5-7
「調合」
パネルの表示がパッと切り替わる。
スカルドラゴンの核は消え、世界樹の苗がパネルに表示された。
やった!
あれほど地震が続いていたのが、ぴたりと止んだ。
妖精や精霊から奪っていた力が、
徐々に戻っていっているのだろう。
「ありがとうエレナ!」
「ううん、ハルト様のおかげだよ」
「おめでとうございますハルト様」
セフィロスにも笑顔が見れる。
本当に終わったんだ。
すると、また部屋がぐにゃりと歪み始めた、
今度は下から光が溢れ、
部屋が変わった時と逆の現象が起きる、
元に戻りかけているんだ、
そう分かっているものの、立っているのも難しい感覚に、
思わず目を閉じて、歪みが収まるのを待つ。
そうして、光を感じなくなって目を開けた時は、
最初ダンジョンに来た時の、あの螺旋階段が目に入った。
「本当に不思議な所だね」
「「そうですね」」
セフィロスとセスティナの言葉が被る、
お互い顔を見合わせているのを見て、
お似合いかな?と思ったが、
すぐにお互い恋愛感情はないな・・・と思い直した。
「まさか、またダンジョンを攻略しないと駄目?」
一応エレナに聞いてみる。
「ううん、もう錯覚は解けているから大丈夫、
この階段を登れば帰れるよ」
そう聞いてほっとする。
そして、そんな事まで知っているとは・・・
「エレナって、ハイエルフって言ってたけど、
本当に凄いんだな」
改めて言う俺に、ぎくりとした顔をしたので、
何かあるのかな?とは思ったが、
どうやら聞いて欲しくはなさそうだったので、
何も聞かずに、そのまま階段を上がって地上に出た。
いつの間に来たのか、また霊鳥がいて、
『さあ、乗れ』
とばかり体を沈めてくれていたので、
全員でありがたく乗る事にした。
恐らく精霊王が手配してくれたのだろう。
霊鳥がどこに向かうか、霊鳥が飛ぶままに任せていると、
エルフの里へと辿り着き、体力、精神力を使い果たした俺は、
3日間ぐらい寝続けた。
「これがうどんだよ」
目覚めた俺はうどんを頂く。
木の器に入ったうどんは、確かに長いが、
少しへらべったくて、スープがよく絡むようになっている。
さすがに醤油はなく、日本のお馴染みの味ではなかったが、
鶏ガラでスープを取り、独特の調味料で味付けされたうどんは、
胃にも優しく、本当においしかった。
それから、エルフに一角獣を借り、精霊王の元を訪れた。
「お久しぶりです、精霊王様」
「よく来たね、人間の子
今回の事、精霊の長として心から感謝する」
「精霊王様は無事ですか?」
最初出会った時より、存在が薄くなっているように感じて、
心配で聞いてみる。
「大分力を使ったが、スカルドラゴンが消えた時、
力が戻ってきた、
今は自然との調和に問題はないよ」
やはり影響はかなりあったようだ、
王として、力を尽くしてくれていた様子に頭が下がる。
「ありがとうございました」
「おかしな人間だね、
礼を言われるのは私の方だよ、
あのままスカルドラゴンが攻撃していたら、
私はもちろん、この森も、この森で生きる物も、
無事ではいられなかっただろうからね」
精霊王に礼を言われ、世界樹の苗を渡す。
「精霊王様、これは世界樹の苗です」
植えるのか、植えるとしたらどこに植えるのか、
これ以上いい判断ができる人物はいないと思ったのだ。
「ありがたいね、私が責任を持って育てよう」
精霊王の言葉にほっとする。
「後はよろしくお願いします」
俺は精霊王に世界樹の苗を託し、精霊王に別れを告げた。
ここで精霊王に会って、やっとエルフ姉妹の、
俺が精霊王という誤解が解けた。
それでも偉大な人には変わらないと、様付けを続けている。
その後、エルフ姉妹も一緒に王国に戻る。
そこには、以前と変わらず、商売をしたり、
剣を作ったり、いつも通りの生活があった。
「スカルドラゴンはなんでか消えたみたいだよ」
スカルドラゴンが消滅した時、吸い取られていた
力は無事戻り、作物への影響は最小限だったらしい。
嬉しそうに話す獣人から、果物を買い口に運ぶ。
王宮からは、褒美がどんと送られてきた。
精霊王がディアール王国の王にあまり話を広めないように言ってくれたらしく、
王と一部の人だけが真実を知り、一般人には知られてない。
あまり騒がれなくて、正直ほっとしている。
屋敷に戻り、久しぶりにマチルダに会う、
「ただいま、マチルダ!」
「お帰りなさい、ご主人様!」
久しぶりのマチルダを抱っこして、
やっぱり癒しだなと、マチルダの可愛さを堪能する。
そして、エレナには新しい髪飾りをプレゼントした。
「はい、以前のは駄目にしちゃったから」
「ありがとう」
エレナが笑顔で微笑む。
するとエルフを珍しそうに見ていたマチルダが、
いきなり言い出した。
「ご主人様、おーはいになるって」
「え?王杯?」
マチルダが何を言っているのか分からなくて、聞き返す。
するとセフィロスが
「王配殿下の事でしょう、貴族ですし、調合SSランク、
大陸中を救った英雄となれば、当然の配慮だと思いますが」
その言葉に俺は驚愕する、驚いたってものじゃない!
「いや、そんなのはいい!」
俺は急いで王宮へと駆け出した。
まだ刺激に溢れる日々が待っていそうだ。




