないか。多分何とかなるから」

 慣れているんだ、と№400は言う。


 小さくうなずけば、彼は笑った。

「あなたは、いち早くツキナミの所在地を探索してくれ」


 

 ぱたん、と扉が閉じて静かになる。





 その頃の俺はというと。


 スクランブル交差点。


 信号が青になるのを待つ女子高生が近くにいた。黒髪で、猫背で、メガネで、スマホをガン見して。

 陽キャとはかかわりたくありませんみたいな感じで、そこにいる女子高生。


 俺は迷わず声をかけた。


「おい、お前、スマホ貸せ」



はい! そろそろ(?)あとがきコーナーに書くことが無くなって参りました! 夏神ジンと申します!!

pv数、中々伸びません! 大変に伸び悩んでおります!

そこで! ぜひともコメント欄にこうしたほうがいいんじゃない?的なことを書いていただきたく思っております!(おねだり)

ぜひともよろしくお願いいたします!

読んでいただきありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いきなりの強敵3人との乱闘が迫力あってよいですね。あくまで元最強なので、大ピンチでしたが。物語が終わらなくて良かったです。カラフルな人々のわかりやすさもまた読みやすくて楽しかったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ