10.第一回、オリエント会議!
「それではさっそく、本題に入りましょう」
一条が、口を開く。
「我々が、今真っ先にやるべきことは、あの三人からプラズマの四肢を取り戻すことです」
スクリーンには、数日間の彼らの行動情報や、写真などが貼付されている。
「街で見られたのは、数件。あのスクランブル交差点での一件の後すぐでした。その後は自らが製造された研究所で多くみられています。三人ではなく、単独で」
第一研究所のガーネット。
第二研究所のククリ。
第三研究所のソフィア。
「何故三人で行動せず、単独なのか。それにはいろいろな考え方があります」
「一つは、不仲であること」
「不仲であるがゆえに、一緒にいることでチームワークを逆に壊し弱体化する可能性があるから」
確かに、それは言えているかもしれない。ガーネットとククリはいいとして、ソフィアとは両方付き合いがあまりなさそうだった。
「もう一つは、単独で研究所にいる方が有利である。ということ」
「何らかの理由により、限られた空間で、または自らの研究所であることで、自身の能力を底上げしている。だから、単独の方が三人でいるときよりも強い能力を発揮できる」
「後者は、あまり考えたくないな」
俺が言う。
「もしそうだとしたら、この間より苦戦する可能性がある」
スクランブル交差点の時は正直言って楽勝だった。どれだけ奴らが体の再生を行おうと、シオンのあれを使ってしまえば、俺が絶対に勝てる。
そういえば。
「シオン、お前の能力っていったいどういうものなんだ?」
そのことを聞いていなかった。
「僕の能力は、接続した相手の能力を30パーセントから50パーセントぐらい加算すること」
「引き上げているわけではないのか?」
「そこだ」
シオンが俺の言葉に食いついた。
「僕の能力は、対象が最大限の能力を発揮できる状況であっても、最弱な状態にあっても、一定量能力の加算を行える。これは、僕の能力が引き上げるのではなく、加算する、からできるのだ」
と自慢げに言う。
「なるほどな」
「シオンの能力は、プラズマと相性がいい。ですがシオンの能力を鑑みても、一体ずつ相手していくほかなく、また、その研究所にツキナミが隠されている可能性が高いと思われます」
一条が言う。
それは、その通りだ。俺は現在、能力の10%ほどしか扱うことが出来ず、シオンの能力をもってしてもそれほど大きな力を有することはできない。
「ここからはプラズマ、あなたの意見を聞かせてください」
一条は、スクリーンから視線をプラズマに変えた。
「……そうだな。見立てとしては、一番最初はガーネットだ」
ガーネット。
好戦的な性格で、仲間意識がない一匹狼タイプ。正直言って、一番狙いやすい。
「俺が協力していた時も、研究所の輩はみーんなガーネットには手を焼いていた。何かあるたびに、死亡者が出るからな」
他二人はまだ読めない。
ククリは能力自体はそれほどだが、研究所とのかかわりが三人の中で一番強い。
研究所を丸ごと壊すんだ、どれほどの歩兵を奴が従えているのかが読めなければ、中々そそられない。
ソフィアに関しては――――――――――、よくわからない。
ガーネットやククリとは違う、何かがあるような気がする。それが、ツキナミなのか何なのかは、確かめるしかないのだが。
だから最後にとっておきたい。
とはいえ、もう少し情報が欲しいもの。
「誰か、第一研究所について今提示できる情報を持っている者は?」
「それなら……」
一条が言いかけたとき、何者かが勢いよくドアを開け入ってきた。
「二条! 潜入任務よりただいま帰りました!!」
大きなリュックを背負って、手を上げて、元気溌剌な二条。
茶色のもさもさした髪を二つに分け結び、少しずれた赤いメガネが特徴的な彼女。
自分がたくさんの人間に見られていることに気付くと、恥ずかしくなったのか、
「……てへ」
と言って、黙り込む。
実は極度の恥ずかしがり屋。
ボスである、俺以外には。