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一章まで書き終えたら誤字、脱字、読みづらい部分等まとめて修正します。

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 [タロットカードについて]

 占いに用いられる78枚のタロットカード。

 それらは【正位置】と【逆位置】といわれる上下方向の向きの違いで同じカードでもそれぞれ別の意味合いを持つ。

 中でも0~21の番号が振られた22枚は大アルカナと呼ばれタロットの中でも主要な位置づけにある。

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 白い(もや)に包まれた世界。

 やがてその深い霧の中に人の影がぼんやりと現れる。

 それは(かろ)うじて女性のようなシルエットであることが分かるだけで姿をはっきりと視認することはできない。

 その存在をいぶかしげに見つめていると霧越しのそれはこちらに話しかけてくる。

「長い時間あなたがここに来るのを待っていました」

「えっと…ここはどこで…あなたは…?」

「私ですか?私は…そうですね…女神です。くすくす…。女神様と呼んでください。それでは一応質問をしましょう。念のためです。あなたの好きなものは何ですか?趣味などを教えてください」


 あぁ、いつもの夢だな…。

 夢の中でこれが夢だと気が付く。過去にも何度かその経験があった。

 目の前の女神を自称する存在はなぜか笑いを堪えながら話しているようにも感じる。

 夢とはいえ女神を名乗るならしっかり女神を演じてほしいものである。


 その幻想的な世界に浮かび(きら)めくシルエットに対し、どうせ夢の中だからと適当に答える。

「趣味はいくつかありますけど、一番好きなのはジオラマとか箱庭、ミニチュアみたいなそういった設計図のない物作りとかですかね。プラモデルを作る時も、めちゃくちゃな改造したくなるタイプで…」


「箱庭作りですか?私と趣味が合うかもしれませんね。私も暇さえあればそういったものを作ってますから。とはいえそう答えるのは予想してました。いえ知っていました。それ以外の趣味も私と合致するということまで知っています。だからここに呼ばれたのです。くすくす…」

「そうですか…」

 よく分からないことを言っているが、どうせ夢の中だと返事もぶっきら棒に行う。


「本題に入りましょう。君に一つ頼み事がありまして、今私は散らばったカードを集めるゲームをしていると思ってください。君からしたら異世界みたいな場所でのことになりますけど、そこでどうしても回収できないカードがあるのです。それを探すのを手伝ってほしいのです」

「カードですか?箪笥(たんす)の裏にでも落としたんですかね?」

「面白い例えをしますね君は。くすくす…。そんな感じですとも。手を伸ばしても届かない、何のカードを落としたのかも分からないのです。探してもらうにあたって君と一緒に探してくれる助っ人も用意しましょう。ここに22枚のカードがあります。このカードの中から好きなものを1枚選んでください。対応する魔女を用意します。例えレプリカでも十分な力を持ちますからね」

 

 その彼女の言葉と同時にアンティーク調の絵が描かれた無数のカードが視界上に広がる。

 実物を見たことがあったのでそれらが何かを知っている。

 占いに使う78枚のタロットカードの内、代表的な大アルカナと呼ばれる22枚。

 それぞれのカードの上には緑色で光る文字が浮かび上がっている。


 I [魔術師]:魔術を極めし魔女

 II [女教皇]:過去を見通す力を持つ

 III [女帝]:人を支配する力を持つ

 IV [皇帝]:土地を支配する力を持つ

 …


「魔女っていうのは?」

「それは選んでみてからのお楽しみです」

 夢にしては設定が細かく面白そうだ。

 そう思い一通り眺めた後、一番端にある1枚のカードに手を伸ばす。

 ナンバー21[世界]のカードに対してだ。


 XXI [世界]:正位置世界と逆位置世界を創造する


「どうしてこのカードを?理由を聞かせてもらおうか?」

「[魔術師]とか[運命の輪]のカードと迷いました。でもよくよく考えたら[魔術師]のカードはオーソドックスすぎるかなって。それに[運命の輪]は輪廻って生き死にに関わるようなことが書いてあるのは、何となく嫌な予感がして」


 I [魔術師]:魔術を極めし魔女

 X [運命の輪]:輪廻に干渉する


「確かにどれを選んでも魔女が仲間になるのに、わざわざ普通の魔女である[魔術師]を選ぶのはつまらないかもしれませんね。そして [運命の輪]のカードに関して君の疑念はおそらく正しい…」


 彼女はそこまで話すと一呼吸息を飲み、声のトーンを少し下げ改まって話し出す。

「ですが[世界]のカード、申し訳ないですけどそのカードだけはダメです。形式上、いえ制約上置いていただけで私の権能ですからね。これはあなたのためでもある。だから選び直しをしてもらいたい」


「私の権能…?」

「今はまだ教えるつもりはなかったのですが仕方ないですね…。私が21番目の大アルカナの魔女、[世界]のカードを司る魔女なんです。とにかく私が力を貸すことはできませんので選び直しをお願いします。魔女を仲間にできるというこのカードの力を行使するにあたって君自身に選ばせる制約がありますが当然選び直しはできないという制約も存在します。ただしこの制約には穴があって同じ方法で選べないというものですから、それならもう一つある別の方法で選び直せばいい。だから今度はもう一つの選び方である裏向きで選んでもらいましょう。本来のタロットカードでの占いに近しい形式になりますね」


 よく理解できないがとにかく選び直しをさせられるらしい。

 目の前のカードは全て裏向きになると、空中を飛び交いやがて重なり連なったように一列に並ぶ。

「君の選択によってはこの方法で選ばせるつもりでした。一応言っておきますと、このカードは魔法ですり替えたりなどの細工はすることができないようになっています。ですから安心してお選びください」


 それに対し彼女の直前の発言から何かを感じ取った自分はとある行動を行う。

 そしてあることを確認すると、次の言葉を得意げに口にした。

「決めました。それではこの21枚の中にはない1枚を選ぶことにします」

「えっと何をおっしゃっているんでしょうか?」

「カードが重なるように連なって枚数が分かりにくくなっていますけど、ここには21枚しかカードがないですよね?1枚はどこかにあるはずです。魔法ですり替えたりはできないと言ってましたから、もしかしたらと思ったんですよ。何かをするという考えがなければそういった発言もするはずがない。だからつい枚数を確認してしまいました」


「………」

 自分の発言に対し彼女は長い無言を返す。

 特別、特定のカードに執着しているわけではないが何かを隠していると気づいてしまったら、選ばれたくないカードがあるというなら逆に選びたくなる。


「ふふふふ…あはは…」

 やがてしばらくすると霧の向こうからは不穏な笑い声が聞こえてくる。

 そして21枚の重なり連なったカードが順に消えていくとその下に1枚だけ横向きにされ選ばれないように隠されていたカードだけが残る。


「………いいでしょう…私の力を貸しましょう。この程度見破れないとこのゲームの攻略は難しいでしょうからね。逆に安心しました」 

 向こうから聞こえてくる声は今までとは明らかに雰囲気が変わり、言葉の節々から怒りのような感情が伝わってくる。

 その声を聞き少しだけ心配になってくる。

 何か取り返しのつかない選択をしたのではないかと自分の直感が訴えかけてくるのだ。

 隠していたカードはやはり…。

 そんなことを思っていた矢先に視界が徐々にブラックアウトを始める。

 世界が暗くなり、意識も遠くなっていく。


「ゲームの目的は異世界にて私の代わりにタロットカードを集めること。さすればこの世界の叡智を得た上で元の世界に帰ることも、この世界を自由に作り変えることも思いのままです。ですが[世界]のカードを選んだことは後悔するでしょう。あの場ではろくに使い物にならないかと。ですがそれもあなたが望んだこと…くすくす」

 薄れゆく意識に彼女の声が響く。

 やがて残りのかすかな感覚さえ彼女の声が遠のくのと共に失われていった。

 ………………

 ……………

 ………

 ……

 …



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