2-1 ディアール王国での生活
予定通り2日で王国に到着。
ディアール王国は高く立派な城壁に囲まれていて、
衛兵も立っていたが、身分証明書などなく、
あっさり城内にはいる事ができた。
後で聞いた話だが、国際的な犯罪歴のある者だけ、
ステータスパネルが反応する装置があるらしく、
それらが反応しなかったので、問題ないと判断されたらしい。
まずは甘い物を求め城下町へ、
露店が並び、エレナがあちこち店を回り、
気に入ったカラフルなお菓子を買ってあげた。
「美味しいかい?」
「うん!」
幸せそうなエレナの笑顔にこちらもほっこりする。
「一つどうぞ」
お菓子をつまんで口元に持ってきてくれるのを、ありがたく頂く。
舌でころがして味わっていると、
甘いものの甘すぎず、どこかフルーティな味で、
とても美味しかった。
「ありがとう、美味しいよ」
「でしょ?私これが一番好きなの」
お菓子を次から次へと口に運び、忙しそうだ。
その露店の店主は獣人で、他の店もほとんど店主は獣人だったので、
商売は獣人が多いみたいだ。
人間も少しもいるが、3分の1程で、
パネルにあったように、獣人やドワーフなど、
いろんな種族の人が街を歩いている。
全体的に中世のヨーロッパみたいな街並みだが、
交通は整備され、美味しい食品の匂いが充満し、
あまり身なりの悪い者も見かけず、
優しそうな雰囲気の人が多い所からして、
治安が良く、安定した政治が行われているようだった。
エレナがお菓子を食べて、満足しているのを見ながら、
そうだと思い当たる。
ほとんど店と言えば露店だが、珍しく建物の中に店があり、
レンガ造りの立派な建物から高級店らしく、扱っているものは、
ショーウインドーから、洋服店だと分かる店があったのだ。
「俺も行きたい所があるけど、いいかな」
馬車3台分をもらってしまったので、何かお礼ができれば
という思いがあったのだ。
そう言うと、エルフ姉妹はうなずいて付いてきてくれた。
俺が先に立ち、先ほど気になっていた店に入る。
店主は人間で、昔の中世の貴族?と思われるような、姿をしていた。
「セスティナどの服がいい?」
そう言うと、困惑しているようで、二人の耳がピンと立っている。
店の端で動こうとしない二人の為に、いいなと思った服をセスティナに見せる。
月の女神様みたいな服で、長いスカートにはスリットが入っている。
今着ている服はごわごわした素材だが、なめらかでさらりとしていて、
それでいて薄手なのに、透けない不思議な素材だ。
同じ白色の服なのに、光沢からして全く違う。
防具としては弱いかもしれないけど、帰るだけだし、大丈夫だよな。
「これなんかいいと思うよ、着てみればどうですか?」
そう言っても、セスティナは動かない。
すると店主が、
「あ・・・あの、お客様、申し訳ございませんがお金のお持ち合わせは・・・」
そういう店主に、値札が付いてない事に気づく
「いくらですか?」
「金貨1枚です」
そう言う店主に、あったかなとアイテムボックスに”金貨1枚”と思いながら手を入れる。
すると、手に何か当たったような感触があり、手を出すと、
金ぴかの硬貨が握られていた。
「これでいいですか?」
そう言うと、店主はぺこぺこと頭を下げ。
「もちろんでございます!」と驚いた顔をしていた。
エレナは席に案内され、お菓子と飲み物を提供されている。
最初は困惑していたエレナも、誘惑に負けたのかおずおずとお菓子に手を出し、
一つ口に含むと、次々に頬張りだしたので、よほど美味しかったのだろう、
先ほどまで露店のお菓子を食べていたのにも関わらず
さりげなく追加されたお菓子まで、頬張っていた。
俺は、店をゆっくり歩きながら店主の話を聞く、
この店主は、話が上手く、しかもさりげなく煽て、
過去営業職にいた身としては、学ぶ事が多く、その話術に聞き入っていた。
「じゃあ、さっきの服着てみて、他に欲しいのがあれば他のでもいいけど?」
まだ固まったままのセスティナ、
その様子を見て、店主が手をパンパンと叩く。
それが合図だったかのように、メイドが頷き、
俺が選んだ服を手に、セスティナを裏に引き連れていった。
その後、試着したセスティナは、薄く化粧もされたのか、
見違えるほど美しかった。
「凄く綺麗だよ、セスティナはどう?」
本当は本人の意見も聞きたかったが、
どうも反応がなさそうなので、
俺が勝手にそのドレスに決めてしまう事にした。
「じゃあこれで」
店主に告げる。
「服はそのまま着られますか?」
セスティナの反応を見るが、硬直状態が続いているので、
「着ていきます」
と俺が言って、店主に硬貨を払って、店を後にした。
「ありがとうございました」
店主とメイド達は、一列に並び丁寧に送り出してくれた。