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-3話 探索

 視界に入るもの、全てがくすんだ色の荒廃した街。

 どこまでも無音の世界を二人の足音だけが反響する。


「こりゃ君の言う通り本当に街一つ丸々廃墟なのかもな…」

「私が昨日今日で色々見て回った限りどこも廃墟化してたからね」

「これからどうするか…まだ君が見ていないエリアを歩き回ってタロットカードやらを探すか、外周の壁際を歩いて別の出口でも探してみるか、それとも気は進まないけどさっき話してた通り…」

「どれでもいいけど暗くなる前に決めてよねー。私はお城に入る方法が一番知りたいからそれが分かりそうなことしたいけど」


 コズモスの言う通り、軽く歩いてみた限りでは城壁内はどこも廃墟に成り果てていた。

 近くの城壁の東門とやらも赤い魔法陣のようなものが描かれており、鍵は開いているのにまるでコンクリートで塗り固められているかのように少しも動きそうにないのを自分も実際に確認してきて今に至る。


 彼女は昨日今日この廃墟の街を歩き回ってタロットカードらしきものなど見かけなかったと言っていた。

 そのためこのまま当てもなく彷徨うよりも、やはり彼女もまだどこも見ていないという建物の内部を探ってみるという選択肢はありかもしれない。

 彼女はこの街の大まかな[地図]を持っておりそれを見る限りかなり広い街のようで、見て回ろうとしたら歩き回っているだけでも日が暮れてしまうことは容易に想像できるからだ。

 その[地図]も彼女が目覚めた場所に置いてあったとのこと。


 その後二人はまたしばらく廃墟を歩き回った後にある大きめの一軒家の前で立ち止まる。

 歩き回る中で見た限りではこの建物の損傷具合が最もマシに見え、最初の内部探索先として選んだのだ。

 木造二階建ての建物で回りの家より二回りほど大きい外見から商人か何かの家だったのかもしれない。


 大きめの建物の方が内部で何かしらこの場所の手掛かりとなるものを得られる可能性は高いだろう。

 内部に堂々とタロットカードが置いてあって、それを回収すれば即帰れる…なんて都合のいい展開にはならないだろうが日が傾きつつある現状、思いついた行動をしてみるしかない。

 そんなことを考えながらドアノブに手を伸ばす。


「鍵がかかってるな」

「それなら任せて。このくらいの鍵なら魔法で一瞬だから」

 その言葉と共に彼女が自分の横から手を伸ばすと、指先に小さな金色に輝く光の塊でできたような鍵が生成され、それが吸い込まれるように宙を舞い鍵穴に嵌る。

 そしてその鍵がひとりでに回転すると共に、鍵穴からはガチャリと小気味よい音が響くのであった。

 

 地味な魔法ではあるのだが初めて見る魔法だけあってその衝撃は大きい。

「本当に魔法なんてものがあるんだな、この世界」

「鍵開けの魔法なんて使える人は滅多にいないけどね。私はルモンド家の人間だから使えるってだけ。逆に聞くけどよく魔法使わないで生きてこれたね。もしかして君の世界は火起こしもいちいち火打石を打ち付けてたりするのかい?大変そうだね」

「いつの時代の話だよ…」


 そんなことを話している間にも彼女は家の扉を開けるとずかずかと中に踏み込んでいく。

 自分も中を覗き込むが、内部は暗闇で満たされており様子を伺い見ることはできない。

 流石に暗すぎて探索は難しいかと思っていると彼女がポーチからランタンのようなものを取り出し、玄関周りの様子がぼんやりと照らし出される。


「随分と準備がいいんだな」

「これも目を覚ました場所に置いてあったんだよ。廃墟探索することを見越して置いてあったのかな?」

 それも自分らをここに呼んだ奴の計らいだろうか?

 そんな考え事をしながら自分も内部に足を踏み入れる。

 しかし一歩踏み出した自分の足は、何かによって前方に大きく滑らされ思わず大きな声をあげてしまう。

「うわああぁ」

 暗すぎてよく見えなかったがそこら中に埃が積もっていたらしく、足元の玄関マットらしき敷物はそのせいで滑りやすくなっていたようだ。

 結局、周辺の埃を盛大に巻き上げながら尻餅をつき頭も横の壁に打ち付けるのであった。

「なに遊んでるの?埃舞い上げないでよね!」

「ゴホゴホ…悪い。侵入者対策用の魔法かな?流石異世界だぜ…」

「ただすっころんだだけでしょ?カッコわるー」


 室内はどこも埃が積もっており滑りやすく注意が必要みたいだ。

 この様子から見るに人がいなくなっていったいどれくらいの月日が経っているのだろうか?

 建物が廃墟と化すのにどれくらいの時間でここまでになるのか感覚的なものは分からないが数年から下手したら十年以上経っているのかもしれない。

「軽く見渡した限りではタロットカードらしきものはないかな」

「そんな普通に置いてあったら楽だけどねぇ」

 二人はいくつかの部屋を覗き見て様子を探っていく。

 開けられる窓は開けたことで少しは室内も明るくなったが結局軽く探した程度ではタロットカードはおろかこの街のことが何か分かりそうなものも見つけることはできなかった。 


 ひび割れた壁とそこに張った蜘蛛の巣を見ながら思う。

 それにしても城下町丸ごと一つ廃墟ってなんだよ…。

 異世界に転移するにしても普通は今頃、冒険者ギルドを訪れてこれから始まる冒険に胸をときめかせている時だろう。

 それが異世界で廃墟探索をやらされるとは…。

 廃墟と化した街の様子と民家の中を見て疑問に思ったことをコズモスに投げかける。


「街の様子も家の中も朽ちてはいるけど何かに荒らされてたりはしないんだな」

「そうだね。争った痕跡とか街が何かに破壊された跡とかもない。魔物に攻め滅ぼされたとかなら分かりやすいんだけどまるである日突然、人だけがいなくなったみたいな…食器とかもそのままだし…」

「魔物ね…やっぱりそういうのいるんだな…」

 食器や服など日用品の痕跡はここで人が暮らしていた名残を感じさせる。

 それらが整然と並べてある当たり、塵さえ積もっていなければ、ボロくはなっているものの人が今も住んでいると言われても不思議ではないような場所だったかもしれない。

「明らかに魔物の襲撃とかがあって街に人がいなくなったんじゃなくて、何もかもそのままってのが気味悪いなぁ…でも逆にいうとお宝の探しがいがあるかも!金目のものもそのままってことだしね!」

「お宝って…別に俺たちは宝探しに来たわけじゃないからな。というか髪に蜘蛛の巣べったり付いてるし」

「そんなの別に後で取ればいいよ」

 見る限り彼女は蜘蛛など虫といったようなものは全く意に介さないらしい。

 今まであまり気にしないようにしていたがこんな廃墟の中で目を覚ましたという割に異常に落ち着いているこの少女自体もよくよく考えてみれば異様である。

 俺なんかよりよほど廃墟を歩きなれているようにも感じるこの少女の存在はいったい…。


「お宝ー!お宝ー!ないのかよー時化(しけ)てるなー」

 そんな自分の視線を浴びながら彼女は積もった埃にも、物怖じするどころか積極的に屋内を荒らして回り言動だけ見ればもはや盗賊のそれである。

「保存食とか食べられるものでもいいんだけど」

「いくら保存食でも流石にもう食べられないだろ。下手したら十年ものとかだぞ」

「えーつまんないのー」

 結局二人は寝室にあった数冊の本や日記のようなものを持って家を出ることにする。

 それらの間に挟まっていた紙束のようなものが床に散らばってしまったが埃っぽい屋内からさっさと脱出したいがため気にせず出てきてしまった。

 内部を大分荒らしてしまったが、街の様子を見る限りこの家の主が帰ってくるとは考えにくいので気にする必要はないはず…。


 廃墟の家から脱した自分は家の前で全身の埃を払う。

 その隣でコズモスは珍妙なポーズを取りながら何かを叫んでいる。

「エフーシスクーティス!」

 その呪文のような言葉と共に彼女の体が一瞬光に包まれると、コズモスの塵で薄汚れていた全身は一瞬で汚れが消え去り着替えたかのように奇麗になる。

「魔法ってすごいな。俺にもそれやってくれない?」

「私はここにいる間ずっと全身に薄い魔力のベールをまとわせてるんだ。そしてそれを脱げばこの通り!でも君は予めまとってたわけじゃないから無理なんだ。ごめんね」

「だから埃まみれの中でも平然としていたのか」

「ルモンド家の娘だからね。これくらいの魔法は使えるんだよ。えっへん」

 彼女は大きな胸を張って見せ自慢げに奇麗になった体を見せつける。

「そのルモンド家ってのが異世界から来た俺には分からねーっての。いいとこのお嬢様だったりするのか?」

「どうだろうねー」

「それにしては言動が粗雑だけどな」

「粗雑ってひどいな。私は十分おしとやかだよ。それより暗くなる前にもっと探そうよ。お城に入る方法をさ。お城に宝探しに行きたいんでしょ?私もこんな時化(しけ)た家より早くお城行きたいよ!」

 彼女はキラキラとした目で城を指差しながら言葉を並べていく。

「目的が変わってるし、どんだけ城に行きたいんだよ。あんな見るからの廃城に行きたいのか?ここらの民家がこの有様だからあの中もどうなってることやら…」

「でもお城だよ!ロマンがあるじゃん。誰もいないなら掃除して私のお城にしようかな」

「確かに一番怪しい場所ではあるけど」

「でしょ?城を目指すのを目標にすべきだよ!」

「街を調べてダメそうならな。流れ的に行くことになりそうなのが怖いというかゲームなら確実に城にあるパターンだしな…」


 結局もう二軒ほど近くの民家を見てみることにしたが中は同様にめぼしいものは特に見つからなかった。

 自分は仕方なくという感じで廃墟の探索を進めていたが、彼女は移動の間もスキップをするように終始楽しそうに走り回っていた。

 この子の行動力はいったいどこから来るのだろうか…?


「それでおにーさん!三軒回ってみての収穫は?」

「さっさとそのタロットカードとやらを見つけてさっさと帰ることは無理そうなのは分かった」

「えー!これだけ見て回ってそれだけ?」

「あとは本と日記みたいなのを何冊か集めてきただけだな。すぐに帰るのは諦めるとしてもう何でもいいから書物から情報を掻き集めよう。この場所が何なのか把握してからの方が探しやすいかもしれない」

「そっか!お城に入る方法も分かるかもしれないしね!」

「とりあえずそれ含め調べるしかないよ」

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