婚約破棄で国家存亡の危機
誤字報告本当にありがとうございますm(_ _)m(先に書いておくスタイル)
王城で開かれた叙勲式兼立食パーティー
ダンスを踊るようなスペースは無い、有るのは所狭しと置かれた料理の数々と酒
何故なら今日の主役は、綺羅びやかなドレスを着込んだ貴族ではなく、強大な魔物を倒した近衛騎士団なのだからだ
だから各々の受勲も終わり、王様からの無礼講の言葉を聞くや否や、ホールには歓声と乾杯の声が響き渡った
みんな嬉しそうに料理を皿に盛り、お酒をあおっている
魔物との戦いが多い我が国では見慣れた光景だ、他国からは野蛮だと言われるが、我はこの光景が大好きで仕方ない
───そんな中、王子だけが呆けた顔で椅子に座っていた
息子の名前はスロー・プ・オノダ、このオノダ国の第一王子であり、小柄で線は細いが、十六歳の若さで今回の魔物を近衛騎士団と共に倒した天才魔法使いである
そんな息子が蕩けた表情で会場を見ながら、側に居た貴族令嬢を呼んだ
「どうかなされましたか殿下?」
彼女は息子の婚約者のハイフォン嬢、息子と同様に聡明であると同時に、魔法剣での戦闘が得意な女傑でもある
その実力はファイヤーフライという二つ名を得る程だ
我は将来になんの不安も持っていない
何故ならば、この二人が居るからだ!二人なら絶対に今以上に国を発展させ、民衆に安寧を与えるに決まっていると信じているからだ!
本音を言えば、さっさと王位を譲って最前線に引っ込みたいと思う程、我はこの二人を信頼している
「ハイフォン……本当に済まないが、婚約を破棄したい」
───聞き間違いかな?我は今、信頼してると(心の中でだが)言ったぞ?
そんな我の内心とは裏腹に、ハイフォン嬢は至って冷静に息子へと聞き返した
「……殿下、理由をお聞きしても宜しいですか」
そう理由だ!我も理由が知りたいぞ!
いつの間にかホールの喧騒は消え、水を打ったかのように静寂に包まれていた
不穏な空気を察した近衛騎士達が食事を止めて、全員こちらを見ているからだ
そんな状況で息子は、ホールを見つめながら言葉を紡いだ
「今回の討伐で、僕が重傷を負ったって話は聞いてるかい?」
「はい、報告を受けた時は、心臓が止まるかと思いました」
「あの時、身を挺して僕を庇ってくれた騎士が居たんだ、自分の命を顧みず、僕を守ってくれた騎士がね……僕の油断で攻撃を受けそうになったのにだよ」
「まさか殿下は……自分がいつ死んでもおかしくないから、私を……私を悲しませない為に、婚約破棄なさるおつもりですか」
泣きそうな顔で問いかけるハイフォン嬢
それを悔しそうに見詰める近衛騎士達、彼らは不甲斐ないのだろう、自分等にもっと実力があったなら、王子を危険に曝す事もなく、こんな話になるはずも無かったのだから
我も自分が恥ずかしくなった……幼い頃から突出した魔法の才能があり、並の魔物なら歯牙にもかけない実力に、いつの間にか頼り切っていたのだからだ
まさか我が子にこんな決断をさせる程、知らず知らずに追い込んでいようとは
「スローよ…」
「いや、違うよ」
「「え?」」
息子に声を掛けようとしたら、否定された
違うのか?そういう良い話では無かったのか?
「あれから毎晩夢に見るんだ、たくましい腕とぶ厚い胸板を、僕を抱き締め、魔物から庇う彼の横顔を」
「殿下?」
「感触をもっと知りたくて、うっかり常時発動している防御魔法を解いちゃうくらい、カッコよかった」そのせいで被弾したけど
「で、殿下?」
「彼に守られながら放った最後の魔法には、僕の想いが乗ったのかな、過去最高の威力だったよ」
「…………」お口パクパク
「はっきり言おう……一目惚れだった」
「一目惚れしちゃいましたか〜」
ダンっ!!
堪えきれなくなった我は、肘掛けを叩くと立ち上がった!
「誰だ!息子を誘惑した阿呆は!!」
我の怒鳴り声に、騎士たちは一斉に一人の人物を指さした
指されたのは副団長、ゴリゴリマッチョな三十歳で、確か数年前に結婚して今では子供もいる一児のパパだ
そんなマッチョな男は今、真っ青な顔で自分には身に覚えが有りませんと、必死に手でジェスチャーしている
「父さんお願いです、彼と結婚させて下さい!」
「ふざけるな!王家の血を絶やすつもりか!だいたい副団長は妻子持ちだぞ!」
「あの日僕は真実の愛に目覚めたんです、その愛の前ではそんな物は障害になりません!」
「なるわっ!他人の家庭を崩壊させようとするんでない!」お前が目覚めたのは真実の愛ではなく、性癖だ!
「くっ……そうですね、確かに彼の幸せを壊すのは憚られます……そうだ!彼の妻を第二夫人にするのはどうでしょう!?」
どうでしょうじゃねーよ!いい事考えたみたいに言ってるが、却下だ!
というか騒ぎの中心の副団長を蚊帳の外に置くな、さっきから勘弁してくださいってジェスチャーで否定してるぞ!
相手の気持ちも考えずに、勝手に進めるな!絶対教育間違えた、こいつかなり質悪いぞ!
どうしようかと頭痛に悩まされていると、救いの声が降ってきた
そう、ハイフォン嬢である
「陛下、私に良い案が御座います」
「真か!」
「はい、私が王妃様の娘になるのはどうでしょう」
「ん?」
それ全く解決になってないぞ、というか意味がわからん
「だってスロー殿下ばっかりズルいです、私だって王妃様にバブらせて欲しいのに!殿下と結婚したら毎日王妃様に会えると思っていたから、これまで頑張ってこれたのに……婚約破棄は了承しますから、せめて娘にしてください!」
あっ、これは救いの声じゃなく、絶望の声だったわ
ゆっくりと妻の方を向くと、今まで見たことが無いほど困惑した顔になっていた
そして怯えるように、ハイフォン嬢に声を掛けた
「えっと……は、ハイフォン嬢」
「はいママ!」
「貴女のママはあっちで気絶してるわよ、そちらはいいの?」
「あれは実の母、王妃様は理想のママです!」
どうにかしてって顔で俺を見るな!助けて欲しいのはこっちだって同じだ!
……あれ?そういえばやけに静かだな?
意識をホールに戻すと、近衛騎士団が消えていた
どうやらとばっちり避ける為に逃げたのだろう、料理と酒もごっそり無くなっている……よし、明日から訓練は二倍だな
ただ一人だけ残っているが、それはロープでぐるぐる巻きにされた副団長だ
……いや、理由は分かるぞ、当事者が居ないと収拾がつかないからな
でも、これって仲間を売っただけにしか見えないんだよな〜、不思議だなー……五倍にしよう、今泣きながらガタガタ震えてる仔羊が、きっとやり遂げてくれるだろうから
「父さん、彼を魔法で女性にするのはどうでしょう?それなら王家の血は絶えません」
うん、嫌がる三十歳男性(妻子持ち)を女体化するのに目を瞑れば良い案だな、もちろん却下だ
「殿下!私を魔法で赤ちゃんにしてください!」
なってもいいけど、お前を娘にするのは金輪際ないからな!
お前が理想と言っていた王妃様を見ろ、我にしがみついて震えているぞ
出禁な、妻の心の平穏を守る為にも二度と城に入らせない
「僕が女になるのもアリか……」
「もがー!もがー!」
ねっとりと副団長を見る息子に恐怖したのか、ロープぐるぐる巻きな副団長は、這って逃げようとしてる
「よくよく考えたら、忙しい王妃をやらせない為にも、いっそ拐ったほうが……」
「ひっ!」
物騒なハイフォン嬢の呟きに、妻は涙目だ
とうとう我の背後に隠れて、助けてと呟き出した
どうしよう、我には他に子供が居ないんだよな……
この国が滅ぶとしたら魔物に蹂躙された時だと思ってたのに、こんなくだらない理由で国が滅ぶとか、冗談じゃねーぞ
とりあえず、ブツブツ言ってる息子と元婚約者に向き直る
「うるせぇー!お前らは二人とも再教育だ!性癖うんぬんの前に、相手の意思を考えねーとか、普通に恐怖でしかねーわ!」
その日、俺の怒声は王都中に響き渡って騒ぎになったという……知るかそんなの、こっちは国家存亡の危機だ!
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って、よく考えたら連打するのはサーバーに負担が掛かりそうだから、やっぱり止めて下さい