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無事登録を終わらせ、ギルドの掲示板の所へ行く、
小学校の黒板を3つぐらい繋げた大きな掲示板に、
依頼が所狭しと張り出されている。
さっき、ギルドの人に、
「依頼があると言う事は、困っている人がいると言う事なので
出来るだけ受けてあげてください」
と言われた事を思い出し、
端からステータスパネルで収納されている物を確認しながら、
すぐに納品できる依頼書を片っ端から取っていく、
案外多く、40枚以上になった依頼書を持って、
受付カウンターに向かう。
「この依頼、受けたいのですが」
「えっ・・・と・・・・・・全部ですか?」
受付嬢はかなり戸惑っているようだった。
「少しお待ち下さいませ!」
そう言って、席を離れ慌ててどこかに行ってしまう。
仕方ないので待っていると、
がやがやと周りが騒ぎ出し、注目されているなと思う。
昨日から視線集めまくりだな・・・
これで平気でいる芸能人、ちょっと尊敬するかも。
俺はしょせん、小市民なんです、
と心の中で呟きながら、受付嬢を待つ。
すると、トラの獣人らしき、貫禄のある人が出てきた。
「ぜひ、こちらへ」
「あ、はい」
そう言われて案内されたのは、登録の説明をされた時とは、
雲泥の差の煌びやかな部屋だった。
いわゆる貴賓室?
どうしてこんな所に通されたのか分からないまま話を聞く。
「私はロベルトと言います、お名前をお伺いしても」
「須藤陽翔です」
「スドウハルトさん」
ここで、セスティナとのやり取りを思い出す。
「陽翔が名前で、須藤はハイネームです」
そう言うと、驚愕していた。
やはりハイネーム持ちは偉い人なのだろうか?
面倒な事にはなりませんように、と心の中で願う。
取りあえず、依頼書を一つづつ確認し、
その物をアイテムボックスから出していく、
途中、部下らしき人が商品を持って行ったが、
それでも部屋の中には、物が溢れていった。
「これで全てですね」
結果、46枚あった依頼を解消しお金を受け取る。
流石46枚分の依頼となれば、受け取る金額も多いのだが、
元々アイテムボックスに入っているお金が、
半端なく高額なので、数字が少し増えた・・・ぐらいの感覚しかない。
うん、完全にマヒしてしまっているな。
「ハルト様はモンスター討伐の経験はございませんか?」
様づけになっている事に、少し気分を良くしながら、
気軽に答える。
「私が倒した訳ではないですが、ジェネラルゴブリンと
対峙した経験はあります」
眠らせたジェネラルゴブリンをセスティナが倒したので、
単にいただけですけどね。
「ジェネラルゴブリン!!!討伐証明部位などございますか?」
「一応そのまま収納してあるので・・・」
「見せて頂けませんか?」
「かまいませんが、ここで出して大丈夫ですか?」
「はい、問題ないです」
そう言われたので、
5体のジェネラルゴブリンをアイテムボックスから出す。
すると、ロベルトは飛び上がらんばかりに驚いていた。
その驚きように、こちらがびっくりするぐらいだ。
「ほ・・・本当にジェネラルゴブリン・・・・・しかも5体も」
完全に絶句している。
「強くて狡猾なジェネラルゴブリンを討伐してしまわれるとは、
さすがです、しかも賞金首の可能性もあります!」
えー、結界の外でずっと暴れているわ、
あっさり眠ってしまうわで、
強くて狡猾と言う言葉が全然ピンとこないんだけどな。
そう思いながらもここは何も言わず、黙ってロベルトに処理を任せる。
「こちらも買い取らせて頂けないでしょうか」
下からお願いされて二つ返事で答える。
「はい、どうぞ」
あっさり言うと、ロベルトは急いで部下に指示を出し、
何やら手続きを始める、しばらく待っていると
机の上に金貨2枚が出された。
「ジェネラルゴブリンはやはり賞金首でしたので、
金貨の価値があるのでご用意しましたが、
使いにくいようなら両替しますが・・・」
金貨と言う事は、本当に強いモンスターだったんだなと、
漠然と思う。
「いえ、そのままで大丈夫です」
金貨を出されても、驚く事もなくあっさり受け取る俺に。
「流石、ハイネーム持ちでいらっしゃる」
とロベルトは呆然と呟いていた。
「これだけ数と質の依頼を受けられると、
ハルト様はCランクになれます、左の手の甲を出して頂けますか」
そう言われて、素直に手を出す。
そうするとロベルトは、大きな判子のような物を、
俺の左手の甲にかざす。
するとその判子のような物が光る。
俺自身には、痛みやかゆみのような物は何もなく、
ただ光が当たるのを眺めていて、
ロベルトが判子をずらすと、俺の左手の甲に紋章が浮かんでいた。
「この紋章はCランクの証です」
そう言われて、手の甲をまじまじ見る。
なかなかかっこいい紋章なので、ちょっと嬉しいな。