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「ハルト様はどうされるのですか?」
「ディアール王国に行ってみたいと思っているのですが」
「ディアール王国ですか、それならその馬車に繋がられた、
一角獣に乗ると2日程で行けると思います」
へえ、馬車に繋がられていた、馬らしき生き物には、
気になっていた、2日で行けるとなるとかなり光が見えてくる。
しかし、そのまま一角獣に乗る素振りも見せず、
困惑した顔をしてると、セスティナが空気を読んだのか声をかけてきた。
「どうされました?」
「い・・いや・・・・・一角獣に乗った事がなくて」
そう言うと、心底驚かれた顔をされた、
ちょっとショックを受ける、
あ、はい、こっちではそんな事もできないの~って感じなのですね。
少し落ち込んでいると、
「よければ、私が一角獣を操り、王国までご案内しましょうか?」
そう言ってくれる。
その提案に、心が躍る、しかし、村に戻りたいのだろうと、躊躇してしまう。
「私、ディアール王国の甘い物食べたい!」
セレナが声を上げる。
これは、ディアール王国に行きやすくなるために、
わざと言ってくれていると気づく。
「本当にいいのですか?」
セスティナに確認すると、笑顔で頷いてくれる。
「今思えば、私も新しい服が欲しかったのです」
セレナの甘い物は本当だが、
セスティナの服は嘘だろう。
営業で鍛えた言葉の裏を読み取るくせを発揮しながら、
どうしようか考える。
そして、2人の顔を見て、
本心から助けてくれようと思っている事が分かり。
「ではお願いします」
地図があるとは言え、方角、目印共に乏しく、不安だった俺は、
ありがたく好意に甘える事にした。
セスティナは聖水の河で水浴びをし、
血だらけの服を着替えた。
その後一角獣に跨り、セスティナの後ろに俺が乗り、
エレナは一匹の一角獣を操る。
旅は快適そのもので、エレナが料理が上手く、
しかも食材になる植物の知識も豊富で、かなり勉強になった。
セスティナも、モンスターを狩ってきてくれて、
久々の肉料理に、かなり満足である。
「エレナ料理上手だね」
「えっへん!私の腕は凄いんだから!」
エレナが自慢げにしていると、セスティナがしゅんとする。
「申し訳ありません、私は料理は全然で・・・」
俺は慌てて言う。
「いや!モンスターを狩ってくれるおかげで、
久しぶりに肉にありつけたし、
本当に感謝しているよ!ありがとう」
するとセスティナは。
「さすが精霊王様、寛大なお方だ・・・」
と俺を拝むようにしていた。
料理もモンスターを狩る事もせず、
最初にいた時に収集した食料を提供しているだけの俺に、
そんな目を向けられると、良心が少し傷む。
この世界では、牧畜や放牧はされていないらしく、
(そんな事をしたら、モンスターに狙られる)
モンスターと言っても、単なる有害な生き物ではなく、
肉を食べたり、皮を加工したりと、生活に役立っているようだった。
「ごちそうさま、2人ともありがとう」
そんな快適な冒険をして、ディアール王国に向かった。