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ある日、王宮の使用人から話を受けた。
「マチルダにお見合い?」
「はい、ハルト様が、いずれマチルダをお嫁に出すつもりで
いらっしゃると聞いた商人が、
ご自分のご子息と結婚させたいと」
「早くないかい?」
マチルダはまだ子供だ、
恋愛なんて何も分からないだろうし、
いきなり結婚相手を決めろと言われても、
決められるようには思えない。
「貴族の中では、子供の頃から婚約を結んでおく事は、
珍しい事ではありません」
使用人の言葉に迷う。
「まず、どんな相手か知ってからでも遅くはないのでは?」
それもそうだな・・・と思う。
「どんな人だい?」
俺の言葉に、待ってました!とばかりに、
勢いよく言葉を続ける。
「大きな商店のご子息で、
家具はもちろん、絵や宝石なども扱うので、
マチルダの鑑定の能力が欲しいとの事、
年齢も合いますし、同じ獣人同士、ぴったりな相手かと!」
太鼓判を押されて、確かにいい相手かもと思うと同時に、
マチルダが遠くに行ってしまう気がして寂しさを感じる、
複雑な親心という所だろうか。
「じゃあ、一度、そのご子息とマチルダを会わせてみるか・・・」
複雑ゆえに、小声になった呟きを、
王宮の使用人はばっちり拾う。
「お見合いの準備ですね!お任せ下さい!」
そう言うと、日の取り決め、時間、場所、
セッティングの内容など、
テキパキと準備がなされてしまった。
「今日はお招きありがとうございます」
やって来たのは、獣人の男の子。
例のお見合い相手だ。
「俺は保護者のハルト、こちらがマチルダだ」
玄関でまず顔合わせをする。
すると、男の子はポーとマチルダに見とれ。
「なんて立派な尻尾なんだ・・・」
と思わずというように呟いていた。
俺は何!?と思う、
この可愛い顔、さらさらの髪、
そんな所ではなく尻尾?そこが重要なのか?
マチルダを見ると、尻尾が褒められた事がまんざらでもないらしく、
俺はガンとショックを受ける。
獣人の中では、尻尾が大事なのか・・・
これからはもっとマチルダの尻尾を褒めるようにしよう!
初めて知った事実に、驚きながらも続ける。
「で、君は?」
ボーとしていた男の子は、慌てて。
「はい!遅くなって申し訳ありません!
私はローレンスと申します」
と勢いよく挨拶をした。
今見た中では、なかなかの好青年、反対する理由がない・・・
いや、反対してどうする。
そんな気持ちを抱えながら、庭に案内する。
小さな庭だが、きちんと手入れがされ、
色とりどりの花が咲いていた。
その少し奥まった所にガゼボがあり、
お茶がセットされている。
アフタヌーンティーも用意され、
スコーンからケーキ、焼き菓子と、
様々なカラフルなお菓子が並んでいる。
「王宮でも食べられているお菓子なんです、ぜひ召し上がって下さい」
しかし、ローレンスの視点は、
お菓子ではなく食器に集中している。
「すみませんこの食器、磁器では?」
「ええ、アルテノン共和国で買った物ですよ」
今日使われている食器は、話題にもなるかと、
マチルダが蚤の市で買った食器を使っていた。
「信じられない、ベルシャミン焼きを使う人がいるなんて・・・」
ローレンスの言葉におや?と思う。
「使ってはいけない食器だったのかい?」
「失礼しました、いえ、決して使ってはいけない訳ではないのですが、
その貴重さから、使う方はまれだと・・・」
ローレンスの言葉に、そんな貴重な食器だったのかと思う。
しかし、マチルダが選んだ物だ、当然という考えもある。
「昔、ある有名な陶芸家が釜を開いて作っていた物なのですが、
その職人1人しか作らず、後継者もいない、
なので生産量が物凄く少ないんです。
それに、使いやすいという当たり前の事に、
とことんこだわった作りが、芸術の域にまで高めている!」
ローレンスは力説しているが、
今日はもう盛り付けてしまったし・・・
「せっかくだし、今日はこのまま食べてしまおう」
「は・・はい・・・・」
それから、ローレンスは一生懸命マチルダに話しかけていた。
好きな物は何か、普段は何をしてるのかなど、
根掘り葉掘り聞くようで、答えにくい事には触れない、
この辺りは幼いながらも商人らしさを感じさせた。
マチルダは、それに答えると言った風だ。
ローレンスに特に興味がないらしく、
マチルダから、ローレンスへの質問はない。
ローレンス、完全にマチルダに惚れたな、
まあ、こんなに可愛いんだ、惚れて当然だな。




